「久保建英のチーム」になったサッカー日本代表に、セルジオ越後「ワールドカップまでの課題は、選手層の薄さとマッチメイク」

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2025年03月31日 18:31  webスポルティーバ

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セルジオ越後の「新・サッカー一蹴両断」(6)

 世界最速で2026年北中米ワールドカップ出場を決めたサッカー日本代表。森保一監督も選手も口をそろえて「ワールドカップ優勝」を公言するなど意気は盛んだが、ご意見番のセルジオ越後氏に本大会までの課題を聞いた。

【メンバーが入れ替わるとうまく機能しない】

 4年前のW杯最終予選の日本代表は伊東純也のチームだったよね。右サイドの縦の突破に加えて高い決定力も兼ね備え、攻撃を牽引していた。

 今のチームはどうだろう。3月のバーレーン戦(2−0)、サウジアラビア戦(0−0)では久保建英が攻撃の中心にいた。特にバーレーン戦は十分なスペースがあるなか、ゴールにアシストにと結果も出して、本人もプレーしていて楽しかったんじゃないかな。スペインで経験を積んで、体も強くなったことが自信につながっているのだろう。厳しいことを言えば、まだ好不調の波が目立つけど、それを少なくできれば、誰もが認める日本の顔になれる。期待したいね。

 ここまでの最終予選を振り返ると、本大会に向けての日本代表の課題がはっきり見えてきた。

 まずは選手層だ。毎回の招集メンバーにサプライズはなく、森保一監督はほとんど同じ顔ぶれを選んできた。しかも、ケガなどの事情がない限りスタメンを変えることは少なく、基本的にはメンバーを固定してきた。

 それが3月のサウジ戦では、5日前のバーレーン戦から先発を6人も入れ替えた。すると、自陣に引きこもる相手の守備を思うように崩せず、得点を奪えなかった。ベストメンバーならよいサッカーをできるけど、メンバーが変わるとうまく機能しない。そんな印象だ。短期決戦のW杯本番に向けては、もっと計算の立つ選手を増やす必要がある。

 特に気になるのはボランチだね。遠藤航、守田英正のコンビは鉄板。抜群の安定感だ。だからこそ、ふたりのどちらかが故障で離脱でもしたら、誰がその穴を埋めるのか。

 サウジ戦は、肉離れの影響で離脱した守田の代わりに田中碧が先発。悪くないプレーを見せたけど、守田からポジションを奪えるかといったら難しい。73分には遠藤に代えて旗手怜央を入れ、シャドーだった鎌田をボランチに下げ、83分には鎌田に代えて南野拓実を入れ、旗手をボランチにと、森保監督はいろいろと手を打ったけど、結局、誰も流れを変えられなかった。

 個人的には、藤田譲瑠チマを途中出場でもいいから試してほしかった。彼はパリ五輪代表のキャプテンでリーダーシップがあり、なおかつ守田と似たようなスマートなプレーのできるボランチ。実際、五輪本番でもいいプレーを見せていた。彼がサウジをどうやって崩すのかは見てみたかったね。毎回代表に呼ぶけど、結局、使わないというのはかわいそうだよ。

 ワントップもほかのポジションに比べて物足りない。上田綺世は最終予選ではそれなりに活躍したけど、フェイエノールトでのプレーぶりを見ると、W杯本番で対戦するような強豪相手にどこまでできるのか不安がある。ドイツでプレーしていた時の大迫勇也やかつての高原直泰といった選手を超えられていない。

 サウジ戦で先発した前田大然、昨年11月の2試合(インドネシア戦、中国戦)で先発した小川航基、今回2年ぶりに代表復帰した町野修斗、今後は彼らももっと試していくべきだ。

【強い相手と戦う機会が少ないのはアジアの宿命】

 選手層以外で気になるのは、やはり強い相手と戦う機会が少ないこと。アジアの宿命だね。

 例えば、GKを含めた最終ラインの守備に関して、最終予選ではあまり攻めこまれることはなかった。サウジ戦でも、ほとんどハーフコートで試合を進め、最終ラインの3バックも相手陣に入ってボールを回していた。でも、そんなことはW杯ではありえない。本当に強い相手と戦ったときにどれだけ守れるかは試されていない。

 サウジ戦では20歳の高井幸大がA代表初先発で堂々としたプレーを見せていたけど、あの試合展開では、最終ラインの選手は皆うまく見えるので評価が難しい。

 それは攻撃陣にも言えること。最終予選では8試合で24得点も奪ったけど、それもやはりアジアだからこそで、W杯の舞台であそこまで押し込んで主導権を握る展開になるとは考えにくい。レベルの高い相手に、どこまで攻撃が通用するのか。

 だからこそ、W杯までの期間でどんなマッチメイクができるかが重要になる。

 6月の最終予選残り2試合(豪州戦、インドネシア戦)を終えると、その後は国内組で臨むことになるだろう7月の東アジアE-1選手権(韓国)を経て、9月に北米遠征2試合、さらに10月、11月に国内で4試合が予定されているという。

 W杯予選が始まったヨーロッパ勢と試合を組むのは難しいにしても、9月にW杯が終わる南米勢など、どこまで強い相手を引っ張ってこれるか。そこには日本サッカー協会もたくさんお金を投資する価値がある。個人的には、昨年のアジアカップで負けたイラク、イランとの対戦も検討してほしい。協会は頑張りどころだね。

(5)>>「ワールドカップ優勝」宣言の森保ジャパンに、セルジオ越後「今の豪州、サウジにホームで勝ちきれない国が優勝を語るのはちょっと無理がある」

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