《やれても正直、あと6年くらいかな》
12月13日に配信された『日刊スポーツ』ウェブ版で、“キング・カズ”こと三浦知良選手の近況を伝えた記事が物議を醸している。2005年から所属する横浜FC退団が濃厚とされるカズだが、大阪市内での自主トレが物語るように54歳になっても引退する気はさらさらない。そして《あと6年》と60歳、還暦まで現役でプレーを続けるというのだ。
「それでも複数のクラブが獲得に興味を示しているといいます。Jリーグで最年長記録を次々と塗り替えてきただけに、最盛期に及ばずとも50代半ばとは思えない肉体を維持しているのはさすが。本人もまだ“やれる”自信があるということ。
ただ、現在のカズが重宝されるのは、プレーでの貢献度以上にピッチ外でもたらす部分だとも。“サッカー界のレジェンド”をひと目見ようと試合に足を運ぶサポーターやファン、そしてチームとしての注目度も上がる。そんな広告宣伝効果も含めての獲得になるのでは?」(スポーツ紙サッカー担当記者)
今なお、個人として複数企業のCMに起用されているカズだけに、仮に新チームへの入団が決まればチームスポンサーになる可能性もなくはない。特にコロナ禍で収益を落としているチームにとっては是が非でも迎え入れたいところか。一部報道によるとJ2やJ3のほか、JFL、地域リーグなどのアマチュアリーグからも熱い視線が向けられているとも。
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プレーヤーとしてもう無理
片や、結果が求められるプロの世界だけに、現役にこだわるカズにきびしい意見が向けられるのも自然なこと。横浜FCへの移籍当初こそ年間30試合以上に出場することも多く、そのチャレンジを支持する声が多数を占めていた。が、50歳を過ぎたここ数年のシーズンはリーグ戦の出場は10試合にも届かず、そしてノーゴールが続いている。
「今季はカップ戦も含めて計4試合、リーグ戦に至っては1試合でしかもたったの1分間。故障ではないのにベンチ内にも入ることができず、スタンドが“定位置”になることが多かった。カズはチームの戦術に沿うプレーができない、つまりはJリーガーとしてのパフォーマンスができないと判断されてのことだと思います。
同じく40代半ばまで現役だった元メジャーリーガーのイチローさんと並んで、“中年の星”として称賛されたカズですが、結果がともなわなければ一転して無謀なチャレンジに苦言が呈され、また批判されるようになってしまった」(前出・サッカー担当記者)
サッカー界の“ご意見番”こと解説者のセルジオ越後氏も、12月にYouTubeでカズの偉業と功績を讃える一方で《プレーヤーとしてはもう無理ですよね。だって1シーズンで1点も取らないFWって。試合出る本数も少ない》と指摘。さらに、彼より結果を残しながらも戦力外になってきた若い選手への示しがつかない、という不公平が生じることも危惧した。
また冒頭の言葉を伝えた『日刊スポーツ』の記事コメント欄においても、《プロなら天下りやコネを使わず実力と結果のみでプロ契約してくれ》《周りはすでに試合に使える選手としては終えてると言ってる》《オファー出してるのは戦力としてじゃなく単なる客寄せパンダ。みっともない》などと、向けられるのは辛辣な声ばかり。
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すっかりサポーターやファンからの尊敬を失ってしまったように見えるカズ。それでも、現役にこだわり続ける理由とは何なのだろうかーー。
息子たちに見せる“背中”
「もちろん、心身ともに“まだ選手としてやれる”という確固たる自身があってのこと」とは、サッカー専門誌のスポーツライター。
「華麗なテクニックからスマートなプレースタイルと思われがちですが、泥に塗れながらもボールに食らいついてゴールを目指すのがカズさん。また彼が実際に受けてきた批判の数々からすれば、ネットの声などは気にもならない。それに“自分のわがまま”は重々承知ですし、その上で“必要とされる”限りは叩かれようとも現役を続けますよ。
それに息子たちが一人前になる日まで、這いつくばってでもチャレンジをし続ける“親父の背中”を見せていたい気持ちもあるのだと思います」
24歳の長男・りょう太は俳優、19歳の次男の孝太は12月31日の『RIZIN』で総合格闘家デビューと、サッカーとは別の道を選んだ息子たち。しかし、現在の進路に至るまでは紆余曲折あったようだ。
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特にりょう太は父親と同じくブラジルへのサッカー留学経験もあり、周囲からもプロ選手を目指すものと思われていた。しかし、高校卒業を機にその道を閉ざす。
「常に“カズの息子”と期待されるプレッシャーは計り知れない。大学進学後はスポーツマネジメントなど、プレーヤーとしてではなくビジネス面からスポーツに関わろうとしていたそう。それでも進路に悩んでいたところ、母のりさ子さんの進言もあったのでしょう。俳優という未開の道へのチャレンジを選んだのだそう」(前出・スポーツライター)
息子へのサポートを惜しまない
そしてリング上の勝ち負けの結果が自分自身に重くのしかかる、さらにきびしい格闘技の道を選んだ孝太。
「学生時代から憧れた舞台とはいえ、カズさんもさすがに驚いたそうですが“やるからには頑張れ”と応援していて、孝太くんが大ファンだった元プロボクサーでK1選手の渡辺一久さんやキックボクサーの那須川天心くんとも引き合わせたそう。
海外や国内を転々として家族と暮らすことが少なかったカズさんだけに、息子たちと顔を合わせた時はとにかく話をして、出来る限りのサポートをしているみたいですよ」(同・スポーツライター)
自ら進む道を選択した息子たちの成長をうれしく思う一方で、父として、またプロとしてのエールを送っているのだとも。
「今後も“カズの息子”“二世”などといった声がついて回るわけです。たとえ結果が出ずに周りから批判されようとも、自分で選んだ道ならば最後までもがいて泥にまみれてでもやり続けることを身をもって教えているのでしょう。“三浦りょう太”“三浦孝太”という一人前の俳優、格闘家になるまでは自分も負けじと、張り合うようにプレーを続けるのではないでしょうか」(同・スポーツライター)
サッカー界の“キング”であると同時に、カズもまた1人の父親だった。