ロバンペラを「思わぬ刺客」と警戒（？）する小林可夢偉。ラリー王者電撃デビューのカギは“空力の理解”か

「たぶん僕、クビじゃないですかね？」

　前日に電撃発表されたカッレ・ロバンペラのスーパーフォーミュラ参戦について問われた小林可夢偉（Kids com Team KCMG）は、そう冗談めかした。

　10月9日に突如として発表された、ロバンペラのラリー引退と2026年スーパーフォーミュラへの挑戦。WRCタイトル経験者のフォーミュラレース、それもF1に次ぐ速さとも言われるスーパーフォーミュラへのチャレンジとあって、第9・10戦が行われている富士スピードウェイのパドックでも、多くの関係者が話題に挙げていた。

　そんななか、10日（金）の2回のフリー走行を終えてミックスゾーンに現れた可夢偉も、前日の発表で驚かされたひとりであることが明らかとなった。WECチーム代表という要職も兼ねる可夢偉とて、発表があるまでは知らされていなかったという。

　ロバンペラとの接点はないという可夢偉。記者から「来年、（SFで）チームメイトになる可能性もあると思いますが」と話を向けられると、「いや、たぶん僕、クビじゃないですかね？」というブラックジョークが飛び出した。

「たぶん、引退会見が（次戦最終戦の）鈴鹿で行われるんじゃないですかね。『思わぬ刺客』って、まさにこういうことやな、と。まさかあのルートは想像していなかったから、これこそ刺客だなと」と、冗談を続けた可夢偉だったが、ロバンペラのトップフォーミュラへの適合について問われると、「ラリーって言うけど、結局速く走るとかそういうのって、“アタマ”なんですよね」と、そのポテンシャルをポジティブに予見している。

「だから世界チャンピオンになっているわけで。最初はもしかしたら苦戦するかもしれないけど、どこかで来ると思いますよ。ポルシェ・カレラカップとかは経験しているんでしょ？　だから大丈夫だと思います」

　また、可夢偉によればロバンペラはトヨタが取り組むもうひとつの世界選手権、WECにも興味を示しているという。トヨタではかつてセバスチャン・オジエもハイパーカーをテストしており、ロバンペラが将来的にハイパーカーに乗る可能性についても、可夢偉は否定していない。

「彼の場合はちゃんとステップも踏んで来ると言っているので、その可能性は充分あると思う。ただ、たぶんあの感じを見ていると、（ターゲットは）F1じゃないですかね。そういう発言に見えますね」

■ロバンペラは「ラリーに特化した乗り方ではない」と大嶋和也

　ラリードライバーを父に持ち、自らもドリフトに挑戦するなど、『ラリー』『ドリフト』というロバンペラとの共通項があり、今季限りでスーパーフォーミュラのシートから退くことを発表している大嶋和也（docomo business ROOKIE）は、ラリー世界王者のSF参戦というニュースをどう受け止めたのだろうか。

　ロバンペラと面識はあるという大嶋は、「もともと（サーキット）レースの方にも興味があるという話はずっと聞いていました。ただ、まさかいきなりSFに来るとは思わなかったですけど」と笑う。

　スーパーフォーミュラの難しさを知る大嶋だけに、「乗るチームにもよるかとは思いますが、そこまで簡単に、いきなりトップに来るのは難しいのかなと思います」と現実的な予想はしつつも、「ただ、あれだけの選手なので、しっかり準備して、練習の場もしっかりと与えられた上で自信を持って来るのだろうから、そこそこのところには行くと思いますね」と、ポジティブな可能性にも言及した。

「ドリフトやラリーとは（クルマを操る）角度が違うし、エアロの考え方なども違いますが、まだ若いし、空力さえちゃんと理解すれば、柔軟にやってくると思いますよ。おそらく、ラリーやりながらもいろんなクルマに乗ってきたと思うし、彼に関してはそれほど『ラリーに特化した乗り方』というわけではないと思う。いまはシミュレーターもあるし、いろいろ乗っていると思うので、どんな走りをするのか、興味はありますね」

　ラリー界のトップドライバーの、トップフォーミュラ参戦。スーパーフォーミュラの公式セッションデビューは、早くとも12月の合同／ルーキーテストになるはずだが、多くの人がその走りを早く目にしたいと感じているはずだ。

[オートスポーツweb 2025年10月10日]

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