じゃらん、休刊の理由は? 旅行雑誌ライターが語る“旅選び”の変遷と“マニアック特集”のトレンド化

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2024年10月08日 20:00  リアルサウンド

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じゃらん〈公式〉Xより@jalannet

■旅行雑誌、苦境に陥りつつある?


  1990年に創刊された旅行情報誌「じゃらん」と「じゃらんムックシリーズ」が、来年3月に発行される号を最後に休刊になることがわかった。出版元のリクルートが10月8日に発表した。旅行に関する情報は、今後インターネットの予約サイトやアプリの「じゃらんnet」に集約するといいう。一時代を築いた雑誌が休刊になるとあって、ネット上でも驚きをもって迎えられている。


(参考:【写真】旅行誌特集でも大人気に! ラブライブ!サンシャイン!!の聖地、沼津の盛り上がりを見る


  筆者は「じゃらん」で執筆経験はないものの、多くの旅行雑誌に記事を執筆してきた経験がある。年々実感するのは、旅行雑誌の影響力が急激に落ちていることだ。インターネットが普及した頃に既に感じるようになったことだが、特に若い世代は、旅先を決める際に旅行雑誌よりも、InstagramやXなどのSNSのインフルエンサーの情報を参考にすることが多い。飲食店の情報も「食べログ」などのサイトを開いて決めるのだ。


  取材を申し込んでも、「雑誌はいいや」と断られることも増えた印象を受ける。また、取材先が雑誌の名前を知らないという事例も多くなった。ベテランのライターは、「昔は旅行雑誌の取材で料理を紹介するとなると、店側も喜んでくれて、撮影した食事代はサービスしてくれることが多かった」と話す。ありがたいことに、現在でもそうした場面はあるが、ベテランライター曰く「そうした機会は以前より減った」という。


  旅行雑誌が苦境に陥っている背景には、3年以上も続いたコロナ騒動や、若者の所得の減少による旅行控えなどの影響もありそうである。また、旅行をする人もかつてのような定番観光地ではなく、アニメの聖地巡礼がブームになっているように行き先ひとつ見ても多様化しているし、バブル時代のように集団で旅行に出かけるスタイルの旅は過去になりつつあるのだ。


■マニアックな旅行情報誌や旅行ガイドブックがブーム


  その一方で、注目が集まっているのはマニアックな旅行情報誌や旅行ガイドブックである。バイクと旅行を扱う雑誌「モトツーリング」は、まるでオカルト雑誌の「ムー」のようなオカルトチックな特集があるが、これは編集長の趣味が反映された結果という。「ムー」といえば、旅行ガイドブックの「地球の歩き方」が「ムー」とコラボして大ヒットしたことは記憶に新しい。


  独自色を発揮しているのが、昨年で創刊50周年を迎えた老舗旅行ガイドの「るるぶ」である。通常の「東京」「京都」「北海道」などの地域ごとのガイドのほかに、「ラブライブ!サンシャイン!!」の聖地である静岡県沼津市周辺を取り上げた『るるぶラブライブ!サンシャイン!!』など、特定のアニメに特化したガイドを刊行している。


 沼津といえばアニメの聖地で特に認知度が高い地域だが、地域全体でアニメファンを迎え入れる体制が万全である。東海道新幹線を運営するJR東海は、かつては“お堅い”鉄道会社のイメージがあったが、近年はJR沼津駅の壁面に『ラブライブ!』のキャラのラッピングを行ったり、他にも“推し旅”と称したキャンペーンの一環として『響け!ユーフォニアム』など様々なアニメとコラボするようになった。


 このように、旅行雑誌はもとより、旅行会社もよりマニアックなニーズを掴もうとしていることがわかる。筆者も建築のガイド本を出しているので、過去にJTBや朝日旅行に依頼されてツアーの講師を務めたことがあるが、マニアックな需要に応える旅行商品を各社が打ち出している。こうした企画の成功のためには、ファンの想いに応えるための入念なリサーチ、そして企画担当者の熱量が欠かせないといえる。


(文=山内貴範)



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