過去5万本の記事より大反響だった話をピックアップ!(初公開2023年4月8日 記事は取材時の状況) * * *
◆素人、大学生、ナンパ企画……業界の「ヤラセ」はどこまで本当か?
エンタメ業界にヤラセはつきものだ。あらかじめ定められた設定や筋書きがあるからこそ大衆の“ツボ”を狙いやすく、タレントや裏方の全員が動きやすい。もちろんすべてがヤラセとは限らないが、何もかもがぶっつけ本番だと結末がどう転ぶかわからないため、大きな賭けとなってしまう。常にハラハラドキドキの緊張状態は観ている側だと楽しいが、作り手からするとやりづらいことこの上なし。そのため、ある程度の決定事項は仕方がないと言える。
さて、前置きが長くなったがここで多くの人は「セクシー業界にもヤラセがあるのか」という疑問を抱くはずだ。現役大学生デビュー、元プロアスリートが1本限定出演、海の家でお持ち帰りナンパ企画……。どれも人の興味をそそるフレーズだが、果たしてどこまで本当なのだろうか?
◆設定は全部ウソとは言い切れないが……
すっかりと定番化した現役〇〇(大学生やインフルエンサー等)や元○○(アイドル、アナウンサー、子役等)のデビュー作品。今やさまざまな肩書きの女優が登場し、一体いくつ売り文句が用意されているのかと思ってしまうほどだ。
過半数のユーザーが彼女たちの肩書きを信用していないそうだが、あながちすべてウソでもない。かといって、1から10まで本当かと言われるとたいへん微妙なラインである。リアルさを強調させるために真実を混ぜているが、「現役アイドル」や「元タレント」は実は“かじった程度”しか活動していないことも多い。元役者と謳いつつエキストラで1本現場に行ったきりの人もいた。
もちろん本腰を入れて活動していた女優もいるため、一概にウソだと決めつけるのは良くない。ただ鵜呑みにすると拍子抜けする可能性が高いため、「ヤラセ」は多少なりともあると考えていいだろう。
「業界はユーザーを騙す気満々なのか!」と憤りを感じるかもしれないが、逆に怒っている人々にモノ申したい。謳い文句もなく、全員が全員「素人デビュー」という同じようなタイトルの作品まみれになったら、それはそれで大変なことになるだろうが! と……。
◆元選手の肩書きでデビュー、実際は選手の「せ」の字もなく
今となっては笑い話だが、知人のMはかなり前に元スポーツ選手として女優デビューした。彼女のことを古くから知っていた私は「あれ?運動得意だったっけ?」と妙な違和感を覚える。そう、実は知人のMはスポーツに関して相当な素人で、選手の「せ」の字から遥かに遠い存在だったのだ!
「なぜ無理がありすぎる設定が決まったんだ……?」と思い尋ねると、彼女は当時ジムに通っていたらしい。そこそこ筋肉がつき、体つきがアスリートらしいという理由だけで元選手の肩書きを背負うことになったそうだ。
ビデオでは必ずイメージシーンのカットを挿入するのがお決まりだが、案の定素人感満載の映像が撮れてしまい、Mは現場から消えたい気持ちに襲われたと語った。今の時代では極めてレアなケースだが、一昔前は明らかな「ヤラセ」が当たり前に横行していたのである。
◆素人さんナンパ、ガチ素人を起用していた時代も
男性なら誰もが一度は観たことのある(?)ナンパものと呼ばれる大人気企画。ナンパのシチュエーションは繁華街、ビーチと多岐にわたるが、流れはだいたいどこのメーカーも一緒。安心感のあるお決まり展開で、定番企画の1つとして定着している。
わかる人はわかると思うが、素人さんナンパと言いつつ見覚えのある顔が……なんてこともよくあること。近頃はセクシー業界に対する取り締まりも厳しくなっているため、「ヤラセ」を選ばざるを得なくなっているのが現実。
◆女優時代は“さまざまな素人”に変身した
私も現役時代はナンパされ、街頭インタビューだモニターだと巧妙な話術に騙される女子大生やOLに変身したものだ。ただ、ガチ素人さんを起用していた時代もあったらしい。業界がまだイケイケな頃は“何でもアリ状態”だったため、制作サイドは本気のリアルナンパに挑んでいたということ。
今考えると恐ろしい話だが、ユーザーはリアルっぽさと過激さを求めているので、かつてのやり方に戻してほしいと嘆く層も多い。もちろん叶わぬ願いだが「ヤラセ」が納得いかないと感じるタイプなら、そう所望するのはしょうがないのかもしれない。
◆作品はファンタジー、夢の国に黒い感情は不要だ!
「ヤラセ」という言い方は良くない印象が強く、大抵は悪口に使われるフレーズだ。しかしよく考えてみてほしい。セクシー業界も、テレビも、エンタメは画面の向こう側に存在する夢の国。某テーマパークに行くときも頭をクリアにして楽しむだろう。それと同じで、夢の世界を存分に味わうのに黒い感情は要らないのだ。(テーマパークと一緒にするなと激しく怒られそうだが……)
今後は「ヤラセ」ではなく「みんなを楽しませるための演出」と捉えるのはいかがだろう。視点を変えることでいくらでも見え方が変わる。斜に構えていると面白いはずのものも一気につまらなくなるため、一度考えをフラットにしてみると受け入れキャパが広がるかもしれない。
文/たかなし亜妖
【たかなし亜妖】
元セクシー女優のフリーライター。2016年に女優デビュー後、2018年半ばに引退。ソーシャルゲームのシナリオライターを経て、フリーランスへと独立。WEBコラムから作品レビュー、同人作品やセクシービデオの脚本などあらゆる方面で活躍中。