Production I.Gの石川光久。 「第3回新潟国際アニメーション映画祭」が去る3月15日に開幕。オープニング作品として劇場アニメ「イノセンス」が上映され、同作の製作・プロデューサーを務めたProduction I.Gの石川光久が登壇した。
【写真】先日の舞台挨拶で「やり残したことがある」と語った押井守
まずは脚本・監督を担当した押井守のビデオメッセージを公開。2004年の劇場公開から20周年を迎えた「イノセンス」について、押井は「『攻殻機動隊』もそうだったんですけど、これが10年、20年経っても消えてなくならない作品にしようという一心で作っていました」と語る。「『イノセンス』は人間の在り方がこれからどう変わっていくかを射程に入れた作品だったので、テーマも古びていないと思う」と振り返った。
続けて「映画というのは、ドラマやキャラクター以外に、純粋な映像としていかに情報量があるかが重要。アニメーションは結局人間、ひいては“手の技”が作り出す世界なんです」と述べる。今後のアニメーション業界に関しては「どうなるのかじゃなくてどうしたいか。アニメーションの世界に携わっている1人ひとりが、自分のテーマとして考えていくしかないし、結果としてそれがアニメーションの将来を決定する」と期待を寄せ、「私は後は楽ちんに映画と戯れて過ごしたいので、若い世代の方にはシビアな戦いにぜひ挑戦していただきたい」と言葉を残した。
その後、登壇した石川は「48時間前、押井さんと話す機会があった」と切り出す。去る3月2日に開催された「イノセンス」「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」の4Kリマスター版の上映記念舞台挨拶にて、押井が「やり残したことが1つだけある」と語っていたことに触れ、「押井さんが『3本目をやりたい』と言っていたので『あれってリップサービス?』という確認をしたんです。詳しくは話せないですが、『イノセンス』でちりばめたヒントが回収できるかもしれないとんでもない構想だった」と明かした。
近年ますます発達を見せるAI。石川は「(1989年から1990年にかけて連載された)士郎正宗さんが描いた原作がある。その当時、士郎さんの頭にあった未来が現実に近づいている。押井守監督が映像として作ってきた『攻殻機動隊』も、どちらも時代とともに歩んできたというか、その時代が(今やっと)来た」と言及する。「フルCGでアニメを作れるんじゃないかというのは、制作当時も議論していた」と思い返す場面もありながら、バトーがコンビニで乱射するシーンについて「2、3分のパイロット版の時点で背景を3000枚以上描いている。今のAI技術の使いどころはそういった部分かもしれないが、一方でこのアニメーターの技術はこれからも置き換わることはない」と主張した。
イベントの最後、石川は「約20億円の製作費はまだ回収できていない。これをリクープしないと『攻殻機動隊3』は世に出ない。僕も観たいので、ぜひ『イノセンス』を拡散してください」と観客へ語りかけた。「第3回新潟国際アニメーション映画祭」は3月20日まで新潟市内で開催中。長編アニメーションを中心とした映画祭で、国内外の長編作のコンペティションや、ゲストを招いた上映プログラムが展開されている。