【インタビュー】『ルパン三世』新TVシリーズには隠されたテーマがあった! 浄園祐プロデューサーが最後まで悩んだ「物語の終わらせ方」

157

2015年10月01日 22:02  マイナビニュース

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

マイナビニュース

写真提供:マイナビニュース

●ルパンの生きざまを描くための線
30年ぶりに『ルパン』がTVシリーズで帰ってくる! 昨年10月飛び込んできたニュースに、いったいどれだけの人が胸を躍らせたことだろう。ついに10月1日から、TVシリーズPart4となる新生『ルパン三世』(日本テレビ系 毎週木曜25時29分〜25時59分)の放送がスタートする。


はたして、新しい『ルパン』はどのような作品となって私たちを驚かしてくれるのか。そして、なぜ今このタイミングでTVシリーズを作ることになったのか。新たなキャラクター・レベッカ、ニクスを投入した理由とは? 今回プロデューサーを務めるのは、長年『ルパン三世』作品に関わってきた制作スタッフを束ねるテレコム・アニメーションフィルムの浄園祐社長。自身もTVアニメ『LUPIN the Third -峰不二子という女-』、OAD『LUPIN THE IIIRD 次元大介の墓標』(2014年)など、さまざまな角度から『ルパン』の魅力を描いてきた人物だ。本作の最重要キーマンともいえる浄園氏に、新TVシリーズの気になるポイントを聞いた。


――"浄園"さんというのは珍しい名字ですね。ご出身である静岡県には多いお名前なのですか?


"浄園"という名前は、佐賀のお寺がルーツなんです。父親が教員をしていて静岡に来たため、静岡県が出身地になっています。祖父は門前の小僧からパチンコ店を経営したりとめちゃくちゃで、結果として誰も寺を継ぎませんでした。オヤジが英語の教師だったというのもあって、劇場で英語版の『トムとジェリー』を見せられたのがアニメとの出会いです『ルパン』を知ったのもその頃ですね。田舎だったので、当時は『キョンシー』と『ルパン』が一緒にあったりと、みんな2本立て3本立ての同時上映が当たり前の時代でした。


昔好きだった『ルパン三世 風魔一族の陰謀』(1987年)などを作っていたのがテレコム(当時は東京ムービー)だったことを知ったのは業界に入ってから。それで3年前に「テレコムの社長をやれ」と言われた時に、じゃあこの人たちとど真ん中の『ルパン』を作りたいなという思いが生まれました。


――TVアニメのプロデューサーというお仕事について、あらためて教えていただけますでしょうか。


本来で言えば、役者を決めたり予算やスケジュールを決めたりします。でも『ルパン』は長きにわたってやっているので、ある程度のフォーマットも役者さんも決まっています。そういう意味で今回は『ルパン』の歴史の中で、「どういう『ルパン』を作るのか」ということを説明する必要がありました。


実はここ数年、会社の事業として『ルパン』を盛り上げようと、さまざまな取り組みを行っています。『ルパン三世VS名探偵コナン THE MOVIE』(2013年)のような異色ものをやってみたり、俳優の小栗旬さんを主役に実写化をしてみたり。私のほうではTVシリーズ『LUPIN the Third -峰不二子という女-』、OAD『LUPIN THE IIIRD 次元大介の墓標』(2014年)など、スピンオフ作品でルパン以外の人物に焦点を当てました。


僕は、『ルパン』には原作の幅広さがあるし、顧客も多様である印象があります。『旧ルパン』(TV第1シリーズ)のようなエッジの効いたものが好きだという人もいれば、『新ルパン』(TV第2シリーズ)のようなど真ん中の作品が好きという人もいるので、その人たちを満足させるためには、いろんなコンテンツを会社として発信する必要があるわけです。そこに着目して企画を立てたのですが、そこは僕が企画書を作って売り込んで……というサクセス・ストーリーは実はあまりなくて、もうやろう! って決めていたものなんです。ただ、そこには30年ぶりに復活させるぞ! という強い思いはありました。


――TVシリーズ第1〜3作、劇場版などさまざまな展開がある中で、『ルパン』らしい『ルパン』、ど真ん中の『ルパン』というものは定義付けが難しい気もします。


明確な『ルパン』らしさを説明できる人ってなかなかいないんですよ。でも、僕は作り手なので、それを分析する必要があります。どういうものを届けたら「これぞ『ルパン』」と言ってもらえるのかということを考えた時に、やっぱり長年作品に携わってきたテレコムのスタッフが描くと、まず『ルパン』らしい『ルパン』になるということがあります。


例えば、線の温かみ。2000年以降アニメはデジタル化が進み、絵を描いても途中からはパソコンで作っています。どんなに有名なアニメも、それは『エヴァンゲリオン』、『ドラえもん』、『アンパンマン』であっても、作画したものをデータにして作業しています。データってやっぱり味気がないもので、人が描いた線もドットになってしまう。つまり、線の温かみがなくなるということです。手書きの手紙のぬくもりと、メールの文書の味気なさの違いに似ていますね。


僕たちが小さい頃に見ていたアニメはセル画だったから、人が描いた絵を転写していたんです。つまり、かすれたり、よれだったり、逆に力強さ、粗さなど、描く人の気分にもよるところが全部画面に出ていました。僕たちはそういうところから、画面から出てくる"圧"を感じていたんです。でも、今はデジタルになったことで、きれいにする技術だけはとても進みました。美少女モノとか髪の毛の先まできれいに描けますし、目の中のハイライトまで細かくできます。そういった精密さは再現できるけれども、人の荒っぽさや生きざままでは出せない。


ルパンたちは誰にも縛られず、欲しいものをなんでも手に入れていきます。彼らのそういう生きざまが、『ルパン』作品のかっこよさであり、ほかのアニメ・キャラクターにはない魅力です。そんな生きざまを描く上で、整理されたもの、フォーマットにのっとったものは『ルパン』を作る上では邪魔になるんです。だから今回、僕たちはあえて劣化させました。ジーンズでいえばあえてダメージジーンズを作るような、あえてもう1回汚すイメージです。そういった人のぬくもりの部分が、もしかすると日本のアニメが海外で作るものと違うところなのかなと思っています。


●『ルパン』を懐かしいアニメにしたくない
――制作スタッフでは、『ルパン三世 カリオストロの城』(1979年)に参加した友永和秀さんが総監督を務めています。


うちにはもう何十年も『ルパン』を描いてきた人たちがいまだに現役です。友永は、『カリオストロの城』でクラリスを追いかけていく最初のシーンを描いていたり、昔でいえば『宇宙戦艦ヤマト』のヤマトや『宇宙海賊キャプテンハーロック』のアルカディア号がグアーっと飛んで行くシーンなどを手がけた人なんですよ。それこそ、目をつぶっていてもルパンが描ける、"ミスタールパン"みたいな人たちだからこそ、彼らに土台を作ってもらいました。彼らの描くルパン、彼らが動かすフィアットこそ、誰もが納得する『ルパン』なんですよ。


一方で若手にはデザイン・ファッション面を担当させましたが、中心がベテランだからこそ、若手の突拍子のない意見を咀嚼して『ルパン』にしてくれるという安心感がありました。僕自身で言えば、友永の『ルパン』を今のタイミングで出さないと、継承していけないぞという危機感もありました。テレコム内で継承するのと同じように、若い人たちにも『ルパン』を懐かしいアニメにしたくない。リアルタイムで楽しめる、今をまだ生きて、けん引しているアニメーションにしたかったんです。


――本作はイタリアでも放送されるとのことですが、イタリアでの人気のほどは?


向こうの30〜50代の人たちが、みんな『ルパン』を見て育ってるんですよ。広いヨーロッパの中でも、イタリアが本当に突出しています。そこには、トムスが長きにわたり番組販売をしてきたという歴史があります。イタリアでは、小学校から帰ってきたら、14時に『ルパン』がヘビーローテーションで放送されているのだそうです。だから、それを見て育った人たちが立派な大人になり、それを今度は子どもに見せているんですよ。


――そうなると、イタリアのファン、昔からのファン、新規のファンと、ターゲットが絞りにくくなるのでは?


世代を超えても性別を超えても、誰もが「『ルパン』ってこれだよね」と思うものを作りたいというところで、今回のTVシリーズを作っています。シリーズでいうと第2作の赤いジャケットの『ルパン』を基軸にして作っています。全24話なのですが、毎回その話数完結の話になっていることに加え、24本通して一つのテーマもあるので、一本のドラマとしても続き物としても見ることができます。


――レベッカやニクスといった新キャラクターたちが、ルパンたちと深く関わる役どころで登場しています。


ルパンたちの中でドラマを作る時に、紅一点は不二子だけなので、ある意味限界値もあるし、かといってそれを壊すわけにはいかないというジレンマがあります。そこで新しいキャラクターを入れることで化学反応を楽しんで、かつそれによってルパンたちをさらに生かしたいなと。不二子よりもルパンに急接近してくる若いじゃじゃ馬がいた時、不二子は今までルパンをはぐらかしていたけれども、今度はどうやって振る舞うのかな、ちょっと悔しいとか思うのかなという期待感を込めています。銭形にはMI6の捜査官・ニクスを対峙させて、ルパンたちを追い詰めていく時に新参者が登場することでどう立ち振る舞うか、しかもお互いに組織に属してしがらみに苦しむという共通点を持つ組み合わせです。2人が登場することで、新たな関係性と、いい意味でのひずみができ、それがドラマを生み出すきっかけになっています。


――今回、企画を進めていく上で最後まで決まらなかったことは何でしょう?


「どうやって物語を終わらせるか」ということですね。新シリーズは24話を通した一つのテーマがあって、そこが毎回1回こっきりで何の脈絡もなかった『新ルパン』との大きな違いです。全体を太い線で貫いているドラマをどうやって終わらせるか。『ルパン』は終わらないものなのですが、物語としては終わらせなきゃいけない。そこをどう締めるかというところにすごく時間がかかりました。


――最後に、マスコミ向けの試写で公開されたイタリア版のエンディング映像(ルパン一味のパネルがテレコムのオフィスに登場し、室内を動き回る彼らの様子がパラパラ漫画のようなコマ送りでコミカルに描かれている)がすごくかっこいいと思ったのですが、国内で日の目を見る日は来るのでしょうか?


今のところ公開される予定はないんですよ。あれは、「テレコムがルパン一味にジャックされたら」という設定を遊びで作ったもの。どこかで使いたいなって僕的には思っているんですけどね(笑)。


■プロフィール
浄園祐(きよぞの ゆう)
1972年6月29日生まれ、静岡県出身。
テレコム・アニメーションフィルム代表取締役社長。
『新世紀エヴァンゲリオン』TVシリーズでは制作進行を務めた(タツノコプロ)。1996年に東京ムービー(現トムス・エンタテインメント)入社後2005年まで『ルパン三世』TVスペシャルの制作に携わる。2007年ルパン三世OVA『GREEN VS RED』でプロデューサーデビュー。その後、TVアニメ『LUPIN the Third -峰不二子という女-』、OAD『LUPIN THE IIIRD 次元大介の墓標』(2014年)でプロデューサーを務めた。
原作:モンキー・パンチ(C)TMS


(公文哲)



☆マイナビベアのミクシィ部屋で人気の記事公開中☆

このニュースに関するつぶやき

  • これ今、夜中の3時前に読んで急いでテレビ着けたらやってない、、、大阪の日テレ系である読売テレビは月曜日からでした(;つД`)今録画予約した♪
    • イイネ!5
    • コメント 2件

つぶやき一覧へ(73件)

ランキングゲーム・アニメ

前日のランキングへ

オススメゲーム

ニュース設定