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「会いにいけるアイドル」AKB48の象徴的なイベントである「握手会」で5月下旬、惨劇がおきた。10代後半のメンバー2人と会場スタッフ1人がノコギリをもった男に切りつけられ、負傷したのだ。
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報道によると、メンバーの川栄李奈さん(19)は右手親指の骨折と切り傷、入山杏奈さん(18)は右手小指の骨折と頭部に切り傷を負ったという。AKBの仕事として参加した握手会で、突然おそわれた2人にとっては、心にも大きな傷が残る事件だったのではないか。
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会社員なら「労働災害」ということで、心身のダメージに対する保険金が支払われるケースだろう。だが、川栄さんと入山さんは、芸能事務所に所属するタレントだ。こんな場合、労災は適用されるのだろうか。労働問題にくわしい山田長正弁護士に聞いた。
「労働災害が適用されるためには、労働者災害補償保険法上の『労働者』に該当する必要があります。そして『労働者』というと、一般的には、会社との間で雇用契約を締結している人が対象になると思われがちです」
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雇用関係がない人も「労働者」と言えるのだろうか?
「はい。会社との間で雇用契約を締結していない場合であっても、一定の条件下では、労働者ということができます。それは、次の2つの条件を同時に満たすときです。
(条件1)会社の指揮監督下において労務の提供をする者
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(条件2)労務に対する対償を支払われる者
以上の条件を満たせば、労働基準法上あるいは労働者災害補償保険法上の『労働者』として取り扱われ、労災認定される場合があります」
では、AKBメンバーのようなタレントは「労働者」と言えるのだろうか。
「タレントの場合はまず、『会社の指導監督下で労務提供しているかどうか』(条件1)を判断しなければなりません。この場合は、下記のようなことが判断材料となります。
(A)仕事の依頼や業務の指示などに対して、YES/NOを自由に言える立場か
(B)業務の内容や方法について、会社から指揮命令があるか
(C)労働の時間や場所について、ある程度、拘束されているか
(D)本人以外の人物に、仕事を代替させることが可能か
タレント本人に自由がなく、本人以外でも代替できるような、あまり人気のない人材であれば、労働者性が高まるでしょう」
では、『労務に対してお金を受け取っているかどうか』(条件2)については、どうだろう。
「たとえば、拘束時間や日数が当初の予定よりも延びた場合、報酬がそれに応じて増えるときには『賃金』とみなされる可能性が高くなります。また、会社から源泉徴収をされている場合にも、労働者性が強まります。
しかし、タレント本人が事業者として動いているという性質が強い場合や、タレントに対する報酬額が著しく高額な場合には、労働者性を弱める要素となります。
ですから、AKB48に労災が下りるかどうかは、それぞれのメンバーごとに、さきほどの諸要素を総合考慮する必要があります。『労働者』と判断されれば、契約内容が雇用契約ではなくても、労働災害が適用されるでしょう」
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
山田 長正(やまだ・ながまさ)弁護士
山田総合法律事務所 パートナー弁護士
企業法務を中心に、使用者側労働事件(労働審判を含む)を特に専門として取り扱っており、労働トラブルに関する講演・執筆も多数行っている。
事務所名:山田総合法律事務所
事務所URL:http://www.yamadasogo.jp/
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