
チャンピオンズリーグ(CL)は、いわばW杯の組替え戦。現在、決勝トーナメントを賑わしている選手も、各国の代表選手が大半を占める。そこで何試合プレーしたか。選手のステイタスと力量を推し量ろうとしたとき、CL出場試合数は重要なバロメーターになる。
選手には代表キャップ数という物差しもあるが、ひと口に代表戦と言っても、レベルはれさまざまだ。世界共通の基準にはなり得ない。正確性は、W杯に照らせば本大会の出場試合数に匹敵するCL出場試合数のほうが断然、高いだろう。
つまり、現在の勢力図は、CL出場選手を国別に分類し数値化することで浮かび上がる。W杯まで1年3カ月。欧州予選を前にした現在の情勢はどうなのか。今季の決勝トーナメントに進んだ16チームで、ここまで実際にピッチに立った選手の数を調べてみた(一覧は後述)。
ここでおさらいしておきたいのは、昨年ドイツで開催されたユーロ2024の結果だ。優勝スペイン、準優勝イングランド、3位フランスとオランダ。
CL16強チームで実際にプレーした選手の数に、この順序は見事に反映されていた。
1位スペイン=44人(3/レアル・マドリード、バルセロナ、アトレティコ・マドリード)
2位イングランド=43人(3/アーセナル、アストン・ビラ、リバプール)
3位フランス=40人(2/パリ・サンジェルマン、リール)
4位オランダ=39人(2/フェイエノールト、PSV)
(カッコ内はその国の16強進出クラブ数とクラブ名)
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「CLはW杯の組替え戦」という言い回しに、あらためて説得力を抱かせる数字だ。
同じ調査を何シーズンか前にも行なったことがある。その時、双璧の関係にあったのはスペインとフランスだった。今回はその間にイングランドが割って入ってきた。
イングランドは、つい数年前まで人材難に喘いでいた。CLでプレミアリーグ勢の興隆が始まったのは、21シーズン前(2004−05シーズン)の決勝あたりからだ。リバプールが前半0−3の劣勢からミランを大逆転で下して優勝したイスタンブールでの一戦だ。しかし、この時もリバプールでピッチに立った14選手のうち、イングランド人はDFジェイミー・キャラガーとMFスティーブン・ジェラードのふたりのみだった。
【W杯でもイングランド躍進か】
他のクラブも似たようなもので、ピッチに立つイングランド人選手をプレミアリーグの舞台で見つけることは簡単ではなかった。プレミアは自国選手の占める割合が最も低いリーグで、彼らの主戦場は主にチャンピオンシップ(2部)だった。
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代表チームもグループリーグで敗退した2014年ブラジルW杯あたりまで、パッとした成績を残せなかった。各クラブの下部組織でプレーする若年層の選手を見ても、可能性を感じる選手は多そうに見えなかった。
イングランドの変革が進んだのはここ10年だ。急速な右肩上がりを遂げた国と言っていい。この勢いを踏まえれば、2026年W杯の本命に推したくなる。もしイングランド人を多く含むプレミアのクラブがCLで優勝を飾ったとなると、それはさらに現実的なものになるだろう。CLの行方は、W杯の行方にも大きな影響を与えると考えられる。
今季のCL16強の内訳は、スペイン、イングランド、ドイツが3、フランス、オランダが2、イタリア、ベルギー、ポルトガルが1となる。
このなかに自国のクラブがあれば、その分、その国の選手は出場しやすい環境にあると言えるので、人数が増えるのは当然だ。ブラジル、アルゼンチンをはじめ、それ以外の国の選手よりハードルは低い。フェアとは言えないので、その点を加味した「自国以外のクラブで出場した選手の数」についても、後で触れることにする。
5位以降のランキングは以下となる。
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5位ドイツ=32人(3/バイエルン、レバークーゼン、ドルトムント)
6位ブラジル=21人
7位ベルギー=18人(1/クラブ・ブルージュ)
8位アルゼンチン人=16人
9位ポルトガル人=15人(1/ベンフィカ)
10位イタリア人=13人(1/インテル)
このなかでまず目に留まるのはイタリアだ。13人という人数の少なさもさることながら、16強入りしたクラブがインテルのみだという点も寂しく感じる。リーグフェーズでボローニャが、プレーオフでユベントスとアタランタがそれぞれ敗退。W杯欧州予選を直前に控えたいま、国としての勢いのなさが目立つ。
【拮抗するブラジル、アルゼンチン】
2010年南アフリカW杯、2014年ブラジルW杯と2大会連続グループリーグ敗退。2018年ロシアW杯、2022年カタールW杯は欧州予選敗退と、本大会にすら進めていない。CLのデータを見る限り、悪い流れは続いているかに見える。自国以外のクラブで出場した選手の数について触れるならば、イタリアには5人しかいない。かといって、国内のクラブがイタリア人で溢れているという感じでもない。ミランはCLを、スタメンにイタリア人が誰もいないメンバーで戦っていた。
その一方でFIFAランクでは9位につける。W杯本大会では第1ポッド(シード)に入る可能性さえある。日本がもし同じグループに組み込まれたら、番狂わせが狙えそうなチームに見える。
6位は21人のブラジル。自国以外のクラブで出場した選手が一番多い国だ。しかしブラジル代表の最新メンバーを見ると、CLの上位チームの選手が大半を占めているわけではない。その数はかつてのほうが断然、多かった。代表チームに占める欧州組の割合もやや減っている。
W杯の前回優勝国アルゼンチンは8位(16人)。最も多くを占めるクラブはディエゴ・シメオネ率いるアトレティコだ。フリアン・アルバレス、アンヘル・コレア、ジュリアーノ・シメオネ、ロドリゴ・デ・パウル、ナウエル・モリーナの5人を数える。彼らはすべて最新のアルゼンチン代表メンバーに入っている。CLのベスト16強に至るまで実際に出場した選手も8人を数える。これはブラジル代表の最新メンバーに選ばれた6人を上回る。
その一方で、ブラジルには優勝候補に推されるバルセロナ(ラフィーニャ)、レアル・マドリード(ヴィニシウス・ジュニオール、ロドリゴ)、パリ・サンジェルマン(マルキーニョス)の主要メンバーが揃っている。アルゼンチンより少数精鋭と言える。2026年W杯のブラジルは、やはりCLの結果と深く関係するのではないかと見る。
欧州の4強(スペイン、イングランド、フランス、オランダ)とブラジルとアルゼンチンの争い。CLの戦いを通して見えてくる、W杯を1年3カ月後に控えた代表チームの構図である。
【CL16強進出クラブで出場した選手の国別ランキング】
出場選手数 うち自国以外のクラブの所属選手
1スペイン 44 11
2イングランド 43 17
3フランス 40 24
4オランダ 39 13
5ドイツ 32 6
6ブラジル 21 21
7ベルギー 18 9
8アルゼンチン 16 16
9ポルトガル 15 9
10イタリア 13 5
以下
ノルウェー 8
スイス、ポーランド、アメリカ 6
オーストリア、トルコ、モロッコ 5
スウェーデン、クロアチア、ウクライナ、アルジェリア、ウルグアイ 4
デンマーク、ギリシャ、ナイジェリア、エクアドル、日本、韓国 3
チェコ、スコットランド、モロッコ、ギニア、ブルキナファソ、ガーナ、メキシコ、カナダ 2
アイルランド、アイスランド、フィンランド、ルクセンブルク、ハンガリー、スロバキア、スロベニア、アルメニア、セルビア、コソボ、アルバニア、ロシア、ジョージア、エジプト、コンゴ、モザンビーク、ジャマイカ、コスタリカ、イラン 1