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太平洋戦争末期の1945年3月10日、一夜にして約10万人が犠牲になった東京大空襲。それから80年がたった今年の3月10日も、例年と同じように、天皇陛下と雅子さまは愛子さまとともに、御所で黙とうされていた。
皇室の使命を果たされるため、日々力を尽くして、誠実におつとめに臨まれている天皇ご一家。
この日、国会では安定的な皇位継承や皇族数の確保策をめぐる与野党協議が開かれていた。上皇さまの退位特例法が成立した8年前、安定的な皇位継承の在り方を確立していくため、政府・国会での議論が始まった。しかし、幾度も中断を繰り返し、皇室が直面する危機的な状況は変わらない。
「昨年の通常国会では、政府の有識者会議が答申した“女性皇族が婚姻後も皇族の身分を保持”“養子縁組による旧皇族男系男子の皇族復帰”の2案を中心に議論してきました。与野党の見解は平行線をたどったままでしたが、今年の通常国会で再開しました。
3月10日の与野党協議では、“男系男子復帰”案について討議が行われています。自民党、公明党、日本維新の会、国民民主党が賛同する立場を示した一方で、共産党や社民党は反対の立場をとり、立憲民主党は“対象者の意思が確認できていない”などと慎重な立場を示すなど、意見が大きく割れ、集約の見通しが立っていません」(政治部記者)
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さらに、先月17日に開かれた前回協議の議事録が3月6日付で公表され、その内容も注目されていた。前出の政治部記者は続ける。
「女性皇族が結婚後も皇室に残ることができる案には、各党・会派もおおむね賛同する立場を示しています。ただ、その夫と子供の身分をどうするのかという点について、政党間の見解の相違があまりにも多いことが改めて示される形となってしまいました」
■“家族内の身分差”は国民にも違和感を…
とくに鮮明になったのは、与党・自民党と野党第一党・立憲民主党の意見対立。男系男子による皇位継承を重要視する自民側は、夫と子を皇族とすれば“母方のみが天皇の血を引く女系天皇の容認につながりかねない”と主張している。連立を組む公明や、皇統の男系継承を支持する維新や国民民主も同様の見解だ。
一方の立憲は、皇位継承資格を認める議論とは別にして、“皇族としての身分を付与する案も含めるべき”と主張しているのだ。
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自民などが提唱する案で女性皇族の“結婚の制度”が確立されてしまえば、ゆくゆくは愛子さまや佳子さまが結婚後に築かれる家庭にも大きな影響を及ぼすと、皇室担当記者は語る。
「自民などが主張する“配偶者を皇族にしない”という案で皇室典範が改正されれば、皇室に一般国民が加わることを意味します。そもそも国民には戸籍があり、姓を持ちます。しかし皇室の方々の家族関係は皇統譜という帳簿に記され、姓はありません。国民には憲法で保障される基本的人権や自由がありますが、皇室の方々は一定の制限を受けます。
女性皇族と結婚した夫やその子供は選挙権や職業選択の自由、居住地の自由といった権利を持つ一方、女性皇族は持っていません。また皇族はご公務などさまざまなおつとめがあるのに、夫や子供もそうしたおつとめをするのか、という違いが生じてくるわけです。
明確にご家族内で権利や義務が異なる状況で、果たして幸福な家庭を築けるのか……。女性皇族とそのご家族が生活されるうえで、多くの混乱が生じるという指摘は、これまでもなされてきました」
2月17日の協議では、内閣法制局などが法的な解釈を絡めながら説明する場面もあった。
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女性皇族が結婚した夫が皇族の身分を有しないという点については、憲法上問題はないという解釈があらためて示された。さらに、夫とその間に生まれた子供が一般国民のままでも、赤坂御用地などでの同居、皇宮警察による警護、さらに地方ご公務に同行する際の交通費の支給などを認めるという見解も明かされたのだ。
しかし、神道学者で皇室研究者の高森明勅さんはこう危ぶむ。
「女性皇族の夫や子が、一般国民のままであっても、社会通念では家族が一体と見られるのは避けがたく、天皇・皇室の象徴という憲法上の地位と矛盾が生じます。
たとえば結婚後、選挙権や被選挙権を持つ夫が政治活動を始めたとしても、それを止める手立てはないのです。また女性皇族が皇室に残る場合、皇族としての品位保持のために皇族費が支出されますが、一般国民である夫や子供には支払われません。17日の討議では、家計を一緒にすることについて法的に問題はないという説明もありましたが、一般国民が皇族費で生活することに納得できない人々もいるでしょう。
自民党などが進める案では、女性皇族の夫やその子供が政治や宗教、ビジネス活動などを規制する手立てが設けられない制度となり、皇室が重んじる公平性や中立性に対して、国民が疑問を抱くことにつながりかねないのです」
身分差から生じる“亀裂”を懸念することから、愛子さまや佳子さまの“お相手選び”にも、影響を及ぼさないはずはなく……。
「今後愛子さまや佳子さまをはじめ、女性皇族の方々がご結婚相手を決めていく過程で、お相手の男性が身分差によって生じる問題を避ける可能性もあり、難航することも十分にあるのです。
また結婚したとしても、身分差が家庭に影を落とすこともあるでしょう。現状のような国会での議論の停滞がさらに続けば、女性皇族の方々が結婚するタイミングを決めることができない状態も、さらに長引いてしまうのです。
秋篠宮さまは昨年のお誕生日に際しての記者会見で、『皇族は生身の人間』と発言されています。この意図は、“制度の改正によって皇族の人生がどうなるのか”ということを、政治家にも考えてほしいというメッセージのようにも感じました」(宮内庁関係者)
■“女性・女系”天皇の容認に向けた議論を
自民と立憲の見解が対立するなか、維新や国民民主は、女性皇族が結婚した夫と子を「准皇族」とするという案を示している。近現代の皇室に詳しい静岡福祉大学名誉教授の小田部雄次さんは、こう問題点を指摘する。
「協議の中で他党や内閣法制局も指摘していましたが、准皇族という地位や身分は、《華族その他の貴族の制度は、これを認めない》という憲法14条第2項に反する可能性が高いとされています。
一連の協議では、“悠仁さままでの皇位継承はゆるがせにしない”“男系継承は堅持”という考え方がほとんどの党派の意見の前提となっています。准皇族という案も、この前提が背景となっている例外規定のように感じています。
皇族数の減少は、女性皇族が結婚によって皇籍から離れることで進んだ一面があります。さらに昨今の世論調査でも、女性天皇や女系天皇を容認する声が高まり、多くの国民もその実現を願っています。男系男子に限られた皇位継承は明治以降に定められた制度です。もう一度原点に返り、女性宮家の創設や、女性天皇、ひいては女系天皇の容認に向けた議論も始めていくべきだと思います」
愛子さまや佳子さまの将来の夫とその子供が、不安定な立場におかれ、結果的にお二方もご不幸に……。そんな将来に、雅子さまも憂慮を深められているのだろう。
前出の宮内庁関係者は、
「十分な取り組みがなされていない現状に、天皇陛下と雅子さまは強い危機感を抱かれています。しかしお立場から積極的な発信もできず、もどかしい思いを深められているようにも拝察します。
愛子さまと佳子さまはじめ、未婚の女性皇族の方々も同様に、国会での議論の推移を注視されています。皆さま方の人生や、皇室の未来に直結するわけですから……。どうか皇室の方々の思いを汲んでいただきたいものです」
このままでは、“皇族になれない夫と子供”を持つこととなるかもしれない愛子さまと佳子さま。政治家たちの頑迷な姿勢が、女性皇族の将来を幸せから遠ざけようとしている。
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