写真はイメージです「人間は股関節から老いていく」
この事実、衝撃ですが思いあたるふしがあるはず。肌や髪はメイクでごまかせますが、股関節はどうにもなりません。
『すごい股関節 柔らかさ・なめらかさ・動かしやすさをつくる』(日経BP)は、健康や老化を股関節基準で考察した一冊。
著者はフィジカルトレーナーの第一人者、中野ジェームズ修一さんです。中野さんは多くのアスリートから支持を得て、2014年からは青山学院大学駅伝チームのフィジカル強化指導も担当。
◆その痛み、いつからですか?
40歳を過ぎた頃から、体のどこかが痛い、という日が増えていませんか。あるいは体のバランスを崩して転倒したり、よろけたり、謎のアザをつくっていませんか。
それ、股関節に原因があるのかもしれません。
股関節は大腿骨と骨盤から構成されており、胴体と両足をつなぐ体の中でもっとも大きな関節のひとつ。
骨頭と寛骨臼の表面は軟骨と呼ばれる組織で覆われていて、これにより衝撃を吸収し、摩擦を減らしています。普段は気に留めませんが、日々、なめらかな動きができるのは、すべて股関節のおかげなのです。
◆よろけて転倒、高齢者だけの話ではない
駅の階段で昇り降り、混雑のためによろけて転倒、あわやの惨事。ずっと座りっぱなしで立ち上がったら、バランスを崩して転倒、まさか私が?
この状況、高齢者だけが対象ではありません。特に女性は「体の構造上、股関節に負担がかかりやすい」のです。
注目すべきは「股関節を運動による使いすぎ」「長時間同じ姿勢で過ごすことによる使わなさすぎ」両方とも、違和感や不具合が生じるということ。
逆にいえば、無理に運動しなくても、日常的に正しい動作やストレッチをしていれば、股関節のケアは叶うのです。
本書によると「股関節の寿命(耐久年数)は70〜80年」。しかし股関節にトラブルを抱えている方は、50代〜60代、30代にも大勢いるというのですから、これはもう股関節ケアは必須といってもいいでしょう。
◆あなたの股関節、大丈夫?
あなたが今30代〜40代だとしても、痛みもなく、よろける不安もなくても、来年は保証できません。そもそも正しい股関節の状態を知らない、という方が大半ですよね。本書から、イスを使ってチェックできる方法を簡潔にまとめてみました。
★股関節が機能不全になっていないかチェック
・アセスメント(屈曲・伸展)※3回続ける
• イスの前に立ち、片方の足を後ろに大きく引く。腰を落とし、前の脚の膝を90度に曲げ、すねは床に対して垂直にする。
• 一気に立ち上がり、後ろに引いていた脚をまっすぐ前に出す。
• イスの座面に前に出した脚をのせる。
この単純ともいえるスリーステップで何がわかるかといいますと、
• 両脚を適正な角度で前後に開脚できる柔軟性があるかどうか。
• 股関節が伸展した状態から力を出せるかどうか。
• 股関節がしっかり屈曲できるかどうか。
一見簡単そうですが、挑戦する時は念のため、周囲の障害物に注意しましょう。
・アセスメント(回旋)※3回続ける
1. イスの前に立ち、片方の足を後ろに大きく引く。腰を落とし、前の脚の膝を90度に曲げ、すねは床に対して垂直にする。
2. 立ち上がりつつ、脚を付け根から回す。この時、体幹を意識する。
両方とも計3回ずつ、私もやってみました。ともになんとかクリアしましたが、右と左で難易度が変わったのです。これは日常生活でしみこんだ体の癖のせいでしょう。
また、体調によっても微妙にばらつきが生じる可能性もあります。「股関節の状態が悪くなるのは誰にでも起こりうる」と本書でも指摘しています。紹介したふたつのアセスメントを、股関節のコンディションのバロメーターとして、活用してはいかがでしょうか。
◆筋トレのポイントは股関節
筋トレやストレッチ、ボディメイクのメソッドは年々アップデートし、フィールドも広がっています。とはいえ長く続かないのは、基本を無視して流行の華やかさに惑わされているからかもしれません。基本はメソッドそのものではなく、ひとりひとり個性を持った自身の体のはず。
骨格や筋肉の成り立ち、体の要である股関節を理解し、整えることからはじめてみませんか。股関節から体のバランスを無理なく保てば、日常的な動作で自然とボディメイクも叶うかもしれません。
理論的な見地から語られている本書は、まさに股関節辞典。あなたの健康と美容の知識が底上げされること間違いなしですよ。
<文/森美樹>
【森美樹】
小説家、タロット占い師。第12回「R-18文学賞」読者賞受賞。同作を含む『主婦病』(新潮社)、『私の裸』、『母親病』(新潮社)、『神様たち』(光文社)、『わたしのいけない世界』(祥伝社)を上梓。東京タワーにてタロット占い鑑定を行っている。X:@morimikixxx