昨年8月に設立された「おがつ100年会議」で雄勝地区の将来を議論する住民ら=2024年12月16日、宮城県石巻市 東日本大震災発生後、被災地は人口減少に向き合ってきた。発生から間もなく14年。若年層や女性の視点を重視した取り組みが進められているが、専門家は「平時から被災後を検討することが重要だ」と語る。
総務省によると、岩手、宮城、福島各県の20〜39歳の人口は、2010〜24年の間に約2〜3割減少した。民間の有識者らでつくる「人口戦略会議」が昨年発表した分析では、20〜50年にかけて沿岸部の13市町村で20〜30代の女性が60%以上減少するという試算もある。
宮城県石巻市の雄勝地区では、震災直前の11年2月末の人口は約4300人だったが、現在は4分の1まで減少した。津波に浸水したエリアが災害危険区域に指定され、同エリア内の住民が現地での住宅再建ができなくなったことが影響した。同地区には平地が少なく、山を削った宅地造成に時間がかかったことも大きな要因とみられる。同市雄勝総合支所の担当者は「ここまで減るのは予想外だった」とこぼす。
そうした状況の中、若者の視点でまちづくりに取り組もうと昨年8月、30〜60代の住民が「おがつ100年会議」を立ち上げた。会長の高橋真由美さん(63)は「震災前からあった人口減は仕方ない。若者の意見で雄勝を盛り上げていければ」と子育て支援などに力を入れている。
震災後に人口が6万人を割った同県気仙沼市では、進学などで市外に出た若い女性のUターン率の低さに着目。市内の経営者らに向けたセミナーを開催し、職場のジェンダーギャップ解消などに取り組んでいる。市から委託を受けるWill Lab代表取締役の小安美和さんは「少子化は止まらないが、誰もがありたい姿で働ける地域を増やしたい」と意気込む。
23年に岩手県沿岸自治体で唯一、転入者が転出者を上回る「社会増」となった野田村では、震災後に復興支援で訪れた人々とのつながりを「準村民」制度という形で見える化するなど試行錯誤を続けてきた。子育て環境の整備にも注力し、担当者は「人とのつながりは大きな力。人口増を目指すのではなく、継続することで何かが生まれていく」と話す。
復興計画に詳しい東北大の姥浦道生教授は「被災直後は転出者が転入者を上回る『社会減』が中心だったが、現在は高齢化の進展など『自然減』に変わってきた」と指摘。あらかじめ被災後の復興の在り方や手順などを検討する「事前復興」に取り組むことで過度な社会減は防げるとし、「地域課題を議論する延長線上で、平時から被災後の検討をすることが重要だ」と話した。