「やっと無罪の証明できた」＝前川さん、涙浮かべ感謝―福井事件再審判決

　再審無罪判決の言い渡しが終わり、前川彰司さん（６０）が裁判所前に姿を見せると、約７０人の支援者らから拍手と歓声が湧き起こった。前川さんは「感極まっている。本当にありがとうございました」と目に涙を浮かべ、支援者らへの感謝を伝えた。その後開かれた記者会見では「事件発生から３９年たち、やっと無罪の証明ができた」などと言葉を詰まらせた。

　午後２時前、名古屋高裁金沢支部の２０５号法廷に入った前川さんは深く一礼。弁護側の席に座ると神妙な面持ちを浮かべ、遠くを見詰めた。開廷直後、主文が伝えられると硬い表情で小さくうなずいた。読み上げられる判決理由にも表情を崩さず、深呼吸して天を仰いだり、裁判長の方に視線を向けたりしながら聞き入っていた。

　最後に裁判長から「長期間にわたって大変なご苦労をかけてしまい、申し訳なく思っています」と語り掛けられると、座ったまま深く頭を下げ、涙目で法廷を後にした。

　会見で吉村悟弁護団長は「完全無罪判決、完全勝利。この日を迎えたことを大変喜びに感じている」と話した。判決直後に名古屋高検金沢支部に対し、口頭で上告断念を申し入れたことも明かした。

　前川さんはこの日、静岡地裁で再審無罪となった袴田巌さん（８９）の姉ひで子さん（９２）ら再審事件関係者からもらった帽子やネクタイを身に着けて判決に臨んだ。会見中には、ひで子さんからのビデオメッセージが流れ、「無罪という言葉を聞いて本当にうれしく思っている。前川さんは６０代でまだ若い。これから別の人生があるから、頑張っていかなきゃ」と笑顔でエールを送った。