閣議に臨む石破茂首相(左)と中谷元防衛相=25日、首相官邸 石破茂首相は27日から、ベトナムとフィリピンの東南アジア2カ国を訪問する。中国の威圧的行動に直面する両国と安全保障分野の協力を強めるのが主な目的。フィリピンとは軍事情報包括保護協定(GSOMIA)と物品役務相互提供協定(ACSA)の締結に向け、協議を始めることで一致する見通しだ。
首相はベトナムを訪れた後、フィリピンに入る。29日にマルコス大統領と会談する。
GSOMIAは機密情報を共有するための枠組み。漏えい防止の措置などを定める。ACSAは燃料や弾薬の融通を可能にする。
フィリピンは日本にとってシーレーン(海上交通路)に当たり、台湾を挟む形で位置する。近年、日比は外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)を開催し、自衛隊と比軍の相互往来を容易にする円滑化協定(RAA)に署名。「準同盟」の色彩を帯びる。
日本政府は今回の首相訪問でこの流れを加速させたい意向。林芳正官房長官は「戦略的要衝に位置する東南アジアとの関係強化は日本外交の最優先事項の一つだ」と語る。
ベトナムで石破首相は共産党書記長、国家主席、首相、国会議長のトップ4とそれぞれ会談する。28日のファム・ミン・チン首相との会談で、同志国に防衛装備品を無償供与する「政府安全保障能力強化支援(OSA)」の対象国とする方針を伝える方向だ。
越比両国との首脳会談では、トランプ米政権の関税措置を巡っても意見交換する。日本は同志国連携の枠組みを重視する観点から、米国と東南アジアの間の「橋渡し役」を務める考え。東南アジア諸国にも関税に不安や不満があるとみられ、外務省幹部は「首脳同士の個人的関係の中で話すことになる」と明かした。
東南アジアを巡っては、中国の習近平国家主席が14〜18日にベトナム、マレーシア、カンボジアの3カ国を歴訪した。勢力を広げ、トランプ政権に対抗する思惑があるとみられる。こうした動きも念頭に、首相は「自由で開かれたインド太平洋」や自由貿易体制の重要性を共有したい意向だ。30日に帰国する。