東京電力福島第1原発事故の後、全国で急速に普及した太陽光パネルがこの先、一斉に耐用年数を迎える。その廃棄量は2040年代前半に最大で年間約50万トンに達する見込みで、このままでは産業廃棄物処理場の受け入れに支障が生じかねない。政府はリサイクル制度の創設を目指し、年明けの通常国会に関連法案を提出する方針だが、課題も残る。
◇製造業者が費用負担
パネルの耐用年数は20〜30年程度。今はまだ10万トンに満たない年間廃棄量は30年代半ばから急増し、40年までに30万トンを超える見通しだ。現在はリサイクルが制度化されておらず、古くなったパネルの大半は産業廃棄物として埋め立て処分されている。ピーク時の廃棄量50万トンは産廃すべての最終処分量の約5%に相当し、政府はリサイクルの義務化が必要だと判断した。
経済産業省と環境省は今年9月、制度創設に向けた議論を開始。今月初めに、焦点だった費用負担について、リサイクル費用はパネルの製造・輸入販売業者が、解体費用は発電設備の所有者がそれぞれ支払う案を公表した。住宅用の解体費用は対象外。集めた費用は第三者機関が管理する。
リサイクル費用は販売時に、解体費用は発電開始前に徴収する。廃棄の時点で徴収すれば、パネルが耐用年数を迎える前に事業者が廃業した場合、費用が不足するためだ。解体・リサイクルが完了した時点で、第三者機関から設備所有者を通じ、解体業者や一定の処理能力を持つと国が認定したリサイクル事業者に支払われる。
◇放置・不法投棄が課題
太陽光パネルはガラスやアルミフレームなどでできている。パネル重量の6割を占めるガラスは、道路の素材や断熱材に使われるガラス繊維「グラスウール」などに再利用される。
義務化について、東京電力ホールディングス子会社でパネルのリサイクルを手掛ける東京パワーテクノロジー(東京)の担当者は「埋め立てられていたものが回ってくるのはありがたい」と歓迎する。ただ、制度化されても廃棄パネルが安定供給されるとは限らない点がビジネス上の難点だ。
パネルの耐用年数が過ぎているのに事業者が撤去に応じない懸念も残る。パネルのガラス面に破損がある場合、ヒ素や鉛など有害物質の流出や、漏電が原因の火災を引き起こす恐れもある。
パネルの放置や不法投棄を防ぐには、政府と自治体が連携して太陽光発電設備の設置状況を把握したり、所有者に解体・撤去を求めたりする仕組みが必要になる。政府はこうした課題の解決策を検討し、年明けに制度の最終案をまとめる。