2021年12月10日、2021-2022年度の日本カー・オブ・ザ・イヤーの最終選考会が開催され、日本カー・オブ・ザ・イヤー、および各部門賞が決定した。2021-2022年度を代表する日本カー・オブ・ザ・イヤーには『ニッサン・ノート/ノート オーラ/ノート オーラNISMO/ノート AUTECH CROSSOVER』が選出された。
ここでは、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員であるモータージャーナリストの松田秀士さんに、2021-2022年度カー・オブ・ザ・イヤーをどのように評価したのか、そして、試乗したなかで個人的に選ぶベスト3とその理由について伺った。
* * * *
■オートスポーツWEB推薦実行委員・松田秀士氏(モータージャーナリスト)が選ぶ2021-2022年度日本カー・オブ・ザ・イヤー/ベスト3
<総評>
2020年に続きコロナに揺れた2021年。試乗や取材にも制約があり、我々の生活スタイルも大きく変化しました。その環境下で、2021年はどのようなクルマを選出するべきか? テーマを何にするか?を考えました。『最後になるかもしれない内燃機関』『環境技術車』『ADASをはじめとした準々自動運転』。いろんな思いが頭に浮かんだ結果、これらにとらわれることなく、原点に立ち返るつもりで、運転していて気持ちが良いかどうか、ここを基準にクルマを選ぶことにしました。
ドライビングポジションと視界が良いこと。乗り心地が良く(シート性能に頼り過ぎていないか?)、いざというときの緊急回避をしっかり行えるハンドリングを持っていること。ABS制御を含めたしっかり止まれるブレーキ性能を持っていること。
そして、音質が耳障りでない室内静粛性とオーディオの音質が良いこと。クルマとして本来の使い勝手が良いこと。以上のことを基準に2021年の日本カー・オブ・ザ・イヤーの選考に臨みました。
【第1位 ホンダ・ヴェゼル】
ホンダ・ヴェゼルの試乗会は、山中湖畔で行われました。初試乗でもっとも強く感じたことは、“ストレスフリー”ということです。
モータージャーナリストという職業柄、さまざまなクルマに試乗します。実際に走り始めて、そのクルマの癖や動きを掌握するのですが、ヴェゼルはあっという間に理解することができました。なんというか……シンパシーというと大げさかもしれませんが、クルマと一体化できたように感じたのです。
高速域ではなく、街中を30km/hくらいで走っていても、とても気持ち良く、速度に関係なくドライブする楽しさがあります。新型ヴェゼルのプラットフォームは先代から継承されています。もちろん改良は加えられていますが、プラットフォームが同じならサスペンションの取り付け位置も同じなので、ロール軸を含めたジオメトリーに大きな変化はありません。
それにも関わらず新型ヴェゼルは、先代とは違う乗り心地であり、静粛性であり、ハンドリングでした。後日、ホンダ栃木研究所で試乗したAWDモデルの高い低μ走破性能とハンドリングも好印象でした。
【第2位 ニッサン・ノート/ノート オーラ/ノート オーラNISMO/ノート AUTECH CROSSOVER】
ニッサン・ノートは、新開発のe-Powerシステムを採用しています。駆動用モーターとインバーターはこのシステムのキーとなりますが、明らかに先代とは異なる実用性の高い走りに仕上げてきていました。
同時に、ハンドリングも高速域での自由度が大きく増していて、120km/h時代の高速走行に適したものになっています。さらに、上級仕様のノート オーラの内外装を含めたデザインは都会的で、欧州車を凌ぐカッコ良さを放っていました。
BOSEのオーディオも素晴らしい臨場感を演出していました。音の広がりを自在にコントロールできるテクノロジーも実に素晴らしい。クルマを“オーディオルーム”と考えているボクにとって、このオーディオの完成度は高得点です。
残念なことは、ノート オーラNISMOにはBOSEオーディオを装着できないことです。それを差し引いてもノート オーラNISMOの仕上がりは、感動ものでした。ベースモデルよりもサスペンションの動きがしなやかで、乗り心地も良かったです。それでいて、アジリティーの高いコーナリング性能も実現していました。NISMOの高品質、そしてAWDモデルのハンドリングを評価しました。
【第3位 トヨタGR86/SUBARU BRZ】
新型トヨタGR86、スバルBRZの発表/試乗会は、袖ヶ浦フォレストレースウェイで行われました。初めてステアリングを握ってコースインしたとき、最初に感じたのは2.4リッターになったエンジンのトルク特性でした。
コーナリング中、特にAペックスあたりからのアクセルオンで欲しいトルクがデジタルに立ち上がります。その気になれば簡単にテールスライドを起こしますが、そこまで踏み込まなくても操舵に加えて後輪の駆動をもアクセルでコントロールして、まさにFRらしいナチュラルでありながら醍醐味のあるコーナリングを楽しめるのです。
6速MTのシフトフィールは、これ以上ないといっても良いほどに進化していて、操作性とエンジンレスポンスとの調教も抜群にシンクロナイズされていました。AT車も然りで、スポーティーさがより6速MTに近づいたように感じました。この仕上がりなら、ボクでもAT車にするか、MT車にするか、悩んでしまいそうです。
また、ボディの進化も大きいです。インナーフレーム構造を謳うスバルのボディ技術力はとても高く、剛性感はこれまでになく素晴らしいカッチリ感でした。それゆえ、サスペンションの動きが如実に伝わり、トヨタGR86とスバルBRZとの違いが手に取るように感じられました。一般公道試乗でも楽しさは変わらなかったです。