内閣支持率過去最低に…求められる物価高対策は減税か給付か【世論調査解説】

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2025年04月10日 06:34  TBS NEWS DIG

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石破内閣の支持率が先月調査から7.8%と急落し、総理就任後、過去最低の30.6%となった。物価高対策が叫ばれる中、アメリカ・トランプ大統領の日本への24%の関税措置が追い打ちをかける。夏に参院選を控える議員から「よほど目玉となる物価高対策がないとぼろ負けだ」と危機感が漂う。こうした中で与党内からも期待の声が上がるのは「消費税の減税」。一方、減税にはハードルが高いことから「現金給付」を求める声も上がる。

【CGで見る】消費税の減税について、年代別に見ると…

「消費税の減税」30代未満では78%が「賛成」

物価高対策の一つとして消費税の減税を求める声は大きい。
4月実施のJNN世論調査で、減税に「賛成」と答えた人は61%にのぼった。ただ年齢別に見ていくと、若年層のほうがより切実だ。「60代以上」は減税に「賛成」は54%だが、年齢が下がっていくにつれ「賛成」の割合は徐々に増えていき「30代未満」の有権者だと「賛成」は78%にのぼる。

ただ実現へのハードルは高い。
財務大臣経験者でもある鈴木総務会長はその理由を端的に語っている。

「消費税の減税というものは、こういう状況ではありますけれども実施すべきものではない。やはり社会保障を支える重要な財源であるわけであります。一度(税率を)下げると、元に戻すということも相当な政治的なエネルギーがないとできない」(8日会見)

「答弁ラインを超えてしまった」ぶれる“減税”めぐる総理発言

これまで物価高対策のため、一部の野党が求めていた消費税の減税だが、これまで自民党内からは消極的な声が相次いでいた。そうした中で、総理の国会答弁に永田町がざわついた。

立憲・川田龍平参院議員
「食料品の消費税のゼロ税率化といったことなど、消費税の給付つき税額控除となると制度をつくっていくというのはなかなか時間がかかりますので、この付加価値税の減税といったところも考えてはどうか」

石破総理
「世界全て調べたわけではないが、幾つかの例はある。いかなる効果があるのかということについては、よく考えてみなければならないことだ。一概に否定する気は全くないがそういうことの検証というものを少しやらせていただきたい」

この消費税の減税要求に対して、総理が「否定しない」とわざわざ明言したことから、永田町では一気に夏の参院選にむけた物価高対策の目玉として食料品にかかる消費税の減税を打ち出すのではないかとの見方が広がった。

複数の政権幹部やその周辺を取材すると、この総理の発言は、もともと答弁書に書かれていないことを、総理の言葉として答弁してしまったという。“踏み込み過ぎた”ということだった。

ただ、その4日後の4月1日の記者会見では、一気にトーンダウンする。
「消費税は全世代型の社会保障を支える重要な財源だ。税率引き下げは適当ではない」

消費税の引き下げには法改正が伴う上、システム改修など時間がかかる。減税により失われる財源をどう確保するのかなどハードルはいくつもあり、早い段階で高まる期待を打ち消したかったのではないかとされている。

「給付はありがたさを感じてもらえない」総理の胸の内は…

ところが、その翌日2日にアメリカ・トランプ大統領による相互関税が発表され、日本に対しても24%の関税が課されることになった。
この発表を受けた7日の参院決算委員会で再び総理の発言はぶれる。

石破総理
「まだ4月7日の時点で、減税云々ということについて言及すべきだと私は思っていない。物価高に苦しむ方々に対して、何が効果的なのかということは、国会における議論も踏まえて、よく私どもとして、タイムリーな対応というものを考えてまいりたい」

結局のところ、総理の真意はどこにあるのか。
与党幹部からは時間がかかる消費税減税よりも給付のほうがハードルも低く、即効性が高いとの意見があがる。年収制限のない一律の給付となると今年度補正予算案の編成は避けられない。

石破総理は周囲に「給付をしてもあまりありがたさを感じてもらえない。給付より、減税を求められている」と話しているという。消費税の減税も選択肢の1つとして廃除していないと見られる。

しかし法改正やシステム改修というハードルもさることながら、減税分の財源をどうするのかという難題が解決していない。国民民主党の玉木代表は5日、自身のインターネット番組で「やるなら赤字国債だ」と断言するが、総理周辺は「総理は財政規律派なので、消費減税するなら他からもってこないことはありえない」と切り捨てた。

トランプ関税「対抗措置を」57% 日本の対応策、最適解は?

目下、対策が急務なのはアメリカのトランプ大統領が表明した相互関税への対応だ。

今回のトランプ氏の関税措置に日本も「対抗措置を取るべき」と回答した人は57%にのぼった。すべての年齢層で「対抗すべき」が「対抗措置を取る必要はない」を上回った。

加藤財務大臣も4日の衆院・財務金融委員会で「一般論」と断った上で、「可能な限り世界貿易機関の紛争解決手続きを経た上で、報復関税措置の発動も可能と考えている」と答弁し、事実上アメリカ側を牽制した。ただ9日には「措置の見直しを強く申し入れていくことが基本的なスタンスだ」と報復関税には慎重な姿勢を見せた。

石破総理も「あらゆる選択肢を考えておかねばならない」としつつ、報復関税については「倍返しみたいなことになりますと、これはもうめちゃくちゃなことになる。売り言葉に買い言葉とかそのようなことをやるつもりはない」(7日・参院決算委)と否定的だ。

7日夜の石破総理とトランプ大統領の電話会談を受け、日米協議の担当閣僚に指名されたベッセント財務長官は「日本に優先交渉権がある」と発言したことで、政府側の期待感もやや膨らんだが日本側の交渉担当の赤沢経済再生担当大臣が今後、アメリカ側とどう協議を進めていくのか。外交手腕が未知数なだけに、打開策が見いだせなければ内閣への打撃となるだろう。

過去最低の支持率 “奇妙な均衡”でじり貧

こうした中、4月のJNN世論調査で石破内閣の支持率は総理就任後過去最低となる30.6%となった。前月調査(3月1日、2日)から7.8ポイント急落した。少数与党として野党と修正協議を経て、新年度予算を成立させたことは一定の評価(56.4%)があったものの、新人議員に商品券を配っていたことや、高額療養費制度をめぐる総理の発言が二転三転したことなどが支持率に影響したと見られている。

「石破総理にいつまで総理でいてほしいか」という質問には、最も多い回答は「参院選まで」で40%だった。「できるだけ長く」と「直ちに辞めて」は17%と同じ水準だ。

商品券問題など総理自身の言動が問題視されても、与党内で“石破おろし”の動きは広がらず、また野党もいま結束すれば内閣不信任案が可決される状況にもかかわらず、不信任案は現状出す気配は見られない。“ポスト石破”を見据える総裁候補たちは、いまはやりたくないと及び腰状態、一方の野党も弱体化した石破総理で参院選を迎えたいというそれぞれの思惑が交錯し、非常に奇妙な均衡のうえに、石破総理が延命されているのが現状だ。

参院選後に連立の再編加速か 「自公+α」ならどこに?

このまま石破総理のまま参院選に臨むのであれば、待ち受けるのは参院選後の政局だろう。

世論調査で「望ましい政権のあり方」を聞いたところ、最も多い回答は「いまの自公政権に新たなに野党を加え連立を再編する」が38%だった。どの世代でもこの項目の回答が一番多かった。(30代のみ連立再編と野党に政権交代が同率)

仮に与党が参院でも少数となれば、連立再編の動きは加速するものとみられる。
与党が組むのはどこの党になるだろうか。

各党の支持率をみると、野党第1党の立憲民主党より、国民民主党の支持率が上回る傾向は24年12月以降、5か月連続で続いている。さらに今回の調査で特筆すべきは、れいわ新選組がじわりと支持率を伸ばしていて、結党以来最高の4.6%。野党の中では維新を抜いて3番目の支持率となった。自公とれいわは政策的な距離がある上に、現在の自公の議席数にれいわの議席を足しても過半数には達しない。

現実的に自公と連立を組んで、衆議院で過半数に達するのは立憲、維新、国民民主だ。石破総理と総裁選を戦った“ポスト石破”候補のひとり、小泉進次郎衆院議員は「高校授業料の無償化」をめぐり与党と合意した日本維新の会との連立を正式に打診すべきと様々な場面で主張し、「国民民主と一緒にやっていくのも十分あり得る」とも発言している。

一方、ある自民党幹部は今回、維新と国民民主とそれぞれ実務者協議を重ねる中で、財源を無視した国民受けが良い政策が並ぶことを危惧し、「本当に連立交渉しなければいけないのは立憲だ」と話している。立憲側は「大連立を組む環境ではない」(野田代表)とその可能性を重ねて否定していて、大連立が進むのかは現状見通せない。

支持率があがる要素がなかなか見いだせず、じり貧状態の石破内閣がまず取り組むべきは物価高対策、トランプ関税対策だ。総理が言う“国難”にどこまで効果的な対策が打ち出せるか、いま国民の目が注がれている。

TBS政治部 世論調査担当デスク 室井祐作

(4月JNN世論調査の結果は以下の通り)
●石破内閣の支持率は30.6%(先月調査より7.8ポイント下落)。不支持率は66.1%(先月調査より8.4ポイント上昇)。

●政党支持率は、自民党23.9%(先月より1.7ポイント下落)、立憲民主党8.4%(先月より2.8ポイント上昇)、日本維新の会2.9%(先月より0.7ポイント下落)、国民民主党10.7%(先月より0.2ポイント下落)。

●少数与党が野党と協議し予算を修正していくプロセスを「評価する」56%、「評価しない」25%

●企業・団体献金の扱いについて「禁止するべき」25%、「禁止する必要はなく公開すべき」35%、「禁止せず献金の上限額を決めるなど規制を強化すべき」31%

●物価高対策のため消費税を減税することに「賛成」61%、「反対」33%

●石破総理にいつまで総理を続けて欲しいかについて、「できるだけ長く」17%、「年内くらいまで」19%、「夏の参院選まで」40%、「直ちに辞めて欲しい」17%

●望ましい政権のあり方について「少数与党の自民・公明の政権の継続」20%、「自公に新たな野党を加え連立を再編」38%、「いまの野党を中心とする政権に交代」29%

●アメリカのトランプ大統領の相互関税について、「日本が対抗措置をとるべき」57%、「対抗措置をとる必要はない」31%

●大阪・関西万博に「非常に関心がある」6%、「ある程度関心がある」29%、「あまり関心がない」36%、「全く関心がない」28%

【調査方法】
JNNではコンピュータで無作為に数字を組み合わせ、固定電話と携帯電話両方をかけて行う「RDD方式」を採用しています。4月5日(土)、6日(日)に全国18歳以上の男女2606人〔固定855人、携帯1751人〕に調査を行い、そのうち39.6%にあたる1031人から有効な回答を得ました。その内訳は固定電話476人、携帯555人でした。インターネットによる調査は、「その分野に関心がある人」が多く回答する傾向があるため、調査結果には偏りが生じます。より「有権者の縮図」に近づけるためにもJNNでは電話による調査を実施しています。無作為に選んだ方々に対し、機械による自動音声で調査を行うのではなく、調査員が直接聞き取りを行っています。固定電話も年齢層が偏らないよう、お住まいの方から乱数で指定させて頂いたお一人を選んで、質問させて頂いています。

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