日本人が抱く「献身的な教師像」の魔力から脱却するには…教員の長時間労働問題を議論

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2017年02月05日 09:03  弁護士ドットコム

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教員の長時間労働の問題について考えるシンポジウム(主催・連合総研)が1月27日、東京都内で開かれ、大学教授らが意見を交わした。議論となったことの1つは、長時間労働の問題を解決するために、どうやって日本人が抱く「献身的な教師像」から脱却するか、ということだった。


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シンポジウムには全国各地の教育委員会の職員らが参加。会場からの質疑応答で、1人の職員が「家庭を犠牲にして頑張ってきた先輩教師が、『忙しい中頑張るのが当然』と後輩に教えている。そういう環境で、働き方を見直そうと呼びかけるにはどうすればいいのか」と質問した。


この質問に対して早稲田大学教育・総合科学学術院の油布佐和子教授が「献身的な教師像は日本の特徴でもあり、その魔力、魅力には抗いがたい。しかし、一生懸命頑張っている先輩たちが、自分たちの頑張りを超えないとダメという言い方をすることは、できない人を軽蔑して切り捨てる排除の思想だ」と指摘。


「頑張る人しか残れないという傾向が広がる中で、それに巻き込まれず、人権とは何かということを基本に据えて考えるべきだ」と述べていた。


●「長時間労働によって、家庭生活や社会生活の時間が奪われている」

シンポジウムを主催した連合総研では、2015年12月、全国の公立小中学校の教員を対象に労働時間に関するアンケート調査を行った。日教組の支部を通じて調査票を配布し、小学校1903人、中学校1094人から回答を得た。


調査の結果、週に60時間以上働くと答えた教員の割合が、小学校で72.9%、中学校で86.9%にのぼった。また、所定労働時間について「知らない」と答えた割合は小中学校ともに半数を超え、管理職による勤務時間の管理も「把握しているかわからない」「行っていない」が合わせて半数近くを占めた。


この結果について法政大学大学院の毛塚勝利客員教授は「一市民として、家庭と地域で交流を持つことが、先生としての魅力を作る。労働時間が週60時間を超えれば、家族で一緒に食事ができず、地域の社会活動への参加もなかなかできない」と指摘。長時間労働によって、家庭生活や社会生活に充てる「生活時間」が奪われていると述べた。


毛塚教授は、生活時間の侵害をお金で埋めあわせる考え方を批判。「時間外労働をした分は時間で返してもらわなければならない」として、時間外労働分を原則として時間で調整する調整休暇制度を導入すべきと話した。


「年休さえ取りにくい日本の社会で、調整休暇は絵空事にも思える。導入することはそう簡単ではないが、挑戦していってほしい。教職員だけではなく、日本の今後の働き方を考える上で先駆的な取り組みになるはずだ」


(弁護士ドットコムニュース)


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  • 教育界の管理職の時間軸がそもそもおかしい。サラリーマンなら「何時間」「何日」の話や作業が、連中の手によると「何週間」何か月」の話になる。
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