『BLEACH』クールな滅却師・石田雨竜を変えたものは? 黒崎一護との因縁を超えて

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2020年10月07日 08:01  リアルサウンド

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 連載終了から4年が経ってもなお高い人気を誇る久保帯人『BLEACH』。家族を護るために悪霊である虚を退治する死神となった高校生・黒崎一護と、死神、人間、滅却師といった仲間たちとの戦いを描く。


 今回ピックアップするのは、一護の同級生で滅却師の石田雨竜だ。


根深い死神と滅却師の因縁

 斬魄刀で斬ることで虚から罪を濯ぎ、魂を尸魂界へと送る死神。それに対し、虚を魂ごと消滅させる滅却師。死神は自らの霊力を源として戦うが、滅却師は自分の霊力で大気中にある霊子を使って戦う――と同じ虚を敵としていてもさまざまな違いがある。相反する理念と行動から結果的に死神の手によって滅却師は滅ぼされてしまう。


 そんな中、最後の滅却師として生き残ったのが石田雨竜だった。しかし、雨竜は前述のような背景から死神を憎んでいるというわけではなく、もっとパーソナルな意味で死神に対して複雑な感情を描いている。師として仰ぎ、心許せる家族だった祖父の宗弦が虚との戦いの中で亡くなった。死神がもう少し早く到着していれば祖父は助かったはず。死神は祖父を見殺しにしたのではないか、そんな思いを抱いていた。


 そして雨竜の前に現れたのが、死神代行の一護だった。一護に対して雨竜は勝負を吹っ掛ける。


「24時間以内に虚を多く倒したほうが勝ち」


 町の人たちを巻き込むことになるケンカに一護は反対するが、「賽は投げられた」。


 結果的には共闘することになり、その後、仲間として(雨竜は最初は明言しないが)尸魂界にルキアを助けるために乗りこんだりと行動を共にする。


 しかし、滅却師はやがて死神の最大の敵として立ちはだかる。滅却師の始祖であるユーハバッハが率いる「見えざる帝国」と死神は世界を賭けた死闘を繰り広げることになるのだった。


全ての終わりの始まりとなった一護と雨竜との対決

 現れる虚をルキアと共に倒していく一護。しかし、雨竜との対決から一気に物語が動き始める。


 クラスメイトの茶渡康虎と井上織姫の能力の開花、尸魂界では行方不明として扱われていたルキアの発見、重禍違反の発覚、そしてルキアを捉えるために派遣された死神。一護たちはルキアを助けるために尸魂界へ向かい、その目的は達成できたものの、首謀者であった愛染の企み、逃亡――と否応なしに一護たちは世界の混沌に巻き込まれていくことになった。


 そこに、たまたま雨竜は居合わせただけ……ではなかった。雨竜の父である竜弦と一護の母・真咲はいとこであり、雨竜と一護ははとこの関係になる。また、元死神で一護の父・一心がその力を失ったときにも竜弦が関わっている。さらに竜弦は真咲に想いを寄せていたようで……因縁は一護と雨竜が生まれる前から始まっていたのだ。


 また、真咲や雨竜の母・叶絵が亡くなったことにはユーハバッハが関わっており、死亡当時に竜弦も一心もそれを察していた。


 竜弦は滅却師としての活動はしていなかったが、実力は雨竜以上。また、来るべきユーハバッハとの戦いにも備えていたのだ。死神とは関わるなと言いつつも、一護と行動することを黙認しており、雨竜が滅却師としての力を失ったときはその力を取り戻すために修行を行っている。反発し合っていた親子だったが、戦いが熾烈になっていくにつれ、少しずつ誤解が解け、距離が縮まっている。死神との戦い、死神と滅却師との戦いの中で雨竜は幼いころから抱えていたわだかまりを溶かしていった。


 その証拠に、最終話では父と同じ医師になっている様子が描写されており、戦いを経て関係が改善されたことが分かる。


雨竜に必要なのは友人だった

 初登場時の雨竜はそっけなく、冷たい。同級生に話しかけられてもそっけない。しかし、一方で手芸部員でクラスメイトの女子からぬいぐるみの修復を頼まれて直してあげたりもする。ただお礼を言われても「大したことをしたわけじゃない」とクールだ。


 それが、尸魂界に行ってからは少しずつ変化を見せる。怪我の治療に当たっていた織姫に気遣いの表情を見せながら「お疲れ様」と言ったり、とっさにかばったり、という一面を見せる。そして一護に対しても「死神代行と滅却師」としてではなく、友人、共に戦う仲間として接するようになっていく。また、織姫と行動することが多く、織姫の突拍子もない言動に驚きつつも、すぐそばで見ているだけに、織姫の一護に対する気持ちを察し、気遣いを見せることも増えていく。


 最終巻。雨竜は敵から「黒崎たちと似ている」と言われるシーンがある。



「(僕は)今まで全て冷静に天秤にかけて行動してきたつもりだ」
「でも黒崎はバカだからそれができない。助けたいと思ったら助けに行くんだ」
「そのバカな連中と同じに見えているのなら…僕は嬉しい」
「彼らと共にいることを選んだ。そこに利害はない。正解も不正解も無い。僕らは友達だからだ」



 しかし、この言葉を一護たちの前で言うことはない。追い詰められたタイミングで打ち明ける。声に出して、伝わらなかったとしても、残しておきたかったことなのかもしれない。


 ひとりきりだったころに一護に持ちかけた勝負はバカげたものだったかもしれない。出会いが雨竜を変えた。人を知り、誰かを大切にする気持ちを持つことで、戦い方だけではなく、生き方も変えてしまったのだ。


(文=ふくだりょうこ(@pukuryo))


■書籍情報
『BLEACH』(ジャンプ・コミックス)74巻完結
著者:久保帯人
出版社:株式会社 集英社
https://www.shonenjump.com/j/rensai/bleach.html


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