長崎県警佐世保署の男性警部補(当時41歳)が2020年10月に自殺したのは、当時の上司2人のパワーハラスメントと長時間労働が原因として、遺族が県に計約1億3870万円の損害賠償などを求めた訴訟の判決で、長崎地裁は10日、ほぼ請求通りとなる約1億3587万円の支払いを命じた。松永晋介裁判長は、警部補の死亡前に月200時間前後の時間外労働が常態化していたとして、県側の安全配慮義務違反を認めた。
「上司への求償や警察の業務改善につながる判決を願ったが、そうはならず、残念」。亡くなった警部補の妻(54)は勝訴したものの、判決後に長崎市で開いた記者会見で失望感をにじませ、控訴を検討する考えを示した。
国家賠償法は公務員個人が職務中の行為で他人に損害を与えた場合、国や自治体が賠償責任を負うと定める。一方、国賠法には公務員に故意や重大な過失があった場合、国や自治体が対象者に賠償を求める「求償権」の行使も規定されている。妻は会見で、警部補が残した遺書に「(長崎県警の業務が)改善されることを願います」と記してあったと説明。ただ、判決は重過失について言及せず、「県に求償させ、県警の業務改善につなげたかった」と悔しさをにじませた。
遺族によると、県警は警部補の宿直業務などについて、「ほとんど労働する必要のない勤務」として労働時間に算入しないことが認められている「断続的労働」とみなし、時間外労働の割増賃金を支払っていなかった。遺族側は、こうした運用が長時間労働の一因になったと考え、訴訟ではきちんと労働時間と認めて割増賃金を支払うよう求めた。だが判決は、この点も認めなかった。
警部補が生前に着けていた腕時計や結婚指輪、遺品のスマートフォンや水筒を持参して判決に臨んだ妻は「お金が欲しいのではなく『県警が変わってほしい』と思って裁判をした。それをくみ取ってもらえず、主人も残念に思っているだろう。これでは終わらない」と語った。【樋口岳大、百田梨花、添谷尚希】
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