※画像はイメージです あおり運転の被害がこれほど頻繁に報じられているにもかかわらず、状況は改善されていないどころか、2024年度には前年より19ポイント増加し、実に72.5%のドライバーがあおり運転の被害に遭っているとのことです。(※)
今回は、知らず知らずのうちにあおり運転の加害者になってしまった珍しい事例を紹介いたします。
◆地方転勤でペーパードライバーを卒業
工業機械製造の会社で営業を担う社会人3年目の横山さん(仮名・26歳)は、入社以来首都圏営業部に所属していましたが、このたび岡山営業所へ異動になったそうです。
「生まれも育ちも東京なので、自然が豊かな地方への異動には正直なところ憧れがありました。長い間ペーパードライバーでしたが、移動手段が車のみのため、ついにペーパードライバーを卒業できそうでした」
都内とは異なり渋滞はないものの、営業先への距離は非常に長く、赴任から1週間で既に500キロを走行したといいます。
「メンテナンススタッフと共に岡山県を走り回る中で、赴任してからは運転テクニックがどんどん上がった感じがします」
◆運転が楽しくなり中古車を購入
ドライブの楽しさに目覚めた横山さんは、赴任半年後にボーナスを頭金にして中古車を購入したといいます。
「赴任してから車への思い入れが徐々に強まり、とうとうマイカーを手に入れました。マイカーと言っても、10年落ちの日産マーチなんですが、私にとっては大切な相棒です。都内に比べて娯楽が少ない分、大自然のドライブは格別なんです」
週末には広島や山口などの遠出にも挑戦する横山さん。そのドライビングテクニックはどんどん向上し、営業テリトリーも増えたことで成績も営業所トップになったそうです。
「ただ、マイカーを所有すると想定外の維持費がかかることには少し驚いています。先日もラジエーターの調子が悪くて修理工場に行くと、『これは錆びちゃってるから交換だね』と言われて7万円もの出費となりました……。これ以上壊れないことを祈るばかりです」
◆遠出の林道でまさかの故障
3連休を利用してドライブ三昧を計画していた横山さんは、岡山から北上して鳥取県の県境を目指すことにしたそうです。
「少し前に蒜山高原へドライブをしたのですが、今度はさらにその先へ行きたくなり大山方面へ車を走らせました。昼間はそれほど感じなかったのですが、日が暮れるにつれ辺りがどんどん暗くなっていくんです。
それもそのはず、どこで間違えたのか、気付けば道幅が狭い林道に入り込んでいて、そこには街灯などは皆無で、真っ暗闇の世界が広がっていました」
携帯の電波も入りにくく、位置情報取得も難しい中、横山さんは車の異変を感じます。
「たぶんアッパーライトにするために何度も『カチャカチャ』とレバーを操作していたせいか、ヘッドライトが下向きにならなくなったんですよ」
焦りながら運転を続けると、数百メートル先にテールランプが見えたので、横山さんは少しスピードを上げて近づこうとしました。
◆さらなる故障と警察沙汰
自分の車が故障したこともあり、一層心細くなった横山さんは、そのまま前方の車の後を追いかけたといいます。
「真っ暗闇の林道で車が止まったりでもしたら大変だと思いました。部分的には携帯電話も通じませんし、恐怖でいっぱいで、とにかく前方の車について行きました。
ところが、さらなる故障が発生したんです。なんと、エマージェンシーを知らせようとして軽くクラクションを鳴らそうとしたら、今度は『ピーー』と鳴り止まなくなったんです。もう冷や汗が止まりませんでした」
すでに2台の車は少し開けた田園地域を走行していました。そして次の瞬間、横山さんはルームミラーに映る赤色灯に気づきます。
「後ろにパトカーがいました。『え、なんで?』と思う暇もなく『前の日産マーチ。速度を落として左に寄りなさい』と言われ、ようやく事態が飲み込めました。しかし、時すでに遅しでした」
警察によると、通報したのは前方の車で「林道の中腹からアッパーライトとクラクションを鳴らし続けられあおり運転を受けた」との通報があったとのこと。
意気消沈した横山さんは、状況を警察官に説明したところ、あおり運転での違反は免れたそうですが、整備不良の反則切符を切られたそうです。
※出典:チューリッヒ保険会社
TEXT/八木正規
【八木正規】
愛犬と暮らすアラサー派遣社員兼業ライターです。趣味は絵を描くことと、愛犬と行く温泉旅行。将来の夢はペットホテル経営