IMSA最終レースを戦ったアキュラARX-06 10月3日、アメリカ・ジョージア州のミシュラン・レースウェイ・ロード・アトランタにて、IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権最終戦の第11戦『モチュール・プチ・ル・マン』が行われ、ローレンス・ファントール/ケビン・エストーレ/マット・キャンベル組の6号車ポルシェ963(ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツ)が大荒れのレースを制した。
最高峰GTPクラスでは、スタートの瞬間にジャック・エイトケンがタイトルを手にした伝統の10時間レースは、イエローコーションが16回出る荒れ模様となった。そんなロード・アトランタのパドックから、各種トピックスをお届けする。
■意外! キャリア38戦目でのIMSA初勝利
ポルシェにとって、モチュール・プチ・ル・マンでの総合優勝はこれが2度目であり、プロトタイプカーでは初の勝利となった。過去には、雨によりレースが短縮された2015年大会で、ニック・タンディとパトリック・ピレがGTLMクラスのファクトリー・ポルシェ911 RSRで優勝を飾っている。
ファントール、エストーレ、キャンベルによる今回の勝利は、チーム・ペンスキーにとっても、ミシュラン・レースウェイ・ロード・アトランタで開催されるこの10時間耐久レースでの初の総合優勝となった。同チームは以前、2006年から2008年にかけてポルシェRSスパイダーでLMP2クラス優勝を3度果たしていたが、総合優勝は今回が初めてとなる。
3人のドライバー全員にとってプチ・ル・マンでの総合優勝は初であり、特筆すべきは、エストーレにとってこれがキャリア38戦目にして初のIMSAでの勝利だったことだ。
一方、ポルシェ・ペンスキーは、デイトナ24時間、セブリング12時間、そしてプチ・ル・マンという主要レースの総合優勝を同一シーズンに達成した。ただし、これらの勝利は2台のファクトリーGTPエントリー車に分かれての達成となった。
ポルシェLMDhファクトリー・ディレクターのウルス・クラトルは次のように語った。
「終盤におけるローレンス・ファントールの走りは、実に素晴らしいものだった。しかも彼は、最後まで燃料を持たせるために、ペースを抑えて走る必要もあったのだ。決して平坦な道のりではなかったシーズンを、このような形で締めくくれるのは嬉しい」
エストーレは、ポルシェ・ファクトリー・ドライバーとして最後のレースに臨んだキャンベルの「極めて正確な」走りを称賛した。
「彼は燃料を温存し、タイヤも労わっていた。エンジニアたちが呼ぶところの『タイヤの扱いの達人』だね!」とエストーレは語った。
「おそらく今回が最後となるこの3人でのレースで勝利を収められたことを、本当に嬉しく思う。来年はそれぞれ別の道を歩むことになるからね」
一方、キャンベルは自身の役割について控えめなコメントを残している。
「僕はただ、レースの難しい中盤の時間帯──赤旗中断があったりする中で──をこなし、可能な限りエネルギーを温存しようと努めただけだ」と彼は言った。
「実際に仕事をしたのはあのふたりだ。僕はただ、中盤の厄介な部分を担当していたに過ぎないよ」
■“ル・マン”のシルバーコレクター
シェルドン・ファン・デル・リンデが駆るチームWRTの24号車BMW Mハイブリッド V8は、今回は2位に甘んじた。先月インディアナポリス・モーター・スピードウェイで開催された第10戦では、レース終盤の素晴らしい走りでBMWに今季GTP初勝利をもたらしたファン・デル・リンデだったが、今回はその再現とはならなかった。
ファン・デル・リンデは次のように語った。
「残り20分というところで、ターン1で(トップに)かなり接近した。それまではかなり後方にいた。2秒ほど遅れていたので、ローレンスは僕が迫っていることに気づいていなかったのだろう。彼は最終コーナーでGTクラスのトラフィックに引っかかっていた。そこでチャンスが巡ってきたと思ったんだ。でも、彼はギリギリのタイミングで僕に気づき、イン側を閉めてきた。あれが、最後の30分間で僕らにあった最大のチャンスだったと思う」
これでファン・デル・リンデとロビン・フラインスは、今年開催された2つの『ル・マン』レース(ル・マン24時間とプチ・ル・マン)で、ともに2位フィニッシュを飾ったことになる。
「今年はル・マン24時間で10秒差の2位、そして今回のプチ・ル・マンでも2秒か3秒差の2位だった。正直なところ、複雑な心境だ。素晴らしいハイライトや、子どもの頃からの夢の実現に、あと一歩のところまで迫っていたと感じているからね」
フェリペ・ナッセが激しいクラッシュに見舞われ、レース終盤にリタイアを喫したものの、ポルシェ・ペンスキーの7号車チームはGTPクラスにおけるミシュラン・エンデュランス・カップのタイトルを獲得した。
ナッセはジュリアン・アンドラウアー、ラウリン・ハインリッヒとともにこのタイトルを分け合った。ハインリッヒはワトキンス・グレンとロード・アメリカでのレースにはJDCミラー・モータースポーツのポルシェで参戦していたにもかかわらず、皮肉なことにナッセやアンドラウアーと同ポイントでシーズンを終えることとなった。
GTPクラスとは異なり、LMP2クラスのクラウドストライク・レーシング・バイ・APR、GTDプロクラスのポール・ミラー・レーシング、GTDクラスのウインワード・レーシングと、シーズンを通したチャンピオンチームがいずれもエンデュランス・カップのタイトルも獲得している。
■混乱多発のレースを勝者は擁護
このレースでは、フルコースコーションが過去最多の16回出されたほか、近隣での落雷により30分間の赤旗中断もあった。その結果、天候による中断を含め、レース時間の50%近くがセーフティカー先導下かピットレーンで費やされることとなった。これまでの最多記録は2017年大会の14回だった。
イエローフラッグが出されたケースのうち2回を除き、すべてが事故やグラベルトラップへのスタックによるものだった。GTPクラスの車両が6回のコーションの原因となり、LMP2クラスの車両によるインシデントがさらに5回を占めた。GTPクラスの全11台中5台がクラッシュによりリタイアした。
総合4位に入ったフィリペ・アルバカーキはこのレースを、「アルマゲドン(破滅的な大混乱)のようなレース」と表現し、ウェイン・テイラー・レーシングの共同オーナーであるウェイン・テイラーも、自身が経験した中で「最も荒れたレースのひとつ」だと語った。彼はさらに、「これほど多くのコーションや事故が起きたことは信じられないほどだ」と付け加えている。
一方で、ローレンス・ファントールはこの波乱の多いレースを擁護している。
「正直なところ、人々は少し大げさに捉えすぎていると思う」とファントール。
「チャンピオンシップや大きな勝利がかかった状況で、これほど多くの車が走り、コースも短いアトランタの地で、暗闇の中、最後の2時間を走ってみてほしい」
「勝利へのプレッシャー、プロとアマチュアのドライバー間の速度差、路面状況の変化、煙、雨、その他あらゆる要素が存在する。確かに激しいレースはあるし、時には一線を越えてしまうこともある。だけど僕らがここにいるのは、こうしたレースに勝つためであり、誰もが全力を尽くしているからこそなのだ」
■アキュラの一時代が終わる
ニック・イェロリーがドライブしたメイヤー・シャンク・レーシングの93号車アキュラARX-06はクラッシュによりリタイアとなった。一方、同メーカーおよびチームにとってのウェザーテック選手権での最後のレースにおいて、終盤にアグレッシブな燃料戦略を採用した60号車は、表彰台まであと2周というところまで迫ったが、トム・ブロンクビストはエネルギー補給のためにピットインを余儀なくされた。
その結果、ブロンクビスト、コリン・ブラウン、そしてホンダ/アキュラ・パワーでの最後のレースとなったスコット・ディクソンのトリオは、6位でフィニッシュすることとなった。
チーム共同オーナーのマイク・シャンクは次のように振り返っている。
「レース前半は我々が圧倒していた。しかし、残念ながらその後、状況が悪い方向へと転がってしまった。トムを再び上位争いに戻すためにさまざまな手を打ち、あと一歩というところまで迫った。奇跡が必要だったが、奇跡の3分の2までは実現できたと言えるだろう」
「とはいえ、チーム全員の戦略判断には本当に誇りを持っている。トラックポジションを確保するためにあの判断を下すのは、非常に難しいことだった。表彰台まであと1周というところだったのだから。このチームの全員を愛しているし、IMSAで我々を応援してくれたすべての人に感謝したい。そして、我々はこれからも前進し続ける」
ホンダ・レーシング・コーポレーションUSA(HRC US)のケルビン・フー社長は次のように付け加えている。
「このプログラムに貢献してくれたすべての人々、特にMSR、WTR、そしてHRCのスタッフに感謝の意を表したい。彼らの献身、プロ意識、そして情熱こそが、このプログラムの成功の礎だった。アキュラ・レーシングのこの章は幕を閉じるが、ここで築かれた人材、技術、そして関係性は、我々のレース活動の未来において重要な要素となるだろう」
過去2シーズンでアキュラMSRから計5戦に出場したホンダのファクトリードライバーであり、現在全日本スーパーフォーミュラ選手権のポイントリーダーでもある太田格之進も、この週末に現地を訪れていた。彼は、この日本メーカーの活動終了を見届けるとともに、来シーズンのウェザーテック選手権での参戦機会を模索していたとみられる。
■参戦4戦目でクラス優勝の快挙
GM(ゼネラルモーターズ)は、GTPクラス(キャデラック)とGTDプロクラス(コルベット)の両方でマニュファクチャラーズ・タイトルを獲得する快挙を成し遂げた。
キャデラックにとって、現代のIMSA時代における5度目のタイトル獲得は、2014年以降のトッププロトタイプクラスにおいて最多の記録となる。一方、アクション・エクスプレス・レーシングは7度目のクラス・チームタイトルを獲得し、チーム・ペンスキーやチップ・ガナッシ・レーシングと並び、歴代3位タイの記録を達成した。
GMのグローバル・モータースポーツ・コンペティション担当副社長であるエリック・ウォーレンは次のように述べた。
「今年はふたつの素晴らしいチームに恵まれた。我々は『チーム・キャデラック』というアプローチで取り組んだが、キャデラック・チームが見せた安定感は本当に驚くべきものだった。昨年のインディアナポリスを皮切りに、どのサーキットでもキャデラックの活躍が話題になったし、確か10戦連続で表彰台に上がっているはずだ……コルベットも同様だ。激しい戦いだったが、正直なところ、もう少しクリーンな展開であってほしかったという思いもある」
マルコ・ソーレンセンは、カー・ブランシュにとって初となるGTDプロクラスでの勝利について、「明らかにまったく予想外のことだった」と認めた。
同チームにとって、このクラスへの参戦はまだ4戦目での快挙となった。
「今日は自分たちにできることをすべてやり遂げたと思う」とソーレンセン。
「IMSA選手権ではイエローコーションが頻繁に出るため、完璧な戦略を立てることは不可能だ。今日の僕らの戦いぶりには、満足している。レース終盤の2時間で、いつの間にか好位置につけることができたからね」
■レース終盤に電卓を叩いたドライバー
GTDプロクラスのチャンピオンに輝いたコナー・デ・フィリッピは、ニール・バーヘイゲンがポール・ミラー・レーシングの1号車BMW M4 GT3エボでフィニッシュを目指して走行していたレース最後の20分間、ポイント状況を把握しようと電卓を手に計算していたことを明かした。
「あの時が一番不安だったね。計算が合っているか、何度も確認していたんだから」
デ・フィリッピにとって待望のIMSA選手権初タイトルとなったが、これは彼がクリス・ミースとともにランド・モータースポーツのアウディR8 LMSでADAC GTマスターズのタイトルを獲得してから、ちょうど10年という節目の時期に達成されたものだった。
「さっきチームのみんなにも話したんだけど、今朝起きたら(Facebookの)『思い出』機能でその時の投稿が出てきたんだ。2016年にランドでGTマスターズのチャンピオンになったのと、まさに同じ日だった。とても運命的なものを感じた。今朝それを見たとき、『これは良い予兆かもしれない』と思ったんだ」
デ・フィリッピは、昨年ケントン・コシュとともにランダム・バンダルズ・レーシングのBMWでGTワールドチャレンジ・アメリカのプロクラス・タイトルを獲得しており、これで北米におけるGT3選手権の連覇を達成したことになる。
■レクサスの3人が悲鳴
GTDプロクラスで最多の計126周をリードしたジャック・ホークスワース、ベン・バーニコート、カイル・カークウッド組のバッサー・サリバン14号車レクサスRC F GT3は、最終リスタート時にバーニコートが首位から3番手に後退し、さらにレース終盤にエネルギーの追加補給を余儀なくされた結果、クラス10位に終わった。
この3人にとっては、そもそも過酷な一日となっていた。マシンのクールスーツ・システムに不具合が生じたため、各ドライバーはシングルスティンでの走行を強いられた。スティントを終えてマシンから降りる際、3人とも肉体的に疲弊しきった様子だった。
バーニコートは次のように語った。
「とんでもない一日だった。トップに立ち、最後尾に落ち、またトップに返り咲いたんだ。レース開始から2時間でクールスーツが故障し、全員が限界まで力を振り絞らなければならなかった」
「それでも終盤まで優勝争いに絡んでいた。何度か賭けに出る必要があり、まるでカジノで14号車に全財産を賭けるような瀬戸際の状態だった。あと一歩のところだったが、最終的には勝利を逃してしまった」
チェッカーフラッグが振られてから6分後、レースコントロールから「レース終盤のエネルギー使用量を調査中」とのメッセージが表示されたことで、どのクラスや車両が対象なのかを巡って一時的な混乱が生じた。
Sportscar365が把握したところによると、調査の対象となっていたのはGTDクラス3位でフィニッシュしたDXDTレーシングの36号車コルベットだったが、最終的に違反はなかったと判断された。
IMSAのYouTubeチャンネルは、レース開始直前に登録者数200万人を達成した。
IMSAプレジデントのジョン・ドゥーナンは、木曜日に行われたシリーズ恒例の演説『ステート・オブ・ザ・スポーツ』の中で、同チャンネルがF1やMotoGPに次ぐ世界で3番目または4番目に登録者数の多いモータースポーツ・シリーズのチャンネルであり、NASCARと順位を競い合っていると述べている。
[オートスポーツweb 2026年10月06日]