
過去に例を見ない短期契約で誕生した第3次森保ジャパンが、ウルグアイ戦に続き、ベネズエラ戦にも勝利した。しかも、両試合とも後半アディショナルタイムに決勝点を奪うという劇的な勝利だったため、会場は大いに盛り上がった。
際立っていたのは、ウルグアイ戦で1ゴール1アシスト、ベネズエラ戦で2ゴールを記録した上田綺世だ。今シーズンの上田は、フェイエノールトで3ゴール、移籍先のリールでも3ゴールを決めており、今回の代表戦2試合を含めると、実に公式戦10試合で9ゴールを量産中。まさに絶好調と言っていい。
守備では、現在ル・アーヴルでディフェンスリーダーとして活躍する瀬古歩夢が、北中米W杯後の成長を日本代表でも披露。精度の高い配給や安定した守備が光り、確実に序列を上げている。また、中盤で違いを生み出した鎌田大地と、途中出場で決定的な仕事をやってのけた伊東純也も、相変わらずのクオリティを証明した。
ただし、この2試合で見えたポジティブな要素が限られていたことも事実だった。
【ウルグアイにもベネズエラにも苦戦した】
劇的な勝利が続いて忘れがちだが、どちらの試合も日本は苦戦を強いられた。北中米W杯の主力を続々と投入しても、思い描いたような試合展開に持ち込めなかった事実は冷静に受け止めなければならない。苦戦の理由を、経験の浅い選手を先発させたことだけに求めるのは無理がある。
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そこには、結果に関わらず来年1月に始まるアジアカップまでで任期が終了するという異例の契約のもと、9年目を迎えた長期政権の弊害とも言えるネガティブな要素も見え隠れする。
ひとつは、森保一監督が長く採用する3−4−2−1の行き詰まりだ。
この布陣を初めて使ったのは、2024年6月6日の北中米W杯アジア2次予選のミャンマー戦のこと。以降、森保監督は両ウイングバックにアタッカーを配置するこの布陣を、北中米W杯本大会まで基本布陣として採用してきた。
そのなかで、格下相手には敵陣でボールを支配しながら、同格や格上との試合ではカウンターアタックを主体に戦う術を磨いてきた。だが、同じ布陣を採用していれば、当然相手は日本対策を打ちやすくなる。
さすがに強豪との親善試合では相手がそこまで対策を打ってこないので、その布陣の問題点が露呈するケースは少なかったが、本番のW杯ではそうはいかなかった。オランダも、スウェーデンも、ブラジルも、日本の戦い方を想定した対策を怠らなかった。
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【"対策の対策"は用意できるのか】
今回対戦したベネズエラも、基本布陣の4−4−2ではなく、日本対策として3バックを採用。10番(ダニエル・ペレイラ)を2トップ下に配置する3−4−1−2で試合に臨むと、それを見事に機能させて日本を大いに苦しめた。
まず、日本のビルドアップ時には10番が前に出て3トップを形成し、日本の3バックをマーク。各ポジションをマッチアップさせられて日本はビルドアップに苦しみ、敵陣への前進がままならない状況が続いた。
加えて、ベネズエラのビルドアップ時には、10番が自由に動きながらスペースを見つけてボールを受けた。日本としては、鎌田大地、熊坂光希(負傷交代で8分から田中聡)のダブルボランチは相手のダブルボランチを見なければならないため、誰も10番を捕まえられず、容易に相手の前進を許す現象が続いた。
後半になると、日本の3バックの1枚(主に渡辺剛)が10番に付いていくシーンも見られたが、それを見るや否やベネズエラは59分の選手交代で立ち位置を修正。日本と同じ3−4−2−1にして、ミラーゲームの勝負を仕掛けてきた。
先のウルグアイ戦では、4−4−2のウルグアイが右MFの18番(ブライアン・ロドリゲス)を伊藤洋輝と中村敬斗の間に立たせ、2トップが板倉滉と瀬古歩夢をマーク。4−4−2の布陣が3−4−2−1と対峙する時の典型的な対策で、日本を苦しめた。
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鎌田がピッチに立っている時は、彼が最終ラインに下りて一時的に4バックを形成することで相手のプレスを回避するシーンはあるが、それはビルドアップ時のみで、前進後は中盤で数的不利に陥るので元のポジションに戻らざるを得ない。しかも相手はミドルゾーンで陣形を整えて待ち構えるため、日本のパスコースは限定されてしまい、試合をコントロールするには至らない。
立ち位置をフレキシブルに変えにくい3バックシステムでは、一定レベルの相手が対策を打ってくると、"対策の対策"を用意するには限界がある。会見では、森保監督が4バックへの可変を示唆していたが、ボランチ1枚が一時的に最終ラインに落ちる以外、3バックを基本布陣としながら4バックに可変するシステムを完成させるのは非現実的だ。
そういう意味では、限られた時間のなかでこれまで試みたことがないような"対策の対策"を用意できるかどうかが、今後の課題になる。それができなければ、おそらく現状のシステムの行き詰まりは解消できず、劣化が始まる可能性もあるだろう。
【新しい選手は使われにくい?】
もうひとつ、同じ指揮官の下では選手起用の変化にも限界があることが証明された。おそらく、指揮官の頭の中ではアジアカップのメンバーはほぼ固まっていて、基本的には北中米W杯の継続路線になるはずだ。
各選手の合流日程を基準にスタメンを編成したウルグアイ戦は別として、このベネズエラ戦では鎌田以外は北中米W杯で控えだった選手や代表経験の少ない選手を先発させた。しかし、FIFAランキングを少しでも上げたいという新しい理由によって、早い段階からW杯の主力にメンバーを入れ替えた采配に、その一端が見て取れる。
日本サッカー協会が「アジアカップ優勝の確率が最も高いと考えた」という理由で森保監督続投を決めたのだから、当然と言えば当然だ。それも想定内のことなのだろう。
しかし、システムの継続にも言えることだが、客観的なW杯の反省を含めた振り返りをせずに、同じ現場に内部解決をゆだねたその決断が、次なる日本代表のサイクルをスタートさせるうえで、何かしらの弊害にならないのか。
多くの疑問が残されたまま船出した第3次森保ジャパンだが、いずれにしても、森保監督が与えられたミッションをクリアできるかが、当面の注目ポイントになる。
中山 淳●取材・文 text by Atsushi Nakayama