
ネタ集めのために一旦警察官になった異例の小説家が話題となっている。
2014年に小説家デビューした仁科裕貴さんは元警察官という異例の経歴を持つ。おもしろい小説を書きたいとネタ集めのために奈良県警で働き出したが、思わぬ成果を出したことで公安に異動。激務により体を壊し退職。そこからトントン拍子に小説家になる夢が叶ったそうだ。一体どんな経緯があったのか。まさに小説の主人公のような人生を送る、仁科さんに話を聞いた。
ーーXには「全てフィクション」と書かれていますが、経歴について教えてください。
仁科:元警察官というのは本当です。2014年3月に小説家としてデビューしたのですが、当時から著者近影欄に「元警察官」と記載されております。地方新聞に掲載されたこともありますし、警察24時にも出演したことがあるんですよ。個人特定を避けるため詳細はお話できませんが…名前もペンネームです。
|
|
ーー警察官から小説家への転身は大変だったのでは。
仁科:そもそも警察官になったのは、ミステリ小説のネタ集めのため。学生時代は経験不足のため面白いミステリが書けず、それなら警察官にでもなってみるかと採用試験を受けました。3年程で退職し小説を書いて新人賞に応募する予定でしたが、交番実習でうっかり凶悪強盗犯を検挙してしまい、やがて公安に配属されることになりました。
激務に耐えていたのですが、脳卒中で倒れてしまったことが退職のきっかけになりました。スーパーの駐車場で倒れたのですが、店員に「教会につとめているのでお祈りさせてください」と言われた時、「どこの教会?」と聞き返したのは我ながら職業病だと思いました。無職になり小説の新人賞に応募すると、すぐKADOKAWAからお声がかかり、デビューすることになりました。
ーー元警察官だからこそ書ける小説とは。
仁科:デビュー作から二作目まではサスペンスやミステリだったのですが売れず、三作目から方向転換。「座敷童子の代理人」がヒットしたため、以降は「妖怪もの」を書いているんです。でも、最新作の「識神さまには視えている」は警察要素がある作品です。
|
|
ーー経歴が役に立ったと思うことは?
仁科:先の回答で出した「識神さまには視えている」が、私にとっては初めて警察官を主役に据えた小説。明治時代風の異世界を舞台に、巫女の体に乗り移った女性刑事が現代の鑑識知識で怪異を解き明かす物語です。元警察官らしい!は、正直自分ではよく分からないので、読者の皆さんに教えていただきたいです。
◇ ◇
SNSでは「ノンフィクションを書いた方が早いのでは」「そんな志望理由の人もいるのか」「動機はなんであれ、厳しい警察学校に入るのは尊敬」などの反響が集まった。異例の経歴を持つ作者が書く物語、是非ご一読いただきたい。
仁科裕貴Xアカウント:https://x.com/yukinishi110
「識神さまには視えている」仁科裕貴(KADOKAWA):https://www.kadokawa.co.jp/product/322311001156/
|
|
(まいどなニュース特約・米田 ゆきほ)