【どうなる!? 日本の同性婚】「同性同士の結婚を認めない現行法は違憲」の判決が連続! なのに自民党は「注視」だけ?

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2025年03月23日 07:10  週プレNEWS

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今年1月23日、同性婚の実現に合わせて行なわれた、タイ・バンコクのショッピングモールでの同性婚登録イベントの様子。同性婚が実現するのは台湾とネパールに続いてアジアで3番目、東南アジアでは初めてとなり、全世界の注目を浴びた ©Wissarut Weerasopon/ZUMA Press Wire/共同通信イメージズ

今年1月にタイの同性婚実現が注目を浴びた一方、日本では「同性婚ができない現行法は憲法違反」という判決が相次いでいる。アジアでは台湾やタイやネパール、欧米でも多くの国で認められていて、日本の世論も賛成多数だが、自民党はなぜかいまだ慎重な姿勢を見せる......。果たして、日本でも同性婚は実現するのか?

【アンケート】世界32の国と地域で実施した「同性婚」調査

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■同性婚は日本人の約7割が「賛成」

同性婚を認めない法律規定は憲法違反だとして、愛知県の同性カップルが国に損害賠償を求めた訴訟について、3月7日、名古屋高裁は同性婚が認められていないのは「憲法違反」とする控訴審判決を下した。

同判決では国の賠償責任こそ認めなかったものの、同性カップルが法律婚制度を利用できるよう国に対応を促した。

同性婚の法制化実現を求める公益社団法人「Marriage For All Japan 結婚の自由をすべての人に」(以下、マリフォー)の代表理事を務める弁護士の三輪晃義氏は判決を受けて、「同性婚を認めても戸籍制度や親子関係に弊害が生じないと述べたのが重要」として、「国会に強く立法を促す判決だ」と述べた。

日本の同性婚法制化を求める裁判は、2019年に一斉提訴が行なわれて以来、現在まで全国5地裁で計6件が提訴され、高裁では4件目の「違憲」判決となった。

これまで、世界では同性婚の法制化が進んできた。

01年にオランダが世界で初めて同性婚を法制化すると、ベルギーやスペインといったヨーロッパ諸国が続き、14年にはイギリス、15年にはアメリカも法制化。アジアは長らく遅れていたが、19年5月に台湾、そして今年1月にはタイでも法制化された。

現在は世界38の国と地域で認められており、日本はG7(先進7ヵ国)で唯一、同性カップルに法的保障がない国となっている。

しかし、実は日本では同性婚に反対という人は少数派だ。23年11月に公表されたアメリカの調査会社が世界32の国と地域で実施した世論調査では、日本は「強く賛成」「賛成」が合わせて67%。すでに法制化されているアメリカ(63%)やタイ(60%)、台湾(45%)よりも高い結果となっている。

裁判で結果も出てきており、世論も歓迎ムード。イスラム圏のように同性婚を宗教的に否定する土壌もない。それにもかかわらず、なぜか日本では同性婚の法制化はスムーズに進んでいない。

訴訟の弁護団として裁判に関わる三輪氏も、「私たちが提訴した時点で違憲判決しか考えられないと思っていました。同性カップルに結婚を認めない合理的な理由が見いだせないからです」と語るように、反対される根拠もニュースを見ているだけではよくわからない。いったい、同性婚の何が問題なのだろう?

■同性婚こそが違憲? 反対派の根拠とは

例えば、根強い反対意見の代表は、「同性婚のほうが憲法違反」というものだ。

日本国憲法第24条1項では、「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない」としており、この「両性の合意」という文言が「あくまで男女を前提にしたもの」とする解釈が反対派の根拠となっている。

だが、三輪氏は次のように反論する。

「この規定は、家長の許可がなければ結婚できない戦前の婚姻制度を否定するために定められたもので、同性婚を禁止するために定められたものではありません。

そもそも、これまでの裁判で『同性婚を導入するためには憲法改正が必要だ』とする判決はひとつも出ておらず、被告である国すらも、反対の根拠として主張していない。もはや解決済みの論点で、裁判で争点にすらなりません。

一部では、『生殖能力のないカップルを法律で守るべきではない』などの意見もありますが、その理屈でいえば、死刑囚との獄中結婚や、高齢者同士の婚姻もできないはず。しかし、どちらも法的に認められています」

また、日本では同性カップルの関係を各自治体が公認する「パートナーシップ制度」の利用も拡大している。法律上の効力はないものの、将来を誓い合った同性カップルが行政や民間のサービスを婚姻関係と同等に受けられる道を開くものだ。

日本の人口に対するカバー率が90%を超えるほど広がっている。「パートナーシップ制度を法制化すれば十分だ、婚姻制度を使わせる必要はない」との主張もある。

「これはアメリカで黒人の人種隔離政策を正当化する際に用いられた『分離すれども平等』と同じ理屈です。

公民権運動前のアメリカでは、バスの白人席に黒人が座ることは禁じられていました。しかし、黒人にも席は用意されている。平等にサービスが提供されているので人種による分離は許される、という主張です。

しかし現在、この理屈は『特定の人種を区別すること自体が差別』と否定されています。パートナーシップ制度も同様で、『同等の権利が保障されているから婚姻じゃなくていいでしょう?』という主張は、差別意識でしか説明できないものです」

■「伝統的家族観」がむしろ家族を壊す!

しかも、パートナーシップ制度が法的な婚姻関係と同等の権利を保障しているわけでもないと三輪氏は指摘する。

「例えば、パートナーに緊急手術が必要な際、同意書にサインする権利がない、家族ではないから面会させてもらえない、といった問題があります。私の周りでも、実際にパートナーが入院中の面会を断られたことがありました。

また、遺産の相続権もありません。これは『お金がもらえなくて残念』といった話ではありません。一緒に住んでいた家が亡くなったパートナー名義だった場合、そこに住み続けることができない可能性があります。同性婚が法制化されていないことで、安心して生活する権利が脅かされる現実があるのです」

ただ、と三輪氏が続ける。

「同性カップルの人たちは、『不便があるから法律を変えてくれ』とだけ主張しているわけではありません。異性愛者も同性愛者も、『この人と一緒にずっといたい』から結婚を選ぶわけです。

その素直な感情が同性カップルだけ否定され、自尊心が日々傷つけられている。傷つけられた尊厳を回復することも、同性婚を法制化すべき大きな理由です」

一方、反対派の根拠も法律論だけではない。代表的なものが、「同性婚を認めると、さらに少子化に拍車がかかってしまう」という懸念だ。

これに関しては、家族社会学を専門とし、『結婚の社会学』などの著書を持つ慶應義塾大学文学部准教授・阪井裕一郎氏が次のように指摘する。

「これは端的に間違いです。家族観が強固で画一的な国ほど少子化は進行しており、多様な家族観を認めている国ほど出生率が改善する傾向にあります。なぜなら、『家族とは、こうあるべきだ』という価値観が強固だと、そこになじめない人が家族をつくることを断念してしまうからです。

お隣の韓国はその象徴的な事例です。伝統的な家族関係が今なお重視されているのですが、そこに息苦しさを覚えた若者が家族をつくらなくなり、出生率が0.75と世界最低水準になってしまいました。

古き良き家族観を守ろうと伝統的家族主義を主張するほど、かえって伝統的家族が壊れてしまうという皮肉な結果です」

■子供にとって同性婚は良くない?

日本の「伝統的家族」も、実は歴史的な根拠があるわけではないという。

「例えば、一夫一妻制は明治期に西洋列強に先進国として認めてもらうために急造された制度であり、日本古来の伝統ではありません。

また、戦前までは事実婚も多くありました。実際、保守派の人たちは『伝統』の観点から1980年代まで事実婚を積極的に擁護してすらいました。

そこで法律婚の徹底を強く主張したのは、むしろリベラルな急進派です。『内縁の妻』といった形で法的に不安定な地位に置かれている女性たちを、法律の傘で守ろうと運動を展開したのです。

ところが、今ではリベラル派が抑圧の対象として法律婚に懐疑的な目を向け、保守派が法律婚を守るべき伝統として擁護するという逆転が起こっています。

このように事実婚を巡る言説だけでも紆余曲折あるように、日本における『伝統的家族』の姿とは、必ずしも簡単に決めつけられるものではないのです」(阪井氏)

他方で、「同性カップルが子供を育てた場合、その子にどう関係を説明するのか」という意見もあるが......。

「夫婦別姓の議論でも類似の意見が出ますが、これは同性婚や夫婦別姓が『普通ではない』という価値観を持っている人しか気にしない問題です。なぜなら、子供には『何が普通の家族か』という固定観念はなく、それを問題視する大人がいるだけだからです。

親の名字が違ったり、親が同性カップルだったりしたとして、その事実だけで悲しい思いをする子供はいるでしょうか。そうした家族を差別する人がいるから子供が悲しい思いをするのであって、悪いのは差別する人であり、そういう価値観を植えつけている教育や社会です。

これはひとり親だったり、親が無職だったりしても同じです。『どうしてうちはほかと違うの?』という疑問が子供を苦しめるから良くない、という主張が正当化されたら、そこから外れた人はますます家族をつくることを諦めてしまう。伝統的家族主義が人口減少を促す構造が、まさにここにあります」 

■積極的反対はせず注視を続ける自民党

日本における同性婚反対派の主な根拠を見てきたが、実はこれらの反論は、保守派の代表格である自民党のLGBTQに関する冊子にも詳細にまとめられている(令和元年版「性的指向・性同一性(性自認)に関するQ&A」)。

そこでは性的マイノリティに関するよくある思い込みを正す指摘が並び、「同性婚が少子化を加速させる」といった主張にも反論している。

石破 茂首相も同性婚を認めることは、「日本全体の幸福度にとって、肯定的なプラスの影響を与えるものだと考えている」と語るなど、同性婚に理解を示している。

「ところが、自民党議員の大半は同性婚に反対、または態度を保留しています」

こう三輪氏が語るように、国会議員の同性婚に関する態度をまとめた「マリフォー国会メーター」を見ると、自民党で「賛成」「どちらかと言えば賛成」を表明しているのは河野太郎議員や小泉進次郎議員ら30人で、昨年の総裁選で石破氏としのぎを削った高市早苗議員は「どちらかと言えば反対」と回答している。

主要政党の議員を集めた同性婚法制化に関する院内集会(今年2月13日開催「マリフォー国会」)でも、自民党から出席した牧島かれん議員は同性婚に「△」と「○」の札を上げ、態度を保留した。

「牧島議員は自民党では少数の同性婚賛成派ですが、党内部にはまだまだ反対意見が根強いということなのでしょう。しかし、ここまで述べてきたように、同性婚はイデオロギーの問題ではなく、今を生きる人たちの困り事をどう解決するかという現実的な問題です。

世論の7割が賛成しているように、日本はすでに同性婚を受け入れる準備ができています。これに反対する理由は、もはやどこにもないと考えています」(三輪氏)

3月25日には大阪高裁の判決も控えるが、すでに「違憲」との判決が多数を占めている以上、最高裁まで争うことは確実だ。

「もし最高裁まで違憲判決を下したら、国は必ず明確な対応を求められます。放置すると国家賠償請求が認められてしまうので、今までのように態度を保留することはありえない。

しかし、そこまで悠長に待っているつもりはありません。原告の中には裁判中に亡くなってしまった方もいます。これからも一刻も早い政治的決断を国に求めていきます」

日本で同性婚が実現する日はやって来るのか。今後も動向を注視したい。

取材・文/小山田裕哉

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