畑と醸造の現場をレポート サントリー信州塩尻・登美の丘、2つのワイナリーで進む日本ワイン造り

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2026年09月30日 11:01  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
サントリーは2026年9月、長野県のサントリー信州塩尻ワイナリーと山梨県のサントリー登美の丘ワイナリーを巡る取材会を開催しました。あわせて、新商品・新ヴィンテージの試飲会も行われました。



信州塩尻では醸造設備や岩垂原の畑を取材し、登美の丘では新しいFROM FARM醸造棟や自家ぶどう園などを見学しました。まずは、名称変更と開設90周年という節目を迎えたサントリー信州塩尻ワイナリーから紹介します。

○90周年を迎え、「信州」を冠した塩尻ワイナリー


サントリー信州塩尻ワイナリーは1936年7月14日に開設され、2026年に90周年を迎えました。9月1日には「サントリー塩尻ワイナリー」から現在の「サントリー信州塩尻ワイナリー」へ名称を変更しています。



所長の齋藤卓氏によると、「信州」を名称に加えた背景には、塩尻で高品質なワインを造り、長野県や日本のワイン産業に貢献していきたいという考えがあるとのことです。



塩尻は古くからブドウ栽培が盛んな土地です。コンコードやナイアガラ、デラウェアなどが栽培され、サントリーもそうしたブドウを使ってワインを造ってきました。


現在の塩尻はそれらに加えて、世界中でワインに用いられる国際品種・メルロなどの一大産地にもなっています。信州塩尻ワイナリーでも、塩尻産のメルロからワインを造っており、さらに青森県や山形県など各地の契約栽培地から届くブドウも仕込んでいます。

○夏でも20度前後を保つ伝統のケラー


90年という歴史を今に伝えているのが、敷地内に残る古い二つの「ケラー」です。「ケラー」はドイツ語で地下室や貯蔵庫を意味する言葉で、ワイン造りがドイツから影響を受けていた時代の呼称とのこと。半地下に近い構造と、稲わらを断熱材として利用する工夫によって、空調を使わなくても真夏の庫内が20度を超えにくいといいます。



現在、これらのケラーは使われていませんが、かつてはここに200樽ほどが置かれ、メルロなどのワインが熟成されていたそうです。


○海外製の高価なプレス機「コカール」を導入



現在の醸造現場で重視されているのが、ブドウをできるだけ傷つけずに扱うことです。ブドウや果汁にかかる負荷をできるだけ小さくし、畑で得た香りや風味を醸造工程で損なわないようにする考え方を、サントリーでは「ジェントルハンドリング」と呼んでいます。


このジェントルハンドリングのために導入した設備の一つが、シャンパーニュでも使われているフランスのコカール(COQUARD)社製プレス機。可動する斜めの板でブドウに均等に圧力をかけて搾り、圧搾後に板を戻すと、押し固められたブドウが自重で崩れる仕組みです。ブドウをほぐすために槽を回転させる必要がなく、果皮や種子を傷つけにくいことが利点です。この設備を日本で導入しているワイナリーは、まだほとんどないといいます。

○岩垂原で試験的に進む土づくり


続いて、塩尻市の岩垂原の畑を歩きました。



岩垂原は標高約730メートルに位置し、昼夜の寒暖差が大きい土地です。石や礫が多く、水はけにも恵まれています。どちらもワイン用ブドウの生産に適した条件となっています。



サントリーは2016年から、岩垂原で自社管理畑を広げてきました。今回見学した「黒紫園」もその一つで、2016〜17年にメルロを植え付けています。現在では「岩垂原 メルロ」の主要な原料を担う畑の一つになりつつあるといいます。


2021年からは土づくりの試験も開始。土壌分析に基づいて必要な栄養分を補うほか、畝間には麦類などを育てています。地上の植物を豊かにすることで、そこに生息する微生物も豊かになり、ブドウ樹の健全性や果実の成分に影響するのではないかという考え方です。



ただし、現時点ではあくまでも仮説とのこと。土づくりとワインの味わいの関係については、今後さらに科学的な検証を進めていくとしています。

○約50区画ごとに原酒を仕込む「FROM FARM醸造棟」


続いて訪れたサントリー登美の丘ワイナリーは、前身となる登美農園から100年以上の歴史を持つワイナリーです。


現在のワイン造りを支える新しい施設が「FROM FARM醸造棟」。2024年9月に建設し、2025年9月に稼働しました。2026年9月時点では26台の仕込用タンクを備え、年間の製造数量は1000ケースです。


FROM FARM醸造棟では、区画ごとに収穫したブドウを小ロットで仕込み、性格の異なる原酒を造り分けます。そのために小容量のサーマルタンクを数多く設置しています。畑ごとの違いを残した原酒を用意することで、最終的なアッサンブラージュ(ブレンド)の選択肢を増やす狙いだといいます。


ブドウをタンクへ入れるまでの工程にも、ジェントルハンドリングの考え方が反映されています。


例えば、赤ワイン用のブドウの除梗には振動式の機械を採用しており、従来の方式に比べてブドウを穏やかに扱えるといいます。



選別したブドウはエレベーターでタンク上部まで運び、重力を利用してタンクへ投入します。ポンプでブドウを送り込むよりも、果粒への負荷を抑えられる仕組みです。



サントリー信州塩尻と同様、白ワイン用にはコカール社製のプレス機も導入されています。一方、赤ワイン用には、穏やかな圧力で搾る垂直式低圧プレス機を使用しているそうです。



ブドウを「優しく扱う」といっても、それはまったく手を加えないということではありません。ブドウの状態や目指すワインに応じて、どの程度手を加えるのかを細かく判断しているのです。

○世界で評価高まる甲州品種


サントリーが現在、特に力を入れている品種の一つが甲州です。



甲州の繊細で柔らかな味わいは、海外では時に「薄い」と評価されてしまいます。一方で、醸造でワインを濃くすると、今度は甲州が持つ岩清水のような上品さが失われる恐れもあります。そこで、サントリーでは甲州の栽培場所などを見直し、自然な生育の中で凝縮感を高める取り組みに注力しました。


そうやって生まれた「SUNTORY FROM FARM 登美 甲州 2022」は、世界的なワインコンクールであるDWWA 2024で最高賞の「Best in Show」を受賞しました。日本から出品されたワインとしては初めての受賞です。



もっとも、単に凝縮感が高かったから評価されたわけではありません。雨が少なく力強く凝縮した2023年が期待ほどコンクールで伸びなかった一方、栽培が非常に難しかったという2024年の「登美 甲州」は、IWC 2026で金賞を受賞しました。



この経験から、サントリーでは甲州について凝縮感だけでなく、酸や香りを含めた全体のバランスを見るようになったとのことです。

○見学後にワインも楽しめるプレミアムツアーがリニューアル


登美の丘ワイナリーでは、2026年9月11日から「FROM FARM 登美の丘ワイナリーツアー〈プレミアム〉」がリニューアルされました。


ツアーでは敷地を巡り、眺望台へ向かいます。その後、FROM FARM醸造棟と歴史ある熟成庫を見学し、最後に4種類のワインをテイスティングするという流れです。このとき、上質なワイングラスが使えるのも魅力の一つです。所要時間は約120分で、参加費は1人8,000円。金・土・日曜と祝日に開催されています。


取材会では、このツアーを体験。熟成庫のテイスティングスペースで「SUNTORY FROM FARM 登美の丘 赤 時のかさね」も試飲しました。



「時のかさね」は、熟成期間の異なる原酒をアッサンブラージュしたワインです。緻密なブレンド技術により、多層的な味わいを実現。上品かつ優美で、家庭料理にも寄り添ってくれそうなやさしい味わいとなっていました。

○新商品・新ヴィンテージ4種類を試飲


取材会では、新商品・新ヴィンテージを中心に4種類のワインを試飲しました。



<SUNTORY FROM FARM THE 甲州 テロワールアンサンブル 2025>



4つの産地で栽培した甲州の原酒をアッサンブラージュした新商品。多層的な香り、凝縮感のある果実味、心地よい酸味が特徴です。甲州らしくすっきりとした爽やかさがありながら、しっかりとした飲みごたえも感じられます。特に日本食と合わせて楽しみたい一本だと感じました。

○SUNTORY FROM FARM 登美 甲州 2024



登美の丘ワイナリーの甲州から造るフラッグシップワインです。IWC 2026では金賞を受賞しただけあり、さすがに品質はずば抜けています。柑橘系やりんご、白桃などの濃密な香り、酸味や旨味のバランスが優れており、特に昔の甲州のイメージを抱いている人に試してほしい一本です。

○SUNTORY FROM FARM 結の香 テロワールアンサンブル



信州塩尻と登美の丘、二つのワイナリーで醸造した原酒をアッサンブラージュした赤ワイン。塩尻のメルロや登美の丘のプティ・ヴェルドに加え、ミズナラ樽で熟成したマスカット・ベーリーAなども使用しています。熟したイチゴやブルーベリー、甘いスパイスの香りが多層的に混ざり合います。サントリーが持つブレンド技術がいかんなく発揮されたワインといえます。

○SUNTORY FROM FARM 岩垂原 メルロ 2022



長野県塩尻市の岩垂原で育てたメルロ100%のワインです。ブルーベリーやプラムなどの複雑で濃密な香りに、樽由来の甘い香りやスパイス香が重なって、重厚感のある仕上がりです。このワインを飲めば、岩垂原の畑のポテンシャルが感じられることでしょう。



山田井ユウキ/ワインエキスパート ワインも含め興味のおもむくまま多ジャンルで執筆するフリーライター。ワインの物語を伝える“ワインストーリーテラー”として活動中。著書に『ワインの半分は物語でできている。』など。[有資格]ワインエキスパート/WSET Level3/ドイツワインケナー/第8回J.S.A.ブラインドテイスティングコンテスト・ファイナリスト この著者の記事一覧はこちら(山田井ユウキ/ワインエキスパート)

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