ボッシュエンジニアリングがリジェ・オートモーティブと共同開発した『リジェJS2 RH2』。気体水素エンジンで走るレーシングカーだ 10月6日、静岡県・富士スピードウェイのショートコースで、日本のボッシュエンジニアリング設立20周年を記念した走行イベントが開催。国内レース関係者、メーカーを中心に招待され、水素エンジンを搭載する『リジェJS2 RH2』の同乗走行と、ボッシュが開発中の運転支援システムを搭載したメルセデスAMG GT 63 S 4MATIC+の試乗プログラムが行われた。ここでは、その模様を紹介する。
このイベントは、2006年に日本国内で株式会社ボッシュエンジニアリングが設立されてから20周年を迎えることを記念して行われた。1886年にドイツで創業されたボッシュは、1911年に日本での事業展開をスタートし、以降日本への注力も強化し続けてボッシュ・グループの一角として、2006年にエンジニアリングにフォーカスしたボッシュエンジニアリングが立ち上げられた。
同社は、自動車部品の開発やアプリケーション(適合)開発などのエンジニアリング業務に加え、モータースポーツ向け製品の販売も担当している。スーパーGTをはじめとする国内外のモータースポーツでも、ボッシュおよび関連企業が手がける部品や電子制御システムが数多く採用されている。
今回の20周年イベントでショートコースに持ち込まれた車両は2台。リジェJS2 RH2は、リジェ・オートモーティブとボッシュエンジニアリングの2社が共同開発を行う水素技術実証車両、もう1台は市販のメルセデスAMG GT 63 S 4MATIC+に、ボッシュエンジニアリングが新たに開発を進めている『リアルタイムドライブコーチング機能』と『次世代ABS技術』を搭載したものだ。
まず同乗走行が行われたのはリジェJS2 RH2。この車両にボッシュは水素インジェクターを供給しており、エンジンは水素をシリンダー内に直接噴射する3.0リットルV6ツインターボで、最高出力443kW(602hp/7250rpm)、最大トルク680Nmを発揮する。完全オリジナル設計のレーシングカーで、気体水素のタンクを安全に格納する特製モノコックを備えている。
ふたり乗りでドアはバタフライ式に跳ね上がり、コンパクトな外装デザインと相まってクールな印象の1台だが、ミッドシップに搭載されたエンジンの音はかなりの迫力。アイドリング状態でも強く響く重圧なローサウンドは、乗りこむとアイドリングの時点で車内での会話はままならないほどのパワフルな音量。いざコースに入ると、水素エンジンのトルクフルな加速に驚くとともに、ショートコースではもったいないほどのパフォーマンス。まだまだ走行時間が短いのが課題のようだが、普通にレーシングコースで走ってもらいたい1台だ。
続いてメルセデスAMG GT 63 S 4MATIC+では、先述の『リアルタイムドライブコーチング機能』と『次世代ABS技術』を体感。前者のコーチング機能は、6軸GセンサーとGPSデータをもとに車両の動きを把握しAIで演算処理、そのデータをもとにコーナー進入時のブレーキを自動で介入操作するほか、ブレーキのタイミングも音声でアナウンスするという斬新なコンセプトの新技術だ。
コーナー進入時のドライバー操作は、アクセルを踏み続けたままライントレースに集中するのが基本となる。一方で、減速は車両側の制御に任せる仕組みで、これまで多くの一般ドライバーが常識としてきた操作セオリーとは大きく異なる。
アクセルペダルを戻さずにコーナーへ入っていく感覚は想像以上にスリリングだが、車両自体のポテンシャルが高いこともあり、限界を超えそうな不安はなし。自動で入力されるブレーキもリニアかつ滑らかで、挙動に不自然さは感じられなかった。機能を信頼して走れるようになれば、ラップタイムを短縮できるシーンもありそうだ。
後者の『次世代ABS技術』では、従来のABSのようにブレーキロックの限界付近でペダルにノック感が伝わることがほとんどなく、自然な減速Gが得られる点が印象的だった。コーチング機能と組み合わせることで、ボッシュエンジニアリングが開発を進めるシステムと斬新なコンセプトに触れられ、最新技術のショーケースを存分に体験できた。
今回のイベントでは他にも、コンピュータ内のデータ再現エンジンをアセットコルサに繋げた開発用シムも設置し、電子制御の調整のスムーズ化に向けた手法改善の取り組みを示していた。なお今回のボッシュエンジニアリングのイベントには、国内モータースポーツでも関係しているトヨタ、ホンダ、ニッサンの3メーカーも招待され、スーパーGTでのメーカー首脳陣、そしてスーパーGTを主催するGTAの坂東正明代表の姿も見られた。
[オートスポーツweb 2026年10月15日]