モータースポーツの「歴史」に焦点を当てる老舗レース雑誌『Racing on』と、モータースポーツの「今」を切り取るオートスポーツwebがコラボしてお届けするweb版『Racing on』では、記憶に残る数々の名レーシングカー、ドライバーなどを紹介していきます。今回のテーマは1994年の全日本GT選手権GT2クラスを戦った『ポルシェ911(964型)』です。
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スーパーGTが全日本GT選手権(JGTC)時代を経て、シリーズ本格スタートから30周年を迎えた2024年。この記念すべき年のGT300クラスにおいてチャンピオンに輝いたのは『VENTENY Lamborghini GT3』だった。
JLOCは、シリーズがスタートした1994年よりGT1クラス(現・GT500クラス)からGTに参戦し続けており、2006年にGT300クラスへ完全転向してからも、これまでタイトルを手にすることはできていなかった。ゆえに参戦30年、31シーズン目にして手にした初戴冠は大きな話題にもなった。
では、現在のGT300にあたる30年前のGT2クラスにおいて、GT初年度にチャンピオンとなったのはどんなマシンだったのか。それは、KORG KEGANIポルシェ、そう今回紹介する『ポルシェ911(964型)』だ。
1994年のJGTC GT2クラスに参戦したのはスポット参戦車も含めるとわずか10台だった。2024年には27台のエントリーを誇るGT300クラスの状況と比較すると寂しい状況である。ただ、そんななかでも現在のような日本車vs外国車という構図はすでに展開されていた。
当時の日本車勢は、JSS(ジャパン・スーパースポーツ・セダンレース)というエアロパーツ装着も規定に含められていた改造車ツーリングカーレースを戦っていたHR31型ニッサン・スカイラインやFC3S型マツダ・サバンナRX-7が主な参戦車種であった。
その一方、外国車勢の大多数を占めたのが、ポルシェ911(964型)だった。1994年のJGTCへ参戦したポルシェ911は、ポルシェ・カレラカップという現在も続くポルシェ911のワンメイクレース用のマシン、いわゆるカップカーと呼ばれる車両が転用されていた。
カップカーをJGTC仕様にするにあたっては、中距離戦向けに燃料タンク等の変更がなされただけで、その他はほぼそのまま。大きな改造を施さなくても当時はトップを争えるほどのポテンシャルを発揮していたため、プライベーターにとっては比較的コストを抑えられる魅力的なマシンだったのだ。
先述した初代GT2チャンピオンカーとなったKORG KEGANIポルシェもそんなカップカーをベースに最低限の改造をして、JGTCへと挑んだ1台で、N1耐久レース(現・スーパー耐久)を三菱車で戦うなどしていたケガニレーシングが走らせたカップカーをJGTC仕様にしたマシンであった。
KORG KEGANIポルシェは、富士スピードウェイで開催された開幕戦からシリーズへと参戦すると、いきなりデビューウインに輝いた。続く仙台ハイランドでの第2戦でも優勝。その後もコンスタントにポイントを重ねていき、最終的にドライバー(小幡栄)&チームチャンピオンを獲得したのだった。
プライベーターに魅力的な車両としてJGTC初年度に参入し、タイトルをさらったポルシェ911。その後もポルシェはかたちを変えながらも、GT2/GT300クラスにおいて、しばらくの間、GTを戦うプライベーター御用達マシンであり続けるのである。