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一昨年の2023年頃から、ゲーム機の新機種を発売するという観測が広まっていた任天堂は今年1月、「Nintendo Switch(ニンテンドースイッチ)」の後継機「スイッチ2」を年内に発売すると発表。17年に発売されたスイッチは発売からしばらくの間、供給数量が限られたことで転売が広がり問題となったが、任天堂の古川俊太郎社長は4日、25年3月期第3四半期決算説明会のなかで転売対策について「これまでの経験を踏まえ、取れる対策を取る」と説明。これを受けインターネット上では「任天堂がスイッチ2で過去最大規模の転売対策を取る」として話題を呼んでいる。ゲーム機以外でも転売はしばしば問題となるが、転売を完全になくす方策というのは、あるものなのか。また、「転売=悪」というのは社会共通の認識となっているが、そもそも転売は取り締まるべき行為なのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。
任天堂が「ニンテンドーDS」「Wii」に続き17年に発売したスイッチは、世界累計販売台数が1億2000万台を超え、「ポケットモンスター」「スプラトゥーン」「マリオカート」「ゼルダの伝説」「あつまれ どうぶつの森」「リングフィット アドベンチャー」など挙げればきりがないほど多くの人気タイトルを有するゲーム機。それゆえに、どのような仕様になるのかという点に世間の関心が寄せられるが、詳細仕様や価格は4月2日に配信予定の公式動画チャンネル「ニンテンドーダイレクト」内で発表されるという。
仕様や価格に加えて注目されているのが転売対策だ。だが、転売目的の購入者と純粋に自分でプレイして楽しむことが目的で購入する者を判別することは困難なため、転売対策といっても限界があるといえる。そうしたなか、より有効な対策というのは、あるものなのか。経済評論家で百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏はいう。
「任天堂とソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)の2強の場合、新しいゲーム機の発売直後の需要は非常に大きく、これまでも常に供給不足となっていました。スイッチ2の場合、販売台数はおそらく発売後1年で全世界で累計2000万台に到達すると見込まれます。発売直後は月300万台ペースで供給しなければ、本当の意味での需要には追い付けないでしょう。一方で発売時に供給できる在庫はこれまでの新発売の場合、月200万台程度しか用意できませんでした。そのため発売後の数カ月は常に在庫不足の状況が発生してきました。
スイッチやPlayStation 5(PS5)などの発売時には、このような欲しいけれども在庫が手に入らないという消費者の不満を穴埋めするための必要悪として転売が横行しました。今回、任天堂は数百万台の在庫を確保したうえで新発売を迎えることを表明していますが、それでも品不足が発生するでしょう。需要がおそらく1000万台レベルで存在するからです。
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では最初から1000万台の在庫を用意すればいいじゃないかというと、仮に新ハードが失敗した場合に大きな損失をかかえることになります。リスクがある限り、その方法はとれません。
では人気のソフトウェアの発売を遅らせて、最初のうちは遊びたいゲームがあまり供給されない状態にしたらどうなるかというと、これもハードの人気を下げてしまいます。新ハードを成功させるためには発売当初から人気ソフトをぶつける必要があります。そうなると結局のところ、発売当初にある程度品薄になるのは仕方のない経済現象ということになります。任天堂による転売撲滅は非常に難しいと考えます」
では、そもそも転売を防止する必要はあるのか。
「新型ゲーム機は本体を安く売ってソフトで儲けるビジネスモデルです。安いものが品薄になれば需給バランスが崩れるのは当然です。経済学的には価格が上がらないと均衡しません。その視点でみれば、転売は市場原理に非常に忠実に起きている経済現象だといえます。もし転売が悪であり完全に撲滅させたいと考えるのであれば、任天堂が発売時期によって価格を変えるという手があります。わかりやすくいえば、たとえば発売直後の3カ月間はハードの価格を1万円高くするのです。3カ月待てば普通の価格で買えることがわかれば、それを待つ消費者と、高くてもいいから早く買う消費者に需要が分散して、転売もなくなるでしょう。
それを任天堂がやらないから、結果として転売屋が需給のギャップを埋める役割として登場することになります。経済学的な視点からは、必ずしも転売=悪とはいい切れないのです」(鈴木氏)
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(文=Business Journal編集部、協力=鈴木貴博/百年コンサルティング代表取締役)
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