「破れたパンスト3万円」......整形手術のために衣装を売り続けるアイドルの懺悔

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2014年09月21日 18:10  おたぽる

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おたぽる

無限ループにハマってしまったアイドルのお話です。

――地下アイドルの"深海"で隙間産業を営む姫乃たまが、ちょっと"耳の痛〜い"業界事情をレポートします。



 売れない地下アイドルの姫乃たまです。どこの事務所ももらってくれないので、フリーランスで活動しています。そのため、仕事用にメールアドレスを公開しているのですが、プライベートのアドレスと勘違いして私的なメールを送ってくる人がたくさんいます。



 特に5年間活動してわかってきたのですが、季節の変わり目は「衣装を売ってくれ」という内容のメールが多く届きます。衣替えの手伝いなのかもしれません。ちなみにこういう類のメールを送ってくる人は、だいたい面識のない人です。



 しかし、差出人に悪気はないのです(多分)。現に、ごく一部ですが事務所に無理やり衣装を売らされるアイドルも存在します。ひどい時にはライブ後すぐに着替えさせられて、その場でオークションを始めるなんてこともありました。あの時、楽屋で着替えさせられていたアイドルさんの悔しそうな横顔は、今でも忘れられません。



 アイドルさんも舞台では笑顔を絶やさないので、衣装は売ってもらえるものだと勘違いしてしまうのも頷けます。そのため、私もそういったメールには、やんわりお断りするのですが、先日、「破れて履けなくなったパンストでいいので、3万円で売ってくれませんか」というメールが届きました。



 いやいや、こっちも売れてないとはいえイメージってもんがあるんですよ。いやあ、でも数百円で買ったパンスト(しかももう履けない)が3万円かあ......。誰にもバレなきゃいいかなあ......などと、心を揺さぶられつつメールを読みすすめていると、一瞬にして目が覚めました。



 とあるアイドルの個人名を出して、「この子にも同じ額で売ってもらってるのですが、ダメですか」と書いてあったのです。えー、なにこの最新版アイドルブルセラ状況(そんなものはない)。全然、知りたくなかったよ。というか、次に会う時に気まずいじゃないですか。



 悩んだ結果、最近ご無沙汰していたのもあって、すっごく失礼を覚悟で電話してみました。世間話をしつつ、恐る恐る本題に触れると、しばしの沈黙の後、「話してもいい?」という声が聞こえました。



「ダメなことしてるなって、自覚はあるの。連載に私のこと書いてくれないかな。それで許される気がするから」



 私は予想していたよりに彼女が思いつめていたことと、この連載がいつの間にかアイドルの禊場になっていることに驚きました。



 結論から書くと、彼女はファンに衣装を売って、整形手術の費用にしていたのです。



 子どもの頃からアイドル好きだった彼女は、念願のアイドル活動を始めて1年ほど、全くファンがつきませんでした。幼い頃にみたアイドルと自分のギャップに焦り、原因は自分の顔にあると思い込むようになったそうです。



 アイドルとして売れるため、特にコンプレックスだった目を整形しました。手術費はOL時代の地道な貯金で払いました。一重を二重に、目頭を切開して、涙袋にヒアルロン酸をいれると、途端にファンが増えたそうです。「今思えば顔じゃなくて、自分に自信がついて明るい性格になったせいだと思う」と、当時のことを振り返ります。



 それから少しして、派手な目が他の顔のパーツと釣り合いがとれていないように感じ始めました。しかし、アイドル活動を始めてから、会社をやめてアルバイトで生活しているため、整形にかけられるお金はありません。



 ファンから衣装を売ってくれないかと持ちかけられたのは、ちょうどそんな時でした。一度ライブで着て見せれば、いい値段で買い取ってくれるので、今度は自分から他のファンに衣装を買わないかと誘ってみたのです。



 そのうち感覚が麻痺してきて、フリーマケットで私服を定価以上の値段で出品するようになりました。SNSに「今日はフリマに出店してる」などと書き込むと、ファンが足を運んでくるそうです。



「あくまで、来てねっていう雰囲気は出さないで書き込むのが大事。周りは普通に子どもの古着を数百円で売ったりしてたから、私のブースだけ異様だった」



 服を売ったお金は全て、豊胸などの整形手術に使いました。今は維持費のために、どうしてもお金が必要だと言います。



 アイドルとして売れるための整形が、整形をするためのアイドル活動に変わりました。「もう周りの人にはバレてるし、イメージも何もないよ。気づいてなかったの、たまちゃんだけじゃない?」と笑われてしまいました。



「でも誰も触れてくれない話だったから、聞いてくれてありがとね」と、最後に彼女は言いました。電話の最中、これから彼女はどうするのか、現状から抜け出すにはどうすればいいのか、何ひとつでてきませんでした。



 しかし、現実ってそんなにうまくいかないものなんだよなあ......と思うのです。



●姫乃たま
1993年2月12日、下北沢生まれ。日本の地下アイドル。2009年より都内でライブをする傍ら、ライターとしても活動を開始。イベントの主催や、司会、モデルとしも活躍している。全曲ボーカルをつとめたFriendlySpoon「フレスプのファーストアルバム」絶賛発売中。
[地下アイドル姫乃たまの恥ずかしいブログ]http://himeeeno.hatenablog.com/
[姫乃たまのあしたまにゃーな]http://ameblo.jp/love-himeno/
[twitter]https://twitter.com/Himeeeno



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  • おばちゃんは知っている。自分の尊厳を切り売りしていると、じわじわと精神をやられるよ。
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