警察官志望者が減少する中、各警察本部の試行錯誤が続いている。地域性が追い風となったり、独自の取り組みで浮揚を図ったり、採用現場の様相はさまざまだ。
ここ5年以上、予定より多くの採用者を確保し採用実績が好調な沖縄県警。県内で公務員試験対策の予備校を展開する「SU―HAN」(那覇市)代表の武嶋一郎さんによると、沖縄では民間企業より公務員の給与水準が高く、公務員志向が強いという。「大学に進学せずに就職する学生も多い。警察官採用では特に高卒枠が人気で、競争が激しい」と指摘する。
ただ、受験者数は減りつつあり、県警の採用担当者は「時差出勤など柔軟な働き方をアピールし、若い人のニーズに合わせて採用活動に取り組みたい」と意気込む。
一方、日本海側のある県警では受験者数がこの3年で半減。高校生の半数が県外の大学へ進学し、Uターン就職が少ない状況が一因だという。山間部では交番や駐在所の統廃合を進めており、担当者は「人員の適切な配置で治安維持に取り組んでいく」と強調する。
民間企業では一般的な中途採用も、警察では進んではいないのが現状だ。中途採用者も新人警察官を訓練する警察学校からキャリアをスタートさせるのが原則だが、西日本のある警察幹部は「『社会人経験者も巡査から』では人は集まらないのでは」と声を潜める。
ユニークな取り組みを始める警察本部も。受験者増に向け北海道警では、警察官が定住を希望する地域周辺を勤務地とする制度の導入を決めた。高校生を中心に地元志向が強い学生も多く、子育てや介護など家庭の事情にも配慮したという。担当者は「家族から遠く離れることなく私生活を充実させ、安心して仕事に取り組める職場環境をつくりたい」と話している。