【インタビュー】川口春奈、『ママせか』で「すべてをつぎこんで、届ける」リアルな感情と気持ちをのせた渾身作

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2026年09月30日 08:01  cinemacafe.net

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川口春奈/photo:You Ishii
映画『ママがもうこの世界にいなくても 私の命の日記』は、21歳にしてステージIVの大腸がんを宣告されながらも娘を産み、2021年にこの世を去った遠藤和さんの実話を映画化した作品だ。

主人公の和を演じたのは、川口春奈。劇中で川口は、夫の将一(高杉真宙)とともにありったけの力で生をまっとうする。愛すること、命をつなぐこと、日常のささやかな出来事――すべての瞬間、瞬間をひたむきに演じた。そして、取材で役作りやエピソードについて尋ねると、当時や今の自分の気持ちに照らし合わせながら一言、一言、確かめるように言葉を置いてゆく。その姿を見ていると“実直”の2文字が似合う俳優だと、感じさせられる。

「私たちも作り手として本当にベストだと思えるものを目指して、すべてをつぎ込んで届けています」と、やわらかくもきっぱりとした口調で伝えた川口。これから観る観客に向けて、思いのこもったインタビューとなった。

悲観的だけではない、前向きなメッセージがある作品
――川口さんはもともと遠藤和さんたちのことをご存じだったそうですが、本作を引き受けるにあたり背中を押したものは何でしたか?

実際にいらっしゃった方ですし、果たして自分が表現できるのかという不安はすごくありました。悩むというか、覚悟が決まるまで時間はかかりました。ですが、決して悲観的だけではない、前向きなメッセージがあると思いました。和さんたちのご家族の愛の形が、一人でも多くの方に届いてほしいですし、作品として一生残るものであってほしいと思い、お引受けしました。

――実際、和さんを演じるにあたり、どのように取り組んでいったのでしょうか?

まずは原作を読み、時系列を追って和さんの人生を知っていきました。また、スタッフの方が作ってくださった実際の治療の進め方、「○○歳のときに、こういう治療が始まった」など、詳細が書かれた資料を撮影に入る前にいただいたので、それらをすべてインプットしていきました。もちろん、山戸(結希)監督とも撮影に入る前から、コミュニケーションを取らせていただいていました。

――山戸監督は『溺れるナイフ』、『ホットギミック ガールミーツボーイ』などで知られる監督ですが、川口さんはこれまでの監督作についてどのような印象でしたか?

すごくドラマティックな映像を撮られていて、日常なんだけど非日常にも見えるし、非日常を日常に落とし込むこともできる方だなと感じていました。独特な観点から、今しかない青春、その人の表情、におい、空気までを、まるでドキュメンタリーみたいに切り取っていかれる方という印象でした。そんな山戸監督が、今回の映画をどういう風に撮るかは、最初想像もつかなかったんです。

――実際、撮影に入って印象的だった演出や画作りはありましたか?

のんちゃんや将一さんがどんな顔をしているのか、自分が監督だったら見せたくなるというか、撮りたくなると思うんです。けど、あえて背中で見せたり、相手側しか見せなかったりということをやっていらして、すごくドキッとする撮り方だなと思っていました。表情を見られないことで、逆に想像をとてもかきたてられるというか、考えさせられるというか。見せすぎないことが多かった印象なので、特にそこがすごく新しいと感じました。

――ちなみに現場に入る前、川口さんから順撮りのご提案があったと聞きました。

治療によって体に変化が物理的に起こってしまうので、ちゃんと順番に撮っていったほうがいいのではないかな、と思い提案しました。演じる上でも、順を追って運命を受け止めながら、決断をしていく、そして最期へ向かっていく…ということが、バラバラに撮っていくよりきちんと積み重ねていけるような気がしました。

それは残酷なことではありますが、受け止めなければならない現実でもある。その感覚を持って向き合うことができたと思います。もちろん、つらさは増していきますが、その積み重ねがあったからこそ、よりリアルな感情や表情につながったのではないかと感じています。



高杉真宙との信頼関係
「すごく安心感があった」
――高杉真宙さん演じる夫・将一の気持ちも、観客は手に取るようにわかるのではと思い、胸が苦しくなりました。ご一緒しての印象を教えてください。

高杉さんと二人のシーンが必然的に多かったのですが、信頼があるからこそ、委ねられる部分がありました。すごく安心感があったので、自分も和としてその関係性の中に入り込んでいけたのかなと思います。和さんにとっての将一さんは、弱さを見せることもできるし、強がってしまう部分も預けられる相手だと思うので。それを表現できたのは、やっぱり信頼関係があったからこそだと思います。

――予告映像でも流れている前半の象徴的なシーン、がんに侵されたことを将一に伝える階段のくだりは、ひきつけられる場面でした。あのシーンにおいて、川口さんはどのような思いで臨んでいましたか?

和と将一さんが、お互いの弱さをさらけ出して、「これからどうなっていくんだろう」という怖さや不安がすべて漏れてしまう、とても切なく大事なシーンでした。そこからが始まりというわけではないですが、夫婦二人の強さのようなものも感じられるシーンだったのではないかなと思っています。最初は強がって、我慢して、淡々と話していた和だけど、だんだん顔を見たらお互いに崩れちゃう、みたいな。そういう強がりの中にある脆さのようなものを大切にしながら演じました。

――演じられてみて、和の魅力をどう感じていましたか?

やっぱり強い人だなと思います。和さんの大きな決断は、自分だったらできるのかなと思うと、なかなか分からないです。まだ若い中で、「こうと決めたらこう」と進んでいけるぶれない軸のようなものがあって、すごく魅力的だと感じました。

――本当に、そうですよね。一方で、「死ぬまで愛して。幸せ」とプロポーズを受けたりなど、とても素直でキュートな一面も持っていて、川口さんが自然に表現しているように感じました。

私自身も、のんちゃんが普通の女の子でもある一面は表現できたらいいなとは思っていましたが、もちろん私一人でできることではなくて、高杉さんが演じる将一さんという相手がいてくださったからこそ、引き出していただけた部分だと思います。その場で生まれる感情もありましたし、自然とそういう気持ちやのんちゃんのかわいらしさが溢れるような瞬間を作っていただきました。



家族、友人を演じた共演者
「すごく影響、刺激を受けた」
――和を取り巻く家族や友人、キャストの皆さんもとにかく素晴らしい演技をなさっていますよね。

皆さん、本当に素敵でした。特に、母親役の小林聡美さんのお芝居が素晴らしすぎて…。きっと自分の娘ががんで残りの命が少ないと聞くと、本当は取り乱すと思うんです。それでも、誰よりも感情に流されずに、娘を見届けてくれる強い母親を演じていらして。達観するような雰囲気で、誰よりも娘を信じて見守るというたたずまいや表情に、胸が締め付けられました。「母って偉大だな」と改めて思いました。

――病院内で知り合い友達となる、飯島ひかり役の森田望智さんと和のやり取りもとても心に残りました。森田さんとの共演はいかがでしたか?

ひかりちゃんは、ものすごく難しいキャラクターだったと思うんです。一見、あっけらかんとしてひょうひょうとした天真爛漫さとは裏腹に、彼女なりの憧れと夢があって。それが叶わないことの残酷さや恐怖、弱さなど、本当にいろいろな感情を抱えているひかりちゃんを絶妙に演じていらして。和としてもすごく影響、刺激を受けたと思いながら演じていました。病院でひかりと抱き合ったりしているシーンも、いろいろトライしてみながら、山戸監督をまじえて、どれが二人らしく何がベストなのかを探りながら一緒に作っていけました。

――大事に撮影されたことが伝わってきます。最後に公開を控えた今、心に浮かぶ思いはどのようなものでしょうか?

私たちも作り手として本当にベストだと思えるものを目指して、すべてをつぎ込んで届けています。その熱量や想い、すべての愛が多くの方に届いた時、改めてこの映画に携わることができてよかったと実感できるのだと思います。とにかく一人でも多くの方に届くことを願っています。




ヘアメイク:高村三花子/Mikako Takamura
スタイリスト:緒方なぎさ/Nagisa Ogata

衣装クレジット:
・シャツ シーロン ¥74,800(税込)
お問い合わせ info@siiilon.com

・シューズ セルジオ ロッシ ¥155,100(税込)
お問い合わせ セルジオ ロッシ ジャパン カスタマーサービス 0570-016600

・ネックレス ノーツ ¥1,540,000(税込)

・ピアス ノーツ ¥1,650,000(税込)

・ブレスレット ノーツ¥2,717,000(税込)
問い合わせ先
092-707-2669 大丸 福岡天神店 東館 エルガーラ4階 時計・宝飾売場直通






(text:赤山恭子/photo:You Ishii)

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