いわゆる“裏金議員”に新たな疑惑が浮上しました。自民党の田畑衆院議員が党員ではない人たちを無断で「党員登録」していた疑いが、JNNが独自に入手した電話の音声記録で判明し、会見で本人が釈明しました。
【写真を見る】【独自】音声入手…“裏金議員”に新疑惑 田畑衆院議員が無断で自民党員登録か 企業献金を党費に? 会見で音声認めるも「私は関与せず」【news23】
“裏金議員”に新疑惑 無断で自民党員登録か富山市に住む男性が問い合わせたのは自民党県連。送られてきたのは、9月の総裁選の投票用紙でした。
富山市在住の男性
「名前の全く違うはがきが何枚もきているんですよ。僕、党員でもなんでもないんですけど」
富山県では自民党員になった覚えがない人物や実在しない家族に宛てて、総裁選の投票用紙が送られていたのです。分かっているだけで77枚。そのうち6枚が男性に届きました。
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自民党員になった覚えがない男性
「何でこんなたくさん(投票用紙が)あるのかなっていうのをまず初めに思って、それで名前を確認していったら、自分のじゃないな。『これ誰の?』というのがたくさんあって」
富山で何が起きていたのか。18日、会見を開いたのは自民党の田畑裕明議員です。収支報告書の不記載が問題となり、信頼回復を訴え、先の衆院選で5選を果たしました。
自民党 田畑裕明 衆院議員
「不適切な党員登録であろう方々の人数は、約100名前後ではなかろうかと思われる。なお、本件の報道に関しまして一部私が関与していた報道があるが、私の見解を申し述べるが、私は関与しておりません」
登録されている自民党員727人のうち、“不適切な党員登録”は100人前後いると公表。しかし、自らの関与については否定しました。
支援者との音声入手 企業献金を党費に?この問題はJNNが入手した田畑議員の支援者が、10月2日に田畑議員と電話で交わしたとされる音声で明らかになりました。
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田畑議員
「会社からさ、献金いただいとんねか。(企業名)さんから響裕会(田畑氏の後援会)」
支援者
「うんうん」
田畑議員
「そのお金を党費にもあてさせてもらっとった。(従業員の)皆さん方は1人1人お金は出しとらんがだけど、こちらは会社からいただいたのは、党費として預かったという解釈で党費を納めとったわけ」
それによりますと、田畑議員は支援者が勤める企業から田畑議員の政治団体への『献金』を、党員登録の費用に充てていたということです。
しかも、その登録した自民党員というのは田畑議員が企業の従業員名簿をもとに、本人に無断で登録。1人あたり年4000円(家族党員は2000円)の党費にあてていたといいます。
音声データの声の主について問われると…
――田畑さんご本人の音声データで間違いない?
自民党 田畑裕明 衆院議員
「音声テープは、私自身の声だと認識している」
そもそも企業献金は政治活動にあてるためにあり、党員登録の費用にあてるのは不適切です。自らの電話の会話だと認めた上で、こう釈明しました。
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自民党 田畑裕明 衆院議員
「私の会話の発言の意図について、まずこれ10月初旬の会話だと報道から承知をしているが、私が憶測による見立てを話したもの」
――会社の従業員名簿をもとに、本人に無断で党員登録を行った。これは事実か?
自民党 田畑裕明 衆院議員
「衆議院選挙があった。諸々調査については、まだ途上。これきちっと調べてご回答する」
――企業献金を党費にあてていた旨の発言があるが事実?
自民党 田畑裕明 衆院議員
「このことについても、しっかりと調査をして回答したい」
――従業員名簿の提供をうけた支援者との電話のやり取りなので、憶測による見立て(で言った)と言うのはそもそも成り立たない、無理があるのでは?
自民党 田畑裕明 衆院議員
「ご指摘はご指摘だというふうに受け止めさせていただきたい」
さらに、無断登録に加え“実在しない架空の人物”までも党員に登録していた疑いがあることが分かりました。
架空の人物を党員登録の疑い 自民党の獲得党員数目標が問題か田畑議員
「あとは多分架空に近いと思う。ゆみこ、ゆういち、のぶお、のぶこ、ようこって書いてあるんだけど、そこは生年月日とか書いてないから、おそらく架空の方なんだと思うんだよね」
支援者
「まだなんかいっぱいおんがじゃないが?」
田畑議員
「いっぱいおる、いっぱいおる。もちろんいっぱいおるから、きりないから」
この問題について田畑議員は、「調査中」として明確に答えませんでした。
党勢拡大を目指す自民党では、所属する国会議員1人につき獲得する党員数の目標が掲げられています。もし、不足した場合は、党員1人につき2000円が徴収されたこともありました。これが問題の背景にあったのでしょうか。
――ご自身は、目標のことは気にしていた?
自民党 田畑裕明 衆院議員
「事務所として大きな1つの活動だとは思うが、当然、チームとして取り組んでいたとご認識いただければと思う」
責任の取り方については…
自民党 田畑裕明 衆院議員
「いま選挙で選んでいただいたので、しっかり職務にまい進をする、そのような気持ちでいっぱい」
議員辞職については否定。調査結果は可及的速やかに明らかにするということです。
「自民党は所属議員に圧力」企業献金のあり方に影響がある可能性小川彩佳キャスター:
かなり生々しい、決定的とも思える音声データが出てきました。
TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
自民党の中ではこうした“架空の党員づくり”があるのではないかとかなり前から言われていましたが、今回物証が出てきたというのは非常に大きな意味があると思います。明らかに企業献金を違法な形で使っていたということです。
11月から12月にかけて政治資金規正法の再改正について与野党の話し合いが始まります。その中で自民党は企業献金は残すべきだと言っているが、野党の多くは企業献金廃止すべきだということで真っ向から対立しているので、企業献金のあり方そのものについても非常に大きな影響を与えていくのではないかと思います。
小川キャスター:
こうしたことが起きてしまう背景には何があるとお考えですか?
ジャーナリスト 鈴木エイトさん:
自民党は年間の党員ノルマが達成できない議員に対して、比例の重複をしない方針や、党員の獲得上位10名を発表などをしている。そういうことで所属議員に対して圧力をかけている。そういうのが背景にあるのではないかと思う。やはり、こういう裏手口を使ってまで自民党員をかさ増ししていた今回の事案は、氷山の一角ではないかと思ってしまいます。
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<プロフィール>
星浩さん
TBSスペシャルコメンテーター
1955年生まれ 福島県出身 政治記者歴30年
鈴木エイトさん
ジャーナリスト 兵庫県知事選を現地で取材
旧統一教会問題を20年以上追及