深田恭子の“困った笑顔”が切ない 『隣の家族は青く見える』が男女から共感されるワケ

264

2018年02月06日 06:02  リアルサウンド

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

リアルサウンド

写真

 ドラマ『隣の家族は青く見える』(フジテレビ)は、様々な家族が暮らすコーポラティブハウスが舞台だ。それぞれ悩みを抱えている4組のカップル・家族が暮らしているが、2月1日放送の第3話では、不妊治療に励む主人公夫婦に焦点が当てられ、妊娠・出産に悩む女性の気持ちを代弁する印象的なシーンがあった。


参考:松山ケンイチの「大丈夫」が染みる どんな人間も肯定してくれる『となかぞ』の優しさ


 主人公・五十嵐奈々(深田恭子)と大器(松山ケンイチ)は引き続き不妊治療に励んでいる。第3話で奈々は、担当医からクロミッド(排卵誘発剤)の服用を勧められる。


 子づくりに励み始めて1年経っても妊娠しなかった奈々。精液検査や卵管造影検査では特に異常は見られておらず「原因不明不妊」と診断されている。不妊治療の初期段階に行われるタイミング療法(排卵に合わせて性行為をする方法)を行っているが、芳しい結果は得られていない。次の段階(人工授精等)へ進む前にタイミング療法で結果が得られるため、担当医は奈々にクロミッドを勧めたのだろう。


 クロミッドの副作用からか、奈々は些細なことで苛立つようになる。そんな奈々の姿に大器は戸惑いを見せつつも、不妊症を除けば、2人の生活は順風満帆に見える。大器は職場の大きなプロジェクトに参加することになり、奈々もそれを喜び、大器をサポートする。


 そんな中、ある出来事が奈々の心を静かにかき乱していた。大器の妹・琴音(伊藤沙莉)がはじめて胎動を感じた時である。琴音は、大器の両親が営む焼き鳥屋のバイト店員・糸川啓太(前原滉)と予期せぬ妊娠をした。しかし、大器の母・聡子(高畑淳子)は「孫の顔が見たい」と望んでおり、待望の初孫ということで啓太と琴音の間にできた子供のことをあっさり承諾する。琴音のお腹の中にいる子供はスクスクと成長しており、琴音はお腹の中で動く赤ちゃんを感じるのだ。胎動を感じて喜ぶ啓太と聡子。しかしそんな彼らの様子を見て、奈々は複雑な表情を見せる。奈々は琴音の妊娠が発覚した時もその場にいた。その時は、大器の家族とともに喜ぶ表情を見せた奈々だったが、今回ばかりは“素直に”喜べなかったようだ。


 クロミッドを服用し、タイミングを取り、苛立ちや眠気などを感じていた頃、奈々は生理(劇中では「あれ」と呼ばれていた)が来ていないことに気付く。今までの奈々の症状が妊娠の兆候に当てはまっていることを知り、喜ぶ奈々と大器。しかし薬局で妊娠検査薬を購入した日、生理が来たことが分かる。残業していた大器のもとには「妊娠してなかった」「期待させちゃってごめんね」と書かれたメールが届く。任されたプロジェクトの準備を楽しそうに進めていた大器だったが、メールを読んだ後、不妊治療に励む奈々の心の内を察した彼の背中が印象的だった。


 翌日、休日の土曜日にも関わらず、大器は朝早くから奈々を連れて出かける。富士山の麓にある御胎内神社へ行き、子宝祈願に向かう2人。奈々は大器の思いやりに触れ、優しげな表情を浮かべる。自宅へ戻り、奈々のために食事をつくる大器。大器は冷蔵庫からビールを持ってくるのだが、なぜか奈々の分も用意する。驚く奈々だったが、大器は「(妊娠していなかったと)落ち込むのも仕方がない」と声をかけ、一旦全部リセットしてまた挑戦しようと声をかける。優しく励ます大器の言葉に思わず涙ぐむ奈々は、大器の妹・琴音の赤ちゃんがお腹の中で動いた時、素直に喜べなかったことを吐露する。自己嫌悪に陥ったと話す奈々の肩を優しく抱き寄せる大器は言う。


「大丈夫。絶対いつか俺たちのところにも来てくれるって」


 涙を必死にこらえながら、奈々がつらい本音を漏らすシーンではもらい泣きしてしまった。子供が好きな奈々だからこそ、スクスクと育つ琴音の子供のことを素直に喜べなかったのは悔しかったに違いない。奈々は、接する人の心情を察し、優しく声をかける女性だ。そんな心優しい奈々だからこそ、自分と相手とを比べて、子供ができない悔しさを感じ、「なんであの人には子供ができて、私には……」と思ってしまったことがとても心苦しいのだろう。不妊症に悩み、他人と自分を比べてしまう女性の姿を、深田はその目に浮かんだ涙と震える声で演じきったのだ。


 困ったように笑う深田の表情が、奈々が無意識のうちに隠してしまう不妊への不安やつらさを物語っている。深田は奈々をステレオタイプのか弱い女性として演じていない。しっかり者だからこそ不安やつらさを隠して抱えてしまう、ある一人の女性を見事に演じているのだ。それが、本作が女性からも男性からも共感される好感度の高いドラマとなっている大きな要因だろう。


 次回予告を見ると、奈々と大器は人工授精を勧められている。不妊治療の次の段階に進んだのだ。孫を望む大器の母・聡子は、2人の家に子宝グッズを持参し、明るく楽しそうな姿を見せるが、一方で奈々の母・春枝(原日出子)が「お母さんは反対よ」と言っているのが気になる。2人の妊活がどう進んでいくのか、奈々の精神面も気になり始めた第3話以降、楽しみでもあり不安でもある。


参考:「男女ともに不妊原因がはっきりしない場合、どのように治療に取り組んだらいいの? WOMAN PARK」


(片山香帆)


このニュースに関するつぶやき

  • 子供や家族の形は世界では幅広いのに、日本は「男女の両親と血縁関係の実子だけ」が真実の家族的な風潮がある。だから適齢期や不妊にも執着しなきゃならず、本当辛そう
    • イイネ!79
    • コメント 0件

つぶやき一覧へ(109件)

ニュース設定