
槇原が登場したのは、9月17日(木)放送のJ-WAVE『GRAND MARQUEE』(ナビゲーター:タカノシンヤ、Celeina Ann〈セレイナ・アン〉)のゲストコーナー。東京をGROOVEさせる音楽とカルチャー、そして日夜それを創り出す刺激的で面白い人々が集い、語らうプログラムだ。
(編註:『GRAND MARQUEE』は、9月30日(水)の放送を持ちまして終了しました。)
35周年を経て感じたこと
この日は、さまざまなアーティストの歌詞に注目して、言葉の面白さやその奥にある思いをひもといてきた「LYRIC MARQUEE」の最終回として「LYRIC MARQUEE THE FINAL」をお届け。2025年にデビュー35周年を迎えた槇原は、現在の自身の心境や、若い世代にも聴かれている日本の音楽について語った。
タカノ:実は、この番組に槇原さんの大ファンのADがおりまして。彼女がラジオの仕事をしている理由というか、理由のすべてと言いますか、音楽を通していつかマッキーさんと仕事をしたいという目標があって。それで今回「LYRIC MARQUEE THE FINAL」をやるなら、絶対にマッキーさんをお呼びしたいと言っていまして。それで実際に出演の依頼をさせていただいたところ、ご快諾いただいてありがとうございます。
槇原:こちらこそです。本当にうれしかったです。
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槇原:それを伺って。たしかに言ったことも覚えていて、でも言ったことを早く自分で行動できる人ってなかなかいないので。「本当にそうやって行動したんだ」と感激しまして、これは出させていただきたいな、と。
タカノ:(ADが)21歳なんですよね。夢がマッキーと仕事をすることなんです。もう叶っちゃってるから(笑)。
槇原:よく僕の音楽を聴いてくださっているなという感じでした。
タカノ:本当に幅広いジェネレーションに槇原さんの曲は刺さっていますから。
セレイナ:歌詞が我々の心に届いています。
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タカノ:そんな槇原さんの歌詞について、このあとたっぷり伺います。まずは最近のマッキーさんのお話からお伺いしたいと思います。2025年にデビュー35周年という節目になりました。
槇原:曲がりなりにも35周年を迎えることができました。
セレイナ:2026年はどんな1年になっていますか?
槇原:昨年までは周年の企画がずっとありましたが、それを無事に終えまして。今はのんびりと曲作りをしています。
セレイナ:音楽を本当に長く続けてきていらっしゃるじゃないですか。そのなかで、今だからこそあらためて新鮮に感じていることや、「面白いな」と感じていることはありますか?
槇原:世の中の音楽でいうと、たとえば細野晴臣さんだったり、シティポップの山下達郎さんとか、僕たちが青春時代に聴いていた音楽がまた若い世代の人たちに聴かれているということは、本当に楽しい出来事だなと思います。あと、自分のなかでも曲作りみたいなことをもう一度考え直しているというか、見つめ直しているところはあります。新鮮な気持ちで曲を作るのは、どうしたらいいのかな、みたいな。
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槇原:そうなんですよ。
タカノ:海を越えて、まったく知らない国の若者たちが聴き始めたりとか。
槇原:昔の日本の人が、海外の音楽に憧れて曲を作って。たぶん、日本人ってすごく精密にいろいろなことを吸収するんだと思うんです。それをずっと続けてきた音楽が、逆に向こうの国の人たちに認められているという不思議さというか。なんかいいものを作ってきた人たちってすごいなって、思ったりしますね。
タカノ:マッキーさんの曲も海外からの反応があると思うんですけど……。
槇原:インドネシアね(笑)。
タカノ:どんな反応が届いていますか?
槇原:インドネシアのほうでかなり聴いていただいたみたいな感じでしたね。以前の大統領と僕の顔が似ているっていうことで話題になって。
タカノ:そういうことだったんですか(笑)。
槇原:それで『もう恋なんてしない』のミュージックビデオにインドネシアのみなさんがアクセスして、それからファンになってくださって。
【公式】槇原敬之「もう恋なんてしない」(MV)【5thシングル】 (1992年) Noriyuki Makihara/Mo Koinante Shinai
槇原:極地的ですけどね(笑)。
番組ではここで、3月にリリースされた『夢でよかった』をオンエア。同曲はペキニーズのムーチョが主演する短編映画シリーズ『犬も歩けば』のために書き下ろした楽曲だ。槇原はもともとムーチョの大ファンだそうで「普通にフォローして写真を見ては悶絶しているような感じで大好きだったんです。まさか依頼をいただけるとは思っていなくて、ひさしぶりの“両思い感”があってひとりで興奮していました」と語った。
槇原敬之 - 夢でよかった [Music Video]
歌詞は日常の何気ない会話から
槇原が歌詞の題材として大切にしているのは「人との何気ない会話」なのだそう。そこから生まれる言葉に耳を傾けているという。タカノ:槇原さんは日々、いろいろなことを見たり感じたりするなかで、どういうことに出会ったときに「これは歌にしたい」と思うのでしょうか。
槇原:ひとりの人間が出会う物事って、限りがあるじゃないですか。なので、いろいろな人のお話を訊いて。意外とみなさん気づいてらっしゃらないんですが、いいことを言っているんです。「僕の前でそんなこと言っちゃっていいの?」みたいな。それをいっぱい、いろいろな感情を話してもらったのをもらって、それを書いたりすることも多いですね。
タカノ:何気ない会話のなかから?
槇原:「めちゃくちゃいいこと言っているよ、それ」みたいなことがあるんです。
セレイナ:ご友人とかの言葉の交わし合いというか、そういうのは大事にされていますか?
槇原:そうですね。関西出身なのでよくしゃべるんですけど、そのしゃべるなかから本心とか「本当はこうなりたいんだけどな」という気持ちや、悲しかったこととか、そういうのをつぶさに感じ取って書くことはあります。
セレイナ:槇原さんの歌詞は、誰もが知っている景色というのを槇原さんの解釈で、新しい見方で、曲で提示してくださって。我々リスナーはそれで新しい発見があるなというのを感じます。気づきというのはどういったところから生まれているんでしょうか。
槇原:たぶんですけど、みなさんがごはんを作ったり市役所や区役所に行ったりとか、いろいろなことをやっている時間に、僕はそういうことをずっと考えたり見たりしているんです。その考えている量なんじゃないかなと思っています。書こうと思わないと書けないし、見ようと思わないと見えないので。だから、見ようとして見ている時間みたいなものが、普通の人より長いだけだと思います。
タカノ:もしかしたら、その切り口を探す作業みたいなことをやられているのかもしれません。視点を増やすというか。
セレイナ:あと、言葉を読ませていただくと、聴く人それぞれに委ねてくれるような余白を感じます。それも意識されていますか?
槇原:実を言うと、あまり考えたことがなくて、「パーソナルすぎるな」と思って書いていることのほうが多いです。
タカノ:僕は槇原さんの曲とかは“自分事化”しちゃってます。
槇原:それがいいっぽいです。詳細を書いたところで、みなさんは聴くときに自分の物語に変換して聴くので。だからそれよりも、細部にわたって感じていることや見ていることを書いているほうが、自分事のようにみなさんは捉えやすいのかもしれないな、ということはみなさんの意見を訊いていて感じます。
セレイナ:伊勢神宮が出てきたりと、固有名詞がのせられています。でもそれがすごく、ポップにきれいにメロディーにバッチリハマっていて。でも、今お話を伺っていたら、たしかに固有名詞があるからこそ、我々聴いている側もイメージが立ち上がるというか。それを自分の感情に変換したときに、めちゃくちゃ共感できるみたいな感覚です。
槇原:ぼかせばぼかすほど、共感できないところはあるのかもなと、最近思います。ぼかすと、いいことを言っちゃっている感じにはなるんですけど、なんかこう具体的に入ってこないみたいな。だけど固有名詞を書いちゃうことによって「自分だったらどこかな」とか、そういう変換が行われるような気が。非常にサイバー、電脳な感じがします。落語家さんみたいな感じというか。ひと言言ったことによって、自分の頭にパーンと入ってきた電気信号が違うものに変換されるような感じというのは、日本語独特かもしれないですけどね。
タカノ:もしかしたら、槇原さんのメロディーやハーモニー、歌声の力というのも大きいのかなと僕は思ったりしています。
槇原:うれしいです。
タカノ:リスナーに寄り添ってくれている感じになるというか。
槇原:あまり乱暴なことは書かないようにしようとは思っています(笑)。
タカノ:心がけということですね。キャリアも長くて、デビュー当時からラブソングを歌ってきた印象があります。段々とそのラブがライフに向かっていったと言いますか、人とのつながりや生き方を歌詞のなかで描くようになってきた、歌の視線が広がってきた印象があります。
槇原:そうですね、このままずっとラブソングを書いていると限界があるなと思ったときがあって。ラブソング、恋愛以外のこと、たとえば「今日はごはんがおいしかった」とか、そういう恋愛以外のことを書けるようになると一生書けるなと思って。ちょっとシフトしていこうというのは意識的した時期があります。だから「ラブソング禁止!」みたいな。
セレイナ:自分に制約をかけて。
槇原:そうやって僕が勝手に言っていたんですが、ライフソングみたいにして書いているうちに「ライフのなかにラブあるじゃん」みたいな。
セレイナ:大きな意味の愛みたいな。
槇原:はい。だから今はもう、あまりどっちかに分けずに書いています。でも、両方書いてよかったなと僕は思います。
タカノ:愛のかたちが大きくなったというか、かたちが変わってきたイメージもあるかもしれません。
槇原:まさにそういう感じだと思います。
「僕が書けない歌詞」と惹かれた理由
ここで槇原は、思い入れのある歌詞が綴られている自身の曲として『わさび』をセレクト。その理由を語った。槇原:これは自分が歌っているんですが、歌詞を書かれたのは須藤晃さんという、尾崎豊さんや村下孝蔵さんのプロデュースをやっていらした方です。
セレイナ:この曲を選んだ理由というのは?
槇原:実は、この歌詞に巡り合いまして。それで勝手にメロディーをつけたんです(笑)。それでご本人もすごく気に入ってくださって。
セレイナ:どこで出会った言葉なんですか?
槇原:知り合いから「須藤さんの、まだ曲を書いてない歌詞があるんだけど見てみる?」と言われて。「見る見る!」と言って見せてもらったときに、最初はなにげなく見ただけになっていたんですが、2回目に見たときに「とんでもない歌詞だな」と思って。「僕が書けない歌詞、この人にしか書けない歌詞だ」と思って、その魅力にとりつかれて勝手にメロディーをつけて「これをなんとか自分のものにしてやる」と。そういうきっかけのあった曲です。
タカノ:出会いから物語が始まっている感じがします。
槇原:普通、やったら怒られますけどね(笑)。
番組では槇原の『わさび』をオンエアした。
セレイナ:ここからは「マッキーの“この一節”がすごい」という企画で話を伺います。リスナーのみなさんから「この言葉がすごい」「この一節に心を掴まれた」という槇原さんの歌詞を募集しました。
番組ではリスナーからの『2つの願い』の歌詞について「聴いた人に想像させてくれる最後のところが大好き」といった声を紹介した。
歌詞はこちらのサイトから読むことができる。
Futatsuno Negai
槇原:これは慌てて作ったんです。実家に帰ったときに、間に合わなくて「ああ、曲を仕上げなくてはいけない」と。
セレイナ:締め切りにということですか?
槇原:はい。それでワーッと作ったので、いまいち覚えていないんです。恋愛に揺れ動いている時期ですから、そういう歌詞を書いて。2つの願いがあって、2つ叶ったらいいんだけれども「片方しか叶わないんだよな」みたいなことを書きたかったんだと思います。ただ、必ずそういうものだと思うんです。
タカノ:天気と電話という対比もすごくいいですよね。個人的な物事と大きな空とね。
槇原:電話がくることのほうが、いいことのように思うじゃないですか。雨が止んで自分がロードショーに行くことも大事だと思いますが、でもそのときに雲間に日が差したということは「そういう結果になっちゃったけど、それでいいんだよ」ということを表したかったんです。
最後にセレイナは、槇原が歌詞を書くうえで大切にしていることを訊いた。
槇原:とにかく聴いた人が、できるだけ傷ついたり、無駄につらい気持ちにならないようにするにはどうしたらいいかだけを考えていますね。あとはもう、好きに書いています。(歌詞は)かたちに残ってしまうので、より丁寧に書くことが大事なのではないかと思っています。
槇原敬之の最新情報は公式サイトまで。

