2026年F1第17戦シンガポールGP ルイス・ハミルトン(フェラーリ) マックス・フェルスタッペン(レッドブル)がポール・トゥ・ウィンを遂げた2026年F1第17戦シンガポールGP。2〜3番手スタートのフェラーリ勢は、くっきりと明暗の分かれる結果となった。
シャルル・ルクレールはフェルスタッペンに7秒以上の差をつけられながらも、7月のベルギーGP以来となる2位表彰台を獲得し、「いいレースだった。速さは足りなかったけどね。戦略も、ピットインタイミングも良かった」と語った。
一方のルイス・ハミルトンは、レース終盤まで3番手を必死に守っていたが、最終的にはアンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)ら3台に次々と抜かれ、6位でレースを終えた。
ハミルトンの最初の誤算は、スタート時に履いたミディアムタイヤでまったくペースが伸びなかったことだった。そのためわずか18周でミディアムタイヤを捨て、ソフトタイヤに履き替えた。その6周後、ピットでミディアムタイヤに履き替えたルクレールが、ハミルトンのすぐ前でコース復帰した。
ペースは明らかに、ソフトタイヤを履くハミルトンのほうが速い。しかしルクレールは譲らない上に、チームからはそれに関する指示も出ない。「この周だけで、2秒失ったぞ」。ハミルトンがそう訴えても、状況は変わらない。ハミルトンはそこから延々と、ルクレールの後ろをついて周回を重ねるしかなかった。
39周目。ランス・ストロール(アストンマーティン)のストップでバーチャル・セーフティカー(VSC)が導入された。すでにソフトタイヤで20周以上走っていただけに、3番手を走るハミルトンはタイヤを交換できるチャンスだった。しかしこのタイミングでピットに向かった上位勢は2番手のルクレールと4番手のアントネッリのみ。ハミルトンはステイアウトした。
これでハミルトンは2番手に上がったものの、1周2秒以上速いルクレールにあっさり抜かれることに。さらにそこからアントネッリ、ランド・ノリス(マクラーレン)、オスカー・ピアストリ(マクラーレン)になすすべもなくかわされ、6位入賞が精一杯だった。
VSCが出る数周前にハミルトンは、「タイヤ(のグリップ)が落ちてる」と訴えていた。なのになぜフェラーリは、ルクレールだけを呼び、ハミルトンはピットインさせなかったのか。いつもながらのフェラーリの不可解なチーム戦略かと思われた。ただ、ハミルトンはチェッカー直後、無線でこう話した。
「みんな、申し訳ない。僕が選んだ戦略、僕のコールで、貴重なポイントを失ってしまった。次のレースで取り戻すよ」
ハミルトンが言った「僕が選んだ戦略」、そして「僕のコール」は具体的に何を指すのか。スタートタイヤにミディアムタイヤを選んだことか。そのミディアムを、想定より短い18周で捨てたコールなのか。あるいはVSCが出た際のステイアウトの選択が、ハミルトンによるものだったのか(「グリップがない」と訴えていたにもかかわらず)。
このコメントが意味するところは今後明らかになるかもしれないが、もし25周目にルクレールにすぐに順位を譲ってもらっていたら、追走するアントネッリを引き離し、ソフトタイヤのタレもあそこまで大きくならなかっただろう。そして何よりVSCの際にタイヤ交換をしていれば、うまく行けばルクレールとダブル表彰台、悪くても4位入賞していたことだろう。
レース直後の悄然(しょうぜん)とした姿からは、1週間前のマレーシア・セパンで3位表彰台に上がった勢いは消え失せていた。ハミルトンがここで失ったものは、獲れていたはずのポイント以上に大きかったのかもしれない。
(取材・文 柴田久仁夫)
[オートスポーツweb 2026年10月12日]