【庵野秀明も登場「カラー10周年記念展」レポート 圧巻の300点展示、濃密な無料冊子もの画像・動画をすべて見る】
本日22日には、先立ってプレス内覧会が行われた。株式会社カラーの代表取締役であり、「エヴァンゲリオン」シリーズの生みの親、はたまた今夏大きな話題となった『シン・ゴジラ』でもメガホンを取った映像作家・庵野秀明氏も囲み取材に登場。「株式会社カラー10周年記念展」と共に、その様子をお伝えしよう。
取材・執筆:須賀原みち
「エヴァ」チルドレンたちが正装でお出迎え
2016年で創立10周年を迎えた株式会社カラーでは、「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」シリーズの制作のほか、ドワンゴと共に短編アニメーションシリーズ「日本アニメ(ーター)見本市」の主宰、アニメーション・特撮作品に関する資料の保存などを行っている。
今回の「株式会社カラー10周年記念展」では、初展示を含む「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」シリーズの原画や設定資料、『シン・ゴジラ』の雛形3種、「日本アニメ(ーター)見本市」の原画・資料を展示。
さらに、株式会社カラー取締役にして庵野氏の妻でもある漫画家・安野モヨコ氏が本展のために描き下ろした『監督不行届』の番外編「おおきなカブ(株)」のアニメ映像など、約300点のファン垂涎のお宝が並んでいる。
|
|
その隣には、2017年2月に放送予定のアニメ『龍の歯医者』のパネルと先行映像が。小説家・舞城王太郎原作の『龍の歯医者』は、「日本アニメ(ーター)見本市」の第一作としても知られ、来年の新生が待たれている。
「エヴァ」や『シン・ゴジラ』、300点に及ぶ展示の数々
いざ、会場に入ると、「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」シリーズの原画や設定資料がズラッと並ぶ。2013年から全国を巡回している「エヴァンゲリオン展」で目にした原画や設定資料もあれば、今回の「株式会社カラー10周年記念展」でほぼ初公開となるものも多い。
年代毎に原画が並んでいるスペースでは、劇場用パンフレット、冊子『EVA-EXTRA』や雑誌『ニュータイプ』などに掲載された版権イラストなどを目にできる貴重な機会と言えるだろう。また、2016年9月に24時間限定で公開された宇多田ヒカル『桜流し(ヱヴァ:Qバージョン)』MVの特別上映も。
ほかにも、『シン・ゴジラ』公開に際して制作された前田真宏氏による「ゴジラ対エヴァンゲリオン コラボビジュアル未着彩バージョン」は、その細かな筆致に圧倒される。
|
|
この漫画は入場時に配布される「株式会社カラー10周年記念冊子」でも読むことが出来るので、この冊子をもらうためにもぜひ来場したいところ。
そして、『シン・ゴジラ』スペースでは、劇中ではCGで表現されたシン・ゴジラ第2〜4形態の雛形模型がお目見え。もちろん、制作は竹谷隆之氏だ。
第4形態の雛形は今年のワンダーフェスティバルなどでも展示されていたが、通称“蒲田くん”と呼ばれる第2形態や第3形態の雛形が展示されるのは、今回が初めてだという。そのディテールに目が奪われることは必至だ。
「特撮アーカイブ」や「日本アニメ(ーター)見本市」のコーナーも
続いては、「特撮アーカイブ」コーナー。カラーでは、文化事業として特撮資料の保存やアーカイブ作業を進めている。2012年には、「館長 庵野秀明」として展覧会『特撮博物館』が開催されたことも記憶に新しいだろう。
|
|
また、一際目を引くのは、『特撮博物館』にて公開され、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』との同時上映もされた『巨神兵東京に現わる』で実際に使用された「巨神兵 ロッドパペット」だ。
これは、操演者2人がブルーバックに馴染むようなスーツに身を包み、後ろから巨神兵を動かすというもので、ここまで間近で見られる機会はそうそうないので、テンションも上がってしまうはず。
展示の最後となるのは、「日本アニメ(ーター)見本市」。こちらでは『西荻窪駅徒歩20分 2LDK 敷礼2ヶ月ペット不可』や『旅のロボから』といった作品の映像と設定資料などを見ることができる。
カラーは書籍の企画・編集といった事業も行っており、『日本アニメ(ーター)見本市資料集』として、これらの作品の設定資料などがまとまって刊行されている。しかし、何よりも生の原画や設定資料が見れるとあって、こちらもぜひチェックしておきたい。
庵野秀明が語る記念展への思いや『シン・ゴジラ』裏話
そして、プレス内覧会の最後には庵野秀明氏が登場。
「株式会社カラー10周年記念展」について、「うちの会社(カラー)がやってきた10年をギュッと詰めた感じ。大体、これで概要がわかっていただけるかな、と。(見どころとしては)情報量が詰まってますので、作品そのものではなくて、作品をつくるまでの過程の面白さとかを楽しんでもらえれば」と語る。
また、今回展示された『シン・ゴジラ』の形態変化についての裏話も飛び出した。
「形態が変化したほうが、ビジュアルとしても映画としても面白くなるだろうと。『ゴジラとはこういうものだというイメージを崩すのはちょっと…』ということで、東宝さんは最初嫌がってたんですけど、そこはバンダイさんが3つ(商品を)出せて嬉しいですよ、と(笑)。そういう搦め手で説得しました」(庵野秀明氏)
ほかにも、音響監督として携わっている『龍の歯医者』では、プロローグの絵コンテに意見した程度で、基本的には鶴巻和哉監督に任せているといったエピソードも。
本展のタイトルにもある「過去(これまで)のエヴァと、未来(これから)のエヴァ。そして現在(いま)のスタジオカラー。」については、「(カラーの)歴史を展示しようと思ったら、『エヴァンゲリオン』という作品がメインとなる。だから、コピーとしてはエヴァになる。で、現在(いま)はスタジオカラー。スタジオカラーが過去にエヴァをつくっていて、未来(これから)のエヴァっていうのもスタジオカラーがつくっていくので、現在がスタジオカラー」と話す。
また、「この先の10年でやりたいこと」を聞かれた庵野氏は、「面白いものをつくり続けたいですね。僕もつくりたいですけど、僕以外の人にもつくってほしい。(カラーは)そういう場であってほしいと思いますね。あとはこの10年先にも、今存在している資料とかも残していきたい。10年、20年残せるようなものになっていけばな、と。それはアーカイブのほうで。過去も残したいし、未来にもつなげたい。そのために、現在が一番大事じゃないかな」としていた。
『シン・エヴァンゲリヲン劇場版』公開については「わかんない」
最後に、『シン・エヴァンゲリヲン劇場版』の制作・公開についての質問が飛ぶ。庵野氏は「頑張ってます」と即答。公開予定を質されると、「いやぁ、わかんないですね。これはうちだけの配給じゃないんで。配給会社との詰めもありますので、まだわからないです」としていた。
改めて、「株式会社カラー10周年記念展 過去(これまで)のエヴァと、未来(これから)のエヴァ。そして現在(いま)のスタジオカラー。」は明日23日から開催される。
今回の展示内容が存分に楽しめるのはもちろん、先述の「株式会社カラー10周年記念冊子」はアニメ・特撮ファンなら必携だろう。庵野氏をはじめ、カラーの制作部部長・緒方智幸氏や作画部部長の鶴巻氏らが、カラーの歴史から「アニメーションづくりの未来」までを語っている貴重な一冊である。
展示を楽しんだ後は、この冊子を読みながら、未来(これから)のカラーやアニメーションについて、思いを馳せてみたい。
(C)カラー