写真電車でスマホを見ているとき、隣から視線を感じたことはありませんか?
今回は、電車でドラマを楽しんでいた女性が遭遇した迷惑行為と、それを思わぬ形で終わらせたある人物のエピソードをご紹介しましょう。
◆電車でのリラックスタイム
ある平日の夕方。山村恭子さん(仮名・33歳)は、仕事帰りの電車に揺られていました。
「その日は取引先との打ち合わせが長引いてしまって、もうヘトヘトだったんです。座れただけでもラッキーだなって思っていました」
車内は仕事帰りの乗客でほどよく埋まっており、静かな空気が流れていたそう。
恭子さんはイヤホンをつけ、楽しみにしていたドラマの見逃し配信をスマホで観始めます。ようやく訪れた束の間のリラックスタイムでした。
◆「そのドラマ、俺も観てるよ」突然始まった不快な覗き見
「そしたら隣に50代後半ぐらいの男性が座ってきたんですよ」
最初は何も気にしていませんでした。しかし数分もしないうちに、何とも言えない違和感を覚えたそう。
「すごく視線を感じたんです。横を見るわけにもいかないので、なんとなく画面の明るさを下げたりしたんですが」
恐る恐る視界の端で確認すると、男性は自分のスマホを見るでもなく、恭子さんの画面をじっと覗き込んでいました。
たまたまではありません。一度や二度ではなく、ドラマの展開を追うように視線を向け続けていたそう。
「そしたら突然その男性が『あーそのドラマね』と話しかけてきたんですよ」
恭子さんは驚きながらも軽く会釈をしただけで、返事はしませんでした。
「すると男性は『俺もそれ観てるよ。あ、この後、びっくりの展開になるんだけど……どうなると思う?』とドヤ顔で言ってきたんです。思わず『勝手に覗かれるだけでも不快なのに、上から目線で話しかけてくるなよ!』と声が出そうになりましたね」
あまりにも非常識なその行動に、恭子さんは慌てて動画を止め、スマホをバッグへしまいました。
これで終わると思ったのですが、男性はなおも「ほら予想してみてよ。じゃないと答え言っちゃうよ」などと一方的に話しかけ続けてきたそう。
◆席を移動しても追いかけてくる! 非常識から恐怖へ
「正直、怒るより怖かったです。変に刺激して逆ギレされたら嫌だなって」
恭子さんは静かに席を立ち、数メートル離れた場所へ移動。これだけ距離を取れば諦めてくれる……そう願っていました。
「ところが男性は、まるで当然のように立ち上がると再び私の近くへ移動してきて、またスマホの画面を覗き込もうとしてきたんですよ」
ここまでくると偶然でも好奇心でもありません。恭子さんは恐怖で身動きが取れなくなってしまいました。
◆男子高校生が立ち上がる……静かな“逆転劇”が始まった
「すると、その様子を向かい側の座席で見ていた男子高校生が立ち上がって、例の男性の目の前に移動すると、じっと顔を見つめ始めたんですよ」
突然、自分が見つめられる立場になった男性は、不機嫌そうな表情を浮かべ「見てんじゃねーよ」と威嚇したそう。
すると高校生は表情ひとつ変えずに「いや、人の見られたくないものを見るのが好きなんですよね? だったら見られても文句言えないでしょ」と静かに返しました。
男性は何も言わず、高校生を睨みつけます。
しかし高校生は視線をそらさずに「鼻毛、一本出てますよ。しかも白髪だし」と微笑みながら言いました。
「男性の顔はみるみる赤くなり『失礼だぞ! ふざけるな』と怒鳴っていましたね」
それでも高校生は落ち着いた口調のまま「嫌ですよね。見られたくないものを勝手に見られて、言われたくないこと言われるのって」と男性に語りかけたそう。
◆おじさんは逃げるように去っていった
男性は口を開きかけたものの、何も言い返せません。周囲の乗客の視線が一斉に自分へ集まっていることに気づいたのでしょう。
次の駅に電車が止まると、男性は逃げるように足早にホームへ降りていったといいます。
「あの高校生の子、全然怒鳴ったりせず、ただ事実を言っただけなんですよね。彼がいなかったら、多分私は最後まで我慢していたと思います」
恭子さんがお礼を言うと、彼は照れくさそうに頭を下げてくれました。
「最悪の気分で帰宅するはずが、彼のおかげで温かい気持ちになり、足取り軽く帰ることができたんですよね」と微笑む恭子さんなのでした。
<文・イラスト/鈴木詩子>
【鈴木詩子】
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:@skippop