昨今、注目が集まる50代転職。その活況から、ただ会社にしがみついていただけのスキルゼロ、コネゼロの負け組社員が参戦。この大多数の50代くすぶり社員でも転職で年収アップはできるのだろうか……。
◆人事ジャーナリストが語る“50代転職活況”の裏側とは!?
かつて転職市場では、「35歳限界説」がささやかれていたが、近年その状況は大きく様変わりした。実際に厚生労働省『令和3年雇用動向調査結果の概況』を見ると、40〜50代でも転職を機に年収アップした人の割合は約3割と少なくない。
ミドル世代向けの転職を後押しする求人サイトは、どこも活況の様相を呈しているが、「このデータを妄信するのは危険」と話すのは、人事ジャーナリストの溝上憲文氏だ。
「実は、求人サイトやエージェント経由の転職は全体の3割にすぎず、ハローワークや縁故などその他経由が7割。さらに大手の某転職サイトは35歳以上の登録者が6割以上を占める一方で、企業側が提示する求人は8割が実質35歳以下と大きなギャップがあるのです。
しかし、’19年の雇用対策法の改正で求人の年齢制限が撤廃され、年齢での足切りができなくなったことで、求人サイトや転職エージェントはあたかも中高年を積極採用しているかのように謳っていることも多いです」
実際、期待感をもって求人サイトに登録しても非常に厳しい闘いを強いられるという。
◆年齢とともに急速に減少するミドル求人
「大手の求人サイトは40歳を超えると、5歳ごとに求人数が半減していきます。それだけ狭き門。さらに中高年の転職は二極化していて、難関資格や専門スキルを持つ一部のハイクラス転職希望者はより高収入な職を得る一方で、営業や事務など需要の多い職種は、希望者の競争が激化するうえに年収が激減することも珍しくない」
ミドル転職市場の活況は幻想にすぎず、実際に待ち受けるのはいばらの道と言っていいだろう。
「中高年は、過去の実績に対する自信もあるので、自己評価の高い人が多いんです。ただ、いくら能力があったとしても変なプライドを持っていると、新たな職場での融和が図れないためまず合格につながらない。厳しい現実を目の当たりにして心が折れてしまい、結果、転職を諦める人も少なくないですね」
【人事ジャーナリスト 溝上憲文氏】
1958年生まれ。新聞や雑誌で人事や雇用、賃金などをテーマに執筆。著書に『人事評価の裏ルール』(プレジデント社)など
取材・文/週刊SPA!編集部
―[負け組50代転職の極意]―