クラシエ薬品は2024年12月10日、今年最も注目された漢方薬を発表する「KAMPO OF THE YEAR 2024」を開催しました。
■クラシエ薬品が今年の漢方トレンドを発表
クラシエ薬品は、ドラッグストア・薬局向けの漢方薬ではシェアNo.1を誇る医薬品メーカーです。「かぜのひきはじめ 頭痛、肩こりに」など、症状が大きく書かれたパッケージを見たことがある方も多いのではないでしょうか。
そんなクラシエ薬品では、1年間の漢方薬市場の動向から私たちが抱える不調を読み解き、独自の視点で漢方のトレンドを予測することを目的に、2022年より「KAMPO OF THE YEAR」を年末に合わせて実施しています。
2024年は猛暑や寒暖差などの異常気象、手足口病やマイコプラズマ肺炎といった感染症の流行など環境の変化も多くありましたが、漢方薬にどんな影響を与えたのでしょうか?
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■今年最も売れた&注目を集めた漢方薬は?
クラシエ株式会社 薬品カンパニーヘルスケア事業部マーケティング部課長 砂橋久瑠実さんは、2023年11月〜2024年10月の期間に売れた漢方薬は第1位が「葛根湯(かっこんとう)」、第2位が「防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)」、第3位が「八味地黄丸(はちみじおうがん)」という結果になったと発表しました。
砂橋さんはこの結果について「かぜのひきはじめに用いられる葛根湯と肥満症に用いられる防風通聖散は長らく不動の1位、2位となっていますが、夜間尿や頻尿に用いられる3位の八味地黄丸は昨年4位だったため、さらに需要が拡大している様子がうかがえます」と語りました。
次に、2023年11月〜2024年10月の期間に伸び率が高かった(売上が伸びた)漢方薬では、痰が切れづらい激しいせきに対応する「麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)」が1位という結果になりました。
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2位にはのど関連の処方である「響声破笛丸(きょうせいはてきがん)」、3位・4位には「五虎湯(ごことう)」「桔梗湯(ききょうとう)」が入り、上位は全て“咳・のど”に関連する処方がランクインしています。
砂橋さんによると、咳・のどに関する処方が伸びた要因の一つに、8年ぶりにみられたマイコプラズマ肺炎の大流行や、2024年度上半期のインフルエンザの流行などが考えられるとのこと。これらの感染症では、のどの痛みや咳の症状を伴うことが多く、漢方薬だけでなく西洋薬も含めて需要が増えたことが予想されるそうです。
■気象病や二日酔いへの対処として「五苓散」の需要が増加
2024年の注目すべきトレンドの一つとして、砂橋さんは「五苓散(ごれいさん)」をあげました。「五苓散」とは、全身の水分バランスの乱れを整え、余分な水分を排出することで頭痛やむくみを改善する漢方薬です。五苓散の販売数は直近5年間で69%UPと急速に成長しているのだそう。
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この要因の一つには、新型コロナウイルスが5類に移行されたことで、それまで受診を控えていた人々が来院して頭痛や急性胃腸炎の患者数が増加し、それに伴って五苓散の処方増加がみられたという医療用の処方の増加があります。
また、一般用の販売では、気象病や天気頭痛など、近年になって顕在化されてきた症状とともに、頭痛やめまいへの対処として五苓散の使用が広がったことが販売数の伸びに関係しているそうです。さらに、外食需要の増加に伴う二日酔いや、昨今関心の高まるむくみ対策まで、五苓散が幅広く使用されていることも要因のようです。
実際にSNS上では、2023年から2024年にかけて五苓散に関連する投稿数は、昨年対比で269%と大幅に増加しています。また五苓散と合わせて投稿されるキーワードを比較してみると、2023年は“気象病”対策のワードが多かったのに対し、今年は“二日酔い”対策へと変化している傾向もみられました。
さらに、性別・年代別の漢方薬の購入商品のランキングを比較したところ、男女ともに20〜40代で五苓散が上位に入っていました。SNS上での五苓散の拡散と効能に対する認知の拡大が、20〜40代の購買に少なくない影響を及ぼした可能性が考えられます。
■2025年以降は「セルフケア」の定着がポイントに
続いて砂橋さんは2025年以降のトレンド予測として、「超高齢化社会の到来や健康寿命の延伸といった社会の変化に伴い、2025年以降は生活者の予防医学や健康寿命への意識がより一層高まることが予想されます。自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てする『セルフケア』の定着が進んでいくと考えられます」と語りました。
そこでクラシエ薬品では、「漢方セラピー」公式LINEアカウントや、自分に合うおすすめの漢方処方が分かるサービス「あすみてasu-mite」、体質診断コンテンツ「からだかがみ」などのサービスで私たちの漢方によるセルフケアをサポートするほか、それぞれの不調に寄りそった漢方を選べるよう、幅広いラインナップを展開していくそうです。
■漢方も自分の体質に合ったものを取り入れることが重要
今回の発表会では、「東洋医学の視点でみる『今日からできる養生セルフケア』」と題して、国際中医専門員・漢方薬膳コンサルタントの多田有紀さんとクラシエ薬品株式会社 ヘルスケア営業本部 ヘルスケア学術部 課長の山本政春さんによるトークセッションが行われました。
まず、東洋医学の視点で見るセルフケアとは何かという問いに、クラシエ薬品の山本さんは「セルフケアと近しい言葉として、東洋医学では『養生(ようじょう)』というものがあります。体に不調を感じ始めた状態である『未病(みびょう)』の段階でいかに早く気づいて食事や運動、睡眠といった生活習慣の見直しを行うなど、不調を改善していくことが大事になってきます」と語りました。
さらに、漢方薬の販売数でも1位となっていた「葛根湯(かっこんとう)」について、「7種類の生薬で構成されているのですが、意外と馴染みのあるものが含まれているんです。例えば『葛根(かっこん)』は葛湯などでも知られるくずの根のことですし、『桂皮』はシナモン、『生姜(しょうきょう)』はしょうが、『大棗(たいそう)』はなつめのことなんです。風邪の引きはじめに用いられることが多いですが、それ以外にも日常生活でからだをあたためることが養生、つまりセルフケアにつながってきます」と教えてくれました。
漢方薬以外の養生として多田さんは「養生は睡眠や食事、運動のことを指しますが、特に重視しているのが食事とされており、そのことを『食養生(しょくようじょう)』といいます。食養生と聞くと難しそうに思う方もいるかもしれませんが、体をあたためるために生姜を食事に取り入れたり、むくみを取るために小豆や黒豆を食べたりするなど、意外とすでにみなさんがやっていることも多いんですよ」と語りました。
また、砂橋さんの発表でセルフケアの重要性が発表されていたことを受け、山本さんは「同じ頭痛の症状であっても、ストレスや血の巡り、気象の変動など、何が原因で頭痛が起こっているかによって飲むべき漢方は変わってくるので、日ごろから自分の体質を知っておくことが重要です」と強調しました。
これを受けて多田さんは、食養生の観点から「生姜が体にいいからといって大量に食べすぎてしまうと、もちろん良い効果があらわれる人もいますが、逆に肌が乾燥してしまう人もいます。まずは自分の体質を知ること、そしてその日の体調に合わせて選ぶことが大切です」と語りました。
■自分で自分のことを知り、日ごろからケアしていく
名前が難しく、何に効くのか一目見ただけでは分かりづらい漢方薬。私も勝手にハードル感じてしまい今まで取り入れていませんでしたが、クラシエ薬品の漢方薬はパッケージに症状が大きく書いてあることもあり、手に取りやすいことを知りました。そして、自分の体質を知っておくことで、より適した漢方薬を取り入れることができるというのも、今回の発表会の大きな学びとなりました。
ちなみに、体質診断コンテンツ「からだかがみ」によると、私は気滞タイプ。「自律神経系の緊張やコントロールができず不安定な傾向にあります」という特徴に、見事に当てはまっている気がします……!
「からだかがみ」では食生活やライフスタイルについても解説してもらえたので、まずは自分の体のことを自分で理解して、日常生活で取り入れられるセルフケアをしていきたいと思います。みなさんもまずは「からだかがみ」で体質診断をしてみてはいかがでしょうか?
■コンテンツ概要
体質診断コンテンツ「からだかがみ」
URL:https://www.kracie.co.jp/ph/k-therapy/karadakagami/
(文:松岡紘子/マイナビウーマン編集部)
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