「妊娠は悪いことなの?」職場で「マタハラ」受けた女性たちが深刻な実態を告白

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2015年06月24日 18:31  弁護士ドットコム

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男女雇用機会均等月間の6月、厚生労働省や労働団体など「STOP!マタハラ」というキャッチフレーズをかかげ、妊娠・出産をきっかけにした職場での不当な取り扱い(マタ二ティ・ハラスメント)をなくすための啓蒙キャンペーンを展開している。その一貫として、マタハラ被害にあった女性らで作る任意団体「マタハラNet」が6月24日、東京・霞ヶ関の厚生労働省で記者会見を開き、妊婦をめぐる深刻な実態を告白した。


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会見には、妊娠・出産を理由にした解雇や退職勧奨などを受けた女性5人が出席。「あなたの家庭環境なんて知らないし、自分で何とかしろと言われた」「妊娠を告げたら、突然社長から解雇予告通知書を渡されて頭が真っ白になった」といった生々しいマタハラ被害の実態を語った。



マタハラNetをサポートしている新村響子弁護士は「裁判で戦っている仲間5人が、みんなで声を上げて『マタハラ・ストップ』を訴えたいと会見に踏み切った」と話し、「『こんな被害を受けて戦っている人もいるのだから、マタハラをやめてほしい』とアピールしたい」と会見の意図を語った。



●「妊婦として扱うつもりもない。一生懸命やらなければやめてもらう」


会見に出席した西原ゆかりさん(34)は、介護施設で、1年更新の契約職員として働いてきた。利用者をベッドから車いすに移動させたり、車いすを抱えて階段の昇り降りをする送迎介助、入浴介助のような身体的に負担が大きい業務の担当だった。



そして勤務5年目となる2013年初夏、結婚8年目にして念願の妊娠がかなった。妊娠4ヶ月となった8月、女性の営業所所長に報告し「勤務時間を8時間にしてほしい」などと就労改善を申し出たが、応じられなかった。「つわりもありましたが、入浴介助中に何度も熱気で吐きそうになったり、送迎介助中にお腹も頻繁に張りました」



身体の負担が大きい仕事内容は変わらなかったため、今後の働き方について所長に相談した。しかし「特別扱いするつもりはないし、妊婦として扱うつもりもない。一生懸命やらなければやめてもらう。更新はない」と告げられたそうだ。所長は西原さんを無視するようになり、同僚たちとの関係もギクシャクし始めた。



12月には切迫早産の診断が下されたが、所長には「でまかせだ」と信じてもらえなかった。「やっと授かることができた命なのに、妊娠は悪いことなの?」と、精神的に不安定になった。産休に入った翌年1月「うつ状態」との診断を受ける。翌2月、第1子を無事出産したが、3月にメンタルクリニックを受診したところ、うつ病との診断を受けた。



「妊娠した人は辞めていく職場だったので、妊娠しても介護の仕事ができることを見せたかった」と悔しそうに語った。西原さんは、記憶の喪失や摂食障害などのうつ症状に悩まされながら、会社と所長を相手どって、昨年8月、マタハラに対する慰謝料を求める裁判をおこした。



●「マタハラ研修」の実施が必要


新村弁護士は「何がマタハラにあたるのか、分かっていない人が多い。それがマタハラの原因です」と語り、企業などでのマタハラ研修の必要性を強く訴えた。



「セクハラは、どんなことがセクハラにあたるのか、ということが理解されて、社会の共通認識になりつつあります。マタハラも、厚労省がマタハラの具体例を発表したり、企業のマタハラ研修が必須になるような周知啓発や、妊娠・出産をした労働者が働きやすい環境を整える制度を作る義務を、法律で定めるべきではないでしょうか」


(弁護士ドットコムニュース)


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  • 妊婦様になってはいけない。皆に負担をかけているという自覚は必要。そして妊婦さんも頑張って働いて、復帰して私も誰かが妊娠した時にフォロー頑張ろうと思える職場作りは大事。でなければ少子化にだってなる。
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