
突然だが、僕物持ちがいい。なにせ未だにSONYの初代プレイステーション専用ソフトで遊んでいる。ソフトはもちろん、これを再生する機器も現役だ。俗にいう初期型プレステ3が今この原稿を書いている僕の右斜め上の棚にどっしりと縦置きされている。
初期型は2006年に発売されたものなので、来年で購入してから20年目。この初期型はプレステ、プレステ2専用ソフトとの互換性があるので手放せず、しょっちゅう手入れして大切に使っている。
しかし初代プレステの本体となると、これまでに何度も買い替える羽目になった。初代は昨年発売から30周年だったというが、この本体は結構壊れやすく、遊んでるうちに縦置きしたり逆向きにしないとディスクを読み込めないなどの致命的な欠陥に見舞われることが結構多かった。
一方で、その初代プレステと覇権を争っていたセガ・エンタープレイゼスのセガサターンは同年発売ながら、プレステほど破損したという記憶は薄い。セガの方がプレステより丈夫という認識を持っていたのは、きっと僕だけではないはずだ。それぐらい初代プレステって脆かった。
ところが双方比較すれば、ハードとして売れたのは俄然プレステだろう。諸々のメーカーのビッグタイトルが次々にプレステ専用ソフトで発売されたことが、その大きな事由だ。
|
|
これを以って、セガサターンは負けハードだという烙印を、30年前から度々押されている。……でも、果たして本当にそうだろうか。セガサターンはハードとして、負けていたのだろうか。(文:松本ミゾレ)
負けハード扱いに抗うゲーマーの声を聞け
先日、5ちゃんねるに「セガサターンて負けハードじゃないよな?」というスレッドが立っていた。スレ主は、セガサターンの後続にあたるドリームキャストは負けハードだったと認める発言をしつつ、こう書き込んでいる。
「でもサターンはプレステと互角以上に戦ってたよな? ソウルハッカーズにサクラ大戦。バーチャ、kof、バンパイアハンターなんかの格ゲーも面白かったろ。今の世代に負けハード扱いされるの悔しいわ」
と、上記のようにプレステに負けたという判定を食らいがちなセガサターンを弁護する立場の意見を見せている。
|
|
プレステの往時の勢いというのは、僕もリアルタイムの勢いは知っている立場だが、たしかにサターン派よりもプレステ派の方が有力ではあった。
その上でサターンはややマニアックなソフト。よりゲームのコアファンが好むようなソフト。対してプレステは、メジャー級タイトルのソフトやライト層が楽しめるソフトがよく出るハードという印象は持っていた。要は棲み分けができていたということかもしれない。
ただ、当時子供だった世代からすると、正直サターンを買うよりかはFFが出来るプレステを買う方がいいね、という印象。セガもその点は重々意識していただろう。だからこそドリームキャストのCMで「プレステの方がいいよな」と小学生に言わせるCMを打っていたわけだし。
あれはあの時代の子供たちの素直な意見を、残酷に反映させた面白い自社ディスCMだったと思う。ただ、セガがわざわざそんなことCMで主張しなくても……と、若干不憫な思いもした。
セガサターンから出ても、そのうち移植版がプレステに…という流れもきつかった
セガサターンはセガサターンで、魅力的なソフトに色々と対応してきた。セガサターン専用ソフトの中には傑作も多く、まさに枚挙にいとまがない。
|
|
ところが残酷なことに、当時はプレステに世論がなびいていたため、セガサターン対応ソフトとしてリリースされたはずのものが、後日プレステに対応して発売されるということも多かった。この結果、「わざわざセガサターン買わなくてもいいじゃん」みたいな風潮が、残念ながら広まってしまったのは事実だろう。
もっとも、移植版はレスポンスが悪かったり、ロードが長くなっていたり、細かいUI部分が変更されて発売となるケースも結構多かった。だからソフトとしての完成度はサターン版に軍配が上がるというケースって、決して珍しくもなかった(『スパロボF』が特に顕著)。
それでも当時飛ぶ鳥を落とす勢いだったSONYのプレステは、多少の欠点を抱える移植版すらも売って売って売りまくった。やっぱり「あのゲームやりたいからサターン買おうとしたけど、プレステで出るならそれに越したことはない」というファンのニーズに応えたのはデカかっただろう。
プレステなんて初期の初期は『土器王記』みたいなわけのわからないソフトばっかり出していたのに、その後の急速な勢いの付き方を思い返すと、やっぱりそれだけあの頃のソニーは強かったということか。