【プロ野球】ヤクルトの未来の正捕手の目指す5人の若手 「ポスト・中村悠平」に名乗り

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2025年03月14日 07:20  webスポルティーバ

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ヤクルト正捕手争いサバイバル(後編)

前編:ヤクルト捕手陣の勢力図は変わるか?>>

 今シーズンのヤクルト捕手陣は、プロ17年目の中村悠平が中心にどっしりと座り、その背中を経験豊富な松本直樹、古賀優大、内山壮真が追い、さらに彼らを下から押し上げるように5人の若手捕手が控えている。それぞれ個性豊かで、チームへの貢献が大いに期待されている。

 中村は今年のキャッチャー陣について、「みんなでしのぎを削りながら、切磋琢磨していきたいですね」と答えた。

「誰が試合に出ても勝たないといけない。チームを勝利に導くためにどういうリード、どういう打撃をするのか。自分にしかできないこともあるし、それを生かさないといけない。それぞれタイプがあるので、各々の特長をしっかり出せるようにしなければいけないと思っています」

 下からの突き上げについては、「大きな壁でありたいというのはもちろんあります」と言って続けた。

「まだまだ若手には負けないぞという気持ちですし、そのなかで質問されたらアドバイスはします。僕から声をかけることもあるでしょうけど、基本的には自分で考えて課題に取り組み、試合に臨むことがすごく大事だと思っています」

【中村悠平という大きな壁】

 2月の春季キャンプ、若手捕手たちは中村という大きな壁に立ち向かい、自身の未来像を描きながら鍛錬を積んでいた。

 新人の矢野泰二郎(22歳)は、ドラフト5位で四国アイランドリーグの愛媛から入団。新人合同自主トレでのタイム走などは常に上位で、一軍の沖縄・浦添キャンプに抜擢。朝早くから練習のための準備をする姿が印象的だった。だが、下半身のコンディション不良で一軍キャンプ完走はならなかった。

「ケガをしないことが一番だったのですが、体力面もそうですし、何かが劣っていたのだと思います。必要以上に力が入ってしまいましたし、やる時はやって、抜く時は抜くことが全然できてなかった。そこもケガにつながったのかなと。今は切り替えて、次またケガをしないように練習に取り組んでいきたいです。やっぱりケガをしない選手が一軍にずっといられると思うので」

 矢野にとっては苦い経験になったが、「一軍の選手と練習できてほんとによかったです」と前を向いた。

「先輩方を見ていると、スピード感がすごいですよね。スローイングもそうですけど、声かけとか、とっさの判断も早い。自分にとって目指す目標ができました。1試合でも多くマスクを被り、一軍でずっと試合に出られるキャッチャーになりたい」

 キャンプでは、これまでYouTubeの動画で勉強していたという古田敦也臨時コーチから直接指導を受けるなど、大きな財産となった。

 橋本星哉(24歳)は、キャッチャー陣のなかで唯一の左打者である。昨年は二軍で103試合に出場し、打率.260、7本塁打、42打点、8盗塁をマーク。シーズン最終戦には、初の一軍出場も果たした。広角に強い打球を飛ばせるのが魅力で、スピードも持ち合わせている。

「中村さんが経験豊富で突き抜けた存在なので、そこをみんなで脅かしていくことができれば、チームはもっと上にいけるんじゃないかと思っています。そのなかでバッティングは一番でいたいですし、一軍で100試合、100安打、ホームラン10本を目標にしています」

 春季キャンプでは、昨年秋から取り組んでいたサードをメインに練習し、外野ノックも受けた。

「今までのようにガッツリとキャッチャーではありませんが、守れる準備はしています。打撃を期待されているので、そこをしっかり頑張っていきたい。イメージとしては、広島の坂倉将吾選手のような......。坂倉選手は外野はやっていないので、そういう意味で、新しいタイプの選手になれたらと思っています」

【二軍キャンプで鍛錬の日々】

 二軍の宮崎・西都キャンプ。将来の正捕手候補として期待されているのが、2年目の鈴木叶(18歳)だ。昨年の新人合同自主トレでは、打撃練習でバックスクリーン最上段に直撃する打球を2本放ち、一軍デビューとなった6月12日のソフトバンク戦では4打数2安打2打点の活躍を見せた。

 その打撃に注目が集まっていたが、衣川篤史二軍バッテリーコーチは「鈴木は当たれば飛びますが、どちらかと言えば守備でポジションを奪っていくタイプ」と言う。

 鈴木自身も「守備でアピールできる選手になりたいですし、そこで一軍に出られるようにアピールしたい」と語る。キャンプでは室内練習場で、ピッチングマシンを相手にキャッチング練習を繰り返した。

「自主トレから守備を課題としてやってきました。キャッチング、ブロッキング、ステップ、インサイドワーク......。守備でもっと頑張りたいですし、打撃はそのあとにもっと集中してできたらと思っています」

 昨シーズン、鈴木は2試合ながら一軍を経験した。

「たくさんのお客さんの前で試合をするのはすごく楽しかったですし、ああいうピリピリした雰囲気のなかで毎試合マスクを被れたらなと。今年は一軍で10試合以上に出たいですし、そのためにはシーズンを通してケガをしないようにしていきたいです」

 新人の松本龍之介(20歳)は育成ドラフト4位で、独立リーグの堺シュライクスから入団。キャッチャーを始めてまだ2年だが、高いポテンシャルを秘めている。

「キャンプでは新人らしく、怒られ、学びながらやってきました。たとえば、投内連係では、二死ならここに投げる、一死ならここ、無死ならこういうかけ声とか、当たり前のことがまだまだだなと思い知らされました。もちろん1年目から花を咲かすのが目標ですけど、まずは体づくりをしたいという気持ちです」

 支配下登録をつかむには、ひとつ、またひとつと壁を乗り越える必要がある。

「中村さんは日本代表する捕手です。その方がトップにいるというのは、自分のなかでそこを目標に頑張っていける。肩は誰にも負けないと思っているので、あとはスピードを生かしたキャッチャーになれたらと思っています。捕ってからの早さ、送球の速さ、打撃だとヘッドスピードやスイングスピードの速さ。50メートル走の最速は6秒ジャストなので、それを生かせたら、自分の思ったプレーができるんじゃないかと。でも、まずは新人らしく当たり前のことをちゃんとする。そこを目標にやっていきたいです」

【二軍レギュラーから一軍昇格を目指す】

 中川拓真(22歳)は、昨年7月に火の国サラマンダーズから入団。スワローズの捕手陣に故障者が続出し、緊急的な補強だった。

「運は僕に向いていると思うので、誰よりも燃えたぎっています。(オリックスを戦力外後)独立リーグからまた支配下でNPBに戻ることはまずないですからね。このチャンスを生かさないでどうするんだと。2月のキャンプは、もうシーズンインくらいの気持ちで入りました」

 中川がアピールするのは「秋から取り組んでいる打球速度や飛ばす力はついてきました」と語るバッティングだ。

 しかし、前出の衣川コーチが「頑張っているけど、まだまだ課題が多い」と話すように、フリー打撃では高い弾道と飛距離にコーチ陣や観客席がどよめく一方で、バットを2本折る日もあった。

「打球速度はほかの選手よりも数値が高いので、ちょっと優越感はあります(笑)。でも、いくら速くてもボールが当たらないと意味がないんですよね。この前、池山(隆寛)監督にタイミングの取り方とか教えてもらったので、しっかり身につけたいです」

 中川がまず目指すのは「二軍でレギュラーになること」だ。

「そしてシーズン終盤に一軍昇格できたらいいなと思っています。ほかのキャッチャーにはないところを伸ばしていって、右の代打でも一軍ベンチに入れたらいい。そこからなんとかチャンスをもらって、いずれ中村さんを超えられるように頑張っていきたい。客観的に見て、今年がラストチャンス......やりきりたいです」

 前出の中村は、昨オフにチームと新たに3年契約。自身の通算1000本安打まであと「26」と迫って、今シーズンを迎えることになった。

「1000本安打はプロに入った頃には考えられない数字で、そこにようやく手が届きそうなところまできた。ここまでよく頑張ってこられたという感情と、これを通過点にしないといけないという、ふたりの自分がいます。節目の数字は励みになりますし、個人記録の積み重ねがチームの成績につながる部分もあると思います。まあ2000本安打はあれですけど(笑)。いずれにしてもこの節目の数字は、まだまだ通過点にしたいですね」

 今シーズン、どんな捕手陣でありたいかと聞くと、こんな答えが返ってきた。

「ヤクルトを相手にする時は、ピッチャーと対戦するんじゃなくて、キャッチャーと対戦するような。ほかのチームからそう思われるキャッチャー陣になっていきたい。個人的にはそう思っています」

 キャッチャー陣のポジション争いは、チームの勝利に直結していくはずだ。

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