『イカゲーム3』パク・ソンフン 「本当に悲しかった」衝撃シーンの裏側を語る<ネタバレあり>

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2025年06月29日 19:10  クランクイン!

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クランクイン!

パク・ソンフン  Yoon Ji-yong/Netflix(C)2025
 世界的社会現象となった『イカゲーム』の完結編となるシーズン3がついにNetflixで独占配信された。主人公ソン・ギフン(イ・ジョンジェ)らは、運営側への反乱を決意したものの失敗し、失意に沈んだシーズン2。続くシーズン3は、反乱の直後から物語が動き出す。今回クランクイン!は、本作でトランスジェンダーのヒョンジュ役を務めたパク・ソンフンにインタビューを実施。本シーズンで新たに登場したゲームの裏側や作中の重要シーンについてネタバレも交えて聞いた。 ※シーズン3の重要なネタバレに触れています。ご注意ください

【写真】トランスジェンダーのヒョンジュにふんしたパク・ソンフン

■ヒョンジュのアクションに込めた思い

 パク・ソンフン演じるヒョンジュは、性別適合手術の費用を工面するためゲームに参加。「女性として生きたい」と決意して以降、家族から縁を絶たれ、仕事も失い、借金まみれになったキャラクターだ。心優しい人物な一方、元特殊部隊員という意外な経歴を持ち、ギフンとともに反乱に参加。銃撃戦の最中に弾薬を取りに向かったデホ(カン・ハヌル)を追って宿舎に戻るが、ピンクガードに追い詰められてしまう。

 そこから続くシーズン3で参加者を待ち受けていたのは、第4のゲーム「かくれんぼ」。参加者たちは、ランダムで青組・赤組の2つのチームに振り分けられ、鍵が配られた青組は、30分以内に出口を見つけて脱出するか、赤組に捕まらなければクリア。ナイフが配られた赤組は、青組を見つけて殺せばクリアというルールでゲームが展開される。

 今回のゲーム会場は、「星の輝く夜に」という第2話のエピソードタイトルの通り、子どもの絵のようなタッチで星空が描かれたブルーの天井が目を引く巨大な迷路。どこか懐かしい路地のようなデザインで、小部屋や別の階につながる緑の扉が点在する。

 このセットについてソンフンは「実際の迷路のような形の大きなセットが組まれていました」と撮影を振り返る。作品上では、上下階へ続く階段があり、複数階構造であるかのように映されているが、「大きく2つのセットがありまして、階段はあるものの、実際には階が分かれておらず、単層構造になっていました。扉を開けた時に、下の階まで一望できるようなシーンがありますが、あれはCGで再現しています」と裏側を明かす。

 ヒョンジュはシーズン2同様、「かくれんぼ」でもジュニ(チョ・ユリ)とクムジャ(カン・エシム)と行動を共にする。三人とも殺意を帯びた赤組から逃げ惑う青組。しかし、ジュニは身重な上、途中から足を負傷。クムジャも老齢と、赤組にとっては格好の餌食なため、元特殊部隊員であるヒョンジュが、二人を守らなければならなかった。

 狭い通路という制約のある空間で、ナイフを持った男相手に丸腰で戦うヒョンジュのアクションは、一挙手一投足に気迫が宿っていて目が離せない。ソンフンは「シーズン3では二人の男性と決闘するシーンがあり、そのためにアクションスクールに何度も通って練習を重ねました。現場でも何度もリハーサルを繰り返しながら、しっかりと準備をして撮影に臨みました」と同シーンの撮影を振り返る。

 そんな中で、ファン・ドンヒョク監督からは変わった注文もあったそうで「体力が求められる役だったのですが、とあるシーンで半袖を着ていた時に腕の筋肉がはっきりと割れていたらしく、監督から『トランスジェンダーの役なんだから、もうウェイトは控えて』と言われたことがあります」とも明かす。そう言われるまで体に叩き込んだ動きの数々が、説得力のある死闘を生み出したのだろう。

 それと同時にヒョンジュのアクションは、どこか憂いも帯びていた。心理的な役作りについてソンフンはこう語っている。「ヒョンジュは、自分とジュニとクムジャを守るために、やむを得ず人を殺さなければなりませんでした。なのでアクションにも、やや防衛的な動きを入れたんです。ナイフで人を刺す時も、相手の目を見て真っすぐ刺すのではなく、顔をそむけて、仕方なく刺すような芝居を入れました。そうすることで彼女の葛藤を表現したのです」。

■<重要ネタバレ注意>衝撃シーンの裏側語る

 画面に映るたびに、視聴者の心をつかんで離さなかったヒョンジュ。しかし、待ち受けていたのはあまりにも残酷で無慈悲な運命。彼女は一粒の涙を流しながら、静かに息を引き取った。

 ソンフンは同シーンの撮影を「僕自身も本当に悲しかったですし、撮影現場も非常に厳粛な雰囲気でした」とあの瞬間に立ち返るように静かに語った。「実は本来の予定にはなかったのですが、ヒョンジュが2度刺される演出が加わりました。それに伴って監督からも『2度目に刺されて倒れる前に、一粒の涙を流せないか』とリクエストをいただいたんです。ありがたいことに、1テイク目でタイミングがぴったり合って、ポロッと涙が落ちたので、すごく良い気持ちで撮影を終えることができました」。

 同シーンだけでなく、重要な場面が続く『イカゲーム』の台本は、厳重なセキュリティー対策が施されていたそう。「このドラマはセキュリティー管理が非常に徹底されており、俳優一人ひとりにタブレットが支給され、パスワードを入力しないと台本が見られない仕組みになっていました。そのためマネージャーでさえ台本を見ることができず、俳優だけがアクセスできるという状態だったんです。さらに、登場人物が死亡する場合、そのキャラクターが亡くなる回までしか台本は共有されません。わたしも第2話で退場する役なので、それ以降のストーリーがどう展開するのか、実は今でも知らないんです」と話した。

 ヒョンジュ亡き世界で待ち受ける第5のゲームは「大縄跳び」。「むくげの花が咲きました(だるまさんがころんだ)」でおなじみの女の子のキャラクター、ヨンヒに加え、「大縄跳び」には男の子のチョルスも登場する。

 ソンフンは「チョルスとヨンヒは、わたしたちが子どもの頃に使っていた教科書によく登場していた、なじみ深いキャラクターなんです。以前はヨンヒだけでしたが、チョルスが加わったのは良いアイデアだと思います」と同ゲームを称賛。続けて「撮影に参加した俳優たちの話によると、現場には足(下半身)しかなかったそうなんです。上半身はCGだったとか」と撮影秘話も明かしてくれた。

 ヒョンジュを演じたことによって、LGBTQ(性的マイノリティ)の人々への偏見をなくす手助けになればと願うソンフン。『イカゲーム』シーズン3は「命の貴重さや高貴さについて、もう一度考えられる作品になった」と語り、「パク・ソンフンという俳優が『イカゲーム』に参加し、全世界にいる視聴者の方に届けられる作品の一員になれたのは、本当にありがたいことですし、素晴らしいことだと思っています」と喜びをかみ締めた。

(取材・文:阿部桜子)

 Netflixシリーズ『イカゲーム』シーズン1〜3は独占配信中。
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