
連載【果てしない延長戦】第16回
元Jリーガーで、現在は秋元康プロデュースの昭和歌謡グループ・SHOW-WAのメンバーとして活躍する青山隼の連載「果てしない延長戦」。現役時代の先輩や戦友をはじめ、各界で活躍する方をゲストに招き、「人生の転機」や「次への挑戦」をテーマに熱く語り合う。
今回のゲストは、SHOW-WAのツアーや、グループ初の日本武道館公演(10月1日開催)を担当する舞台監督・小野貴巳さん。前編では、二人の出会いや関係性、SHOW-WAコンサートの裏話などを語ってもらった。
【ファーストツアーのリハで初対面】
――数々のライブやイベントの舞台監督を務め、業界の第一線で活躍されている小野さん。これまでのSHOW-WAツアーや10月1日に控えた日本武道館公演など、大きい会場でのライブでお世話になっているそうですね。
青山 僕らにとって小野さんは、"裏のボス"のような存在なんです。リハーサルから現場に入ってくださって、振りの見せ方に対するアドバイスや立ち位置の確認まで、細かく熱心に指導してくださいます。本番当日は、僕らがステージに出る直前、イヤモニから小野さんの声が聴こえて。「じゃあ、今日もみんなで頑張っていきましょう。いってらっしゃい!」と送り出してくれて、「おー!」と応えてステージへ飛び出していく。僕らを導いてくれる、本当に頼れる舞台監督さんです!
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小野 SHOW-WAとご一緒するようになったのは、去年のファーストツアーからでしたね。
青山 はい。ツアー経験者のたけ(向山)以外のメンバーにとっては、ツアーを回ること自体が初めてでした。ライブがどうやって成立し、どう進行していくのかもわからない状態で。まさに"赤ちゃんのハイハイ状態"から、小野さんが「こっちに来るんだよ」と一歩ずつ引っ張ってくださいました。小野さんは、初めてSHOW-WAと会ったときのことを覚えていますか?
小野 もちろん、よく覚えていますよ。当時はすでに全体のセットリストが固まっていたのですが、リハーサル直前に新曲が急遽1曲追加されることになったんです。まだ形になっていない状態で。しかも、何曲かは振り入れが前日ということもあり、「本当に本番までに振り入れできるのかな......?」とハラハラしたのが最初の印象でした(笑)。でも、とにかく一生懸命で、目の前の課題を一個ずつ必死に潰していく強さがありました。
青山 その新曲というのは『いつの日にか悔めばいい』。振りが全然入っていない状況のままツアー初日を迎えてしまって......。お客さんが会場に入るギリギリの時間まで、小野さんにお付き合いいただいてリハをやっていたのですが、ステップがどうしても噛み合わないところがあったんです。僕はアスリート気質なので、できるまでやらないと気が済まない。「小野さん、もう1回やらせてください!」と何度も何度も繰り返しました。ダンス歴が長い、たけでさえ足をつってしまうほど過酷なリハーサルでした。こんな本番寸前まで心配して付き合ってくれる舞台監督さんなんて、いないんじゃないかなと思います(笑)。
【技術よりもマインドが大事】
――実際、本番ギリギリになってもリハーサルがうまくいかなくて何度もやり直しするようなアーティストさんは他にもいるのでしょうか?
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小野 そうですね。新曲を初披露するときに、不安を感じて何度か確認することはあります。ただ、当時のSHOW-WAはそれとは次元が違っていました(笑)。不安というより、「本当に間に合わない! 時間がない!」という切迫したもので......。立ち位置や次の曲への繋ぎ方をスムーズに行えるかの確認をして、「はい、ここ止めますね。オッケーです!」と進んでいくのが通常のリハーサル。でも、当時の彼らは"振り入れ練習"の延長のようになっちゃって(笑)。
青山 事前にやっていくべきなのに、小野さんやフタッフの皆さんには本当に申し訳ない気持ちでした。それでも小野さんは嫌な顔ひとつせず、現場の舞台チームをまとめてくださって「いいよ。もう1回やろうよ!」と最後まで向き合っていただいて。だからこそ、ステージを出るときの小野さんの「いってらっしゃい」が僕らにとって特別なものになっているんです。「ここまでやってきたじゃん。最後はみんな主役になって花を咲かせてやり切りましょう。いってらっしゃい!」と言われて「うぉー!」とステージへ出ていくあの瞬間は、たまらない気持ちになりますね。
小野 時間も限られているので、「そろそろ準備しようか」とリハを終わらせることもできます。それに、本番直前の場で1回、2回と練習を繰り返したところで、ダンスの技術的にはそこまで変わらないんですね。でも、本当に大事なのは技術の優劣ではなく、本番のステージに出ていくまでの彼らのマインドがどう変わるか。「できる、できない」の問題じゃなくて、崖っぷちにやっと自分で立てる状態に持っていくというか、そこまで見せてこそのSHOW-WAかなと。ただ上手く踊ることだけがライブではなく、Rubyの皆さんを心から"感動させるための準備"の時間だと思っています。
青山 確かに、そうですね。技術云々というより、マインドの変化がパフォーマンスに大きな影響を与えていたんですかね。
小野 演者が納得しないまま止めちゃうと、観ているお客さんにも「あ、言うほどやってこなかったな」と伝わってしまうんですよ。でも、あの必死さが彼らのリアルなので、それが少しでも見えるだけでステージでの輝きが全然違ってくる。だから、ある程度の技術的な確認は抑えつつ、彼らを必死に向き合わせることは意識しています。それに僕の中では「計算しながらやれないくらいまでやらせた方が輝く」という表現のほうが正しいかも。何度もやり直して慣れてしまうと、見せ方があざとくなってしまうんです。そのあざとさすら、できなくさせてあげるというか(笑)。
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青山 なるほど......! めちゃくちゃ深いですね。この対談、メンバー全員に読ませたいです!
【イヤモニから1、2、3!】
青山 それくらい僕らを見て理解してくれている小野さんだから、本番中も甘えてしまうんです。実は、イヤモニ越しに助けてもらっていて(笑)。バラード曲を歌い終わって、最後に6人でお辞儀をするところがあったんです。リハーサルで何度やっても頭を上げるタイミングが合わなくて、小野さんが臨機応変に対応してくださって。本番中、歌い終わるとイヤモニから小野さんの声で、「はい、お辞儀。1、2、3で上がりよ!」とお母さんのように言ってくださって、僕らはピタッと合わせることができたんですよ。小野さんがいなかったらSHOW-WAのライブは成り立っていないと思います。
小野 いやいや、他の監督でもうまくやると思いますよ。ただ、お辞儀のタイミングが合わないまま終わるのが、どうしても気持ち悪かったんです(笑)。
青山 そういう愛情が嬉しくて、僕らは本当に恵まれているなと実感しています。ここまで熱く僕らのことを考えて向き合ってくださって、他のスタッフさんたちも動いて僕らのために尽くしてくれる。本当にワンチームだなと感じています。
小野 通常、舞台監督がアーティストの方々とここまでお話しする機会は多くないです。でも、SHOW-WAに対しては僕らもどこか仕事だけではなく、アットホームで"家族"のように接しているところがありますね。これからも一緒に作っていこうという感覚でやっています。
青山 現場で誰が偉いとかはなく、みんなで同じ方向を向いてやれるのがSHOW-WAだと思うし、そこは変わっちゃいけないなと思っています。ただ、僕らはポンコツだから大変だと思うのですが(笑)。やりやすさはありますか?
小野 ありますよ。「絶対こうしたほうが良くなる」と思っても言えない環境が多いですが、彼らには言いやすいですね。
青山 僕らもまだ分からないことだらけですし、プレイヤーは本番に向けて視野が狭くなりがちなので、「今のちょっと冷静に考えてみて」とか言ってくださる存在がすごく大事だと思います。見せ方が自己満足になっていないか、客観的な経験をもとにアドバイスをいただけることが本当に嬉しいです。
小野 そんなこと言ってるかな?(笑)
青山 言ってますよ! 「こうしなさい」と意見を押し付けるのではなく、僕らの話を聞いて「それならこうしたほうがいいんじゃない?」と助言を差し出してくれる。語彙力のない僕らの言いたいことをまとめてくれて、「あ!そういうことです!」ってなっていますね。
小野 何か言うと「わかりました!」と受け入れてくれる。6人とも素直ですよね(笑)。
青山 何が正解かわからないからこそ、経験者の方に言われたことをまずは受け入れる姿勢が大事だと思っています。僕らのために言ってくださっているのでありがたいです。
【セカンドツアーのピンチをチャンスに】
――ファーストツアーを経て、今年のセカンドツアーではさらに成長したSHOW-WAを感じられたのでは?
小野 そうですね。ただ、セカンドツアーの初日(仙台公演)はある意味、印象的な1日でした。
青山 仙台公演は、それぞれに葛藤がある中でのスタートでした。ツアーが始まっている段階で、急遽セットリストを変更することってプロの現場ではよくあることですか?
小野 いや、珍しいですね。基本的には、決まったセトリと演出を磨き上げていくものですから。でも、次の広島公演ですよね。
青山 はい。たけが本番直前に体調を崩してしまって、急遽5人で広島公演をやることが決まったんです。たけのパートは誰が歌うか、立ち位置のフォーメーションをどうするか、頭をフル回転させていました。でも、僕たちだけの問題ではなかったんですよね。こういう急な変更があると、舞台裏の方々にどんな影響があるんですか?
小野 セトリが変わると曲の繋ぎ方もメンバーの動き方も変わりますが、一番大きいのは人数が変わることで起きる撮影カメラの「カメラ割り」がすべて変わってしまうこと。フォーメーションの変化をちゃんと理解してないと、ステージの動きにカメラワークがついていかない。本番前に全曲リハーサルし直す時間はないですし、ぶっつけ本番に近い状況です。
青山 僕らが「5人で大丈夫?」と焦っている裏で、小野さんが的確な指示を出してくれてスタッフさんたちがカバーし合って導線を作ってくださっていたんですね。大変なのは僕らだけじゃなかった。まさに小野さんは、影のMVPでした。
小野 そんなことないよ(笑)。僕らスタッフは、頭をフル回転させていました。公演が始まってからも「ここでこうなったらこうしよう」と常に考えていましたから。
青山 かっこ悪くてもいいから、まずは今できる最高のものを届けようと5人で腹をくくって全力でぶつかりました。その結果、ライブ後に小野さんが「これでしょう! 広島が終わったらまた6人でやろう!」と声をかけてくださって、嬉しかったです。
小野 5人というデメリットはありましたが、彼らの必死さがゴンっと前面に出ていて。怪我の功名じゃないですが、広島公演は素晴らしいステージになりました。
●小野貴巳(おの たかし)
1978年8月23日生まれ 宮崎県出身
◯株式会社ピース所属。小劇場のお芝居からドームライブまで、数々の現場の舞台監督として活躍。SHOW-WAではファーストツアー、セカンドツアーのほか、10月1日(木)に開催されるSHOW-WA初の日本武道館公演も担当する。
公式サイト【https://piece222.studio.site/】
●青山隼(あおやま じゅん)
1988年1月3日生まれ 宮城県出身
◯2006年にプロデビュー。U-20日本代表経験を持ち、Jリーガーとして名古屋グランパス、セレッソ大阪、徳島ヴォルティス、浦和レッズでプレーし、2015年に現役引退。その後は、俳優として舞台やドラマ等に出演。現在は、秋元康プロデュースの昭和歌謡グループ・SHOW-WAのメンバーとして活動中。ラジオ『SHOW-WA寺田&青山の青春時代を取り戻せ!』(CBC、毎週日曜22:00〜)レギュラー出演中。2026年10月1日(木)にはSHOW-WAとして初となる日本武道館での公演が決定!
公式X【@jun_aoyama1988】
公式Instagram【@jun_aoyama_show-wa】
取材・文/釣本知子 撮影/上村透生

