「甘くても虫歯の原因にならない」“キシリトール”って本当に意味あるの? 歯科医師が解説

1

2025年04月14日 16:30  日刊SPA!

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

日刊SPA!

学生時代に子役や読者モデルとして活動、現在は歯科医師の野尻真里さん(31歳)
一般的に「なんとなく歯に良いもの」としてキシリトールは知られています。キシリトールと言えば、「キシリトールガム」をかんでいる人が多いのではないでしょうか。
当院にいらっしゃる患者さんでもよくかんでいると聞きますが、理由をおたずねすると、「スッキリするから」「口臭が気になった時だけかんでいる」といった答えが大半です。

キシリトールはむし歯予防に有効なものなのですが、しっかりとした効果はあまり知られていません。そこで今回はキシリトールについて詳しく説明していきます。

◆「甘くても虫歯の原因にならない」キシリトールの正体はなに?

キシリトールとは、白樺や樫の木から抽出されるキシロースという天然の糖から作られているもので、砂糖と同じくらい甘いのが特徴です。しかし、砂糖と大きく異なるのは、甘くてもむし歯の原因とはならないことです。

キシリトールは、イチゴやラズベリーに含まれており、キシリトールそのものが自然に存在するものでもあります。

◆むし歯菌を減らす働きも

まず、むし歯はなぜ作られるのかを簡潔にお伝えします。

お口の中にいるむし歯菌は、私たちの摂取した“糖”を代謝してエネルギーとして消費し、代わりに“酸”を排出します。その“酸”が歯を溶かすことによってむし歯は作られます。キシリトールはむし歯菌のエネルギーにはならず、その結果“酸”の排出もされないため、むし歯の原因にはなりません。

また、むし歯菌はキシリトールをエネルギーにできないばかりでなく、キシリトールを取り込んで、分解する作業を行うはめになります。つまり、むし歯菌のエネルギーは作られず、消費されていく一方なんです。その結果、むし歯菌の数も減っていくのです。

◆むし歯予防に有効な“フッ素”の効果を増強させる

フッ素はむし歯の予防に最も有効なのですが、キシリトールは、そのフッ素の効果を増強することが研究で判明しています。フッ素とキシリトールを組み合わせた歯科製品により、むし歯予防の効果が12%向上したという研究結果もあります。

歯には細菌の塊である、ねばねばのプラーク(歯垢)が付着しています。これは主に歯の磨き残しが原因で付着するものなのですが、キシリトールを長期的に摂取している人では、このプラークの量の減少がみられることも報告されています。プラークが少ないと、フッ素も効果を発揮しやすいです。

◆唾液をたくさん出して歯を石灰化させる

キシリトールは、その甘さで唾液の分泌を促します。唾液には、むし歯菌の放出した“酸”によって溶けだした歯の表面を固める、“再石灰化”という働きがあります。

唾液がたくさん出ることで、この再石灰化も促進されてむし歯予防に有効となります。

◆キシリトールはどんなものを選ぶべき?

キシリトールといえば、ガムを思い浮かべると思います。キシリトールガムはスーパーなどで必ず置いてある製品ではあるのですが、市販のキシリトールガムの中には、キシリトールの配合が少ないものも見られます。一番むし歯予防に有効であるのは100%キシリトール配合のものです。

100%配合のキシリトール製品は、市場に出ている数が多いとは言えません。フィンランドで行われた研究では、キシリトールが少なくとも50%以上は含まれていないと、むし歯予防の効果が弱まってしまうとされています。

また、キシリトールのむし歯予防効果をしっかりと発揮するためには、キシリトールガムを毎食後2〜3粒かみ、一日の合計が6グラムとなることが理想だとされています。また、持続的に長期間摂取を続ける必要があるとされています。

しかし、キシリトールも摂りすぎには注意が必要です。大量の摂取で下痢を誘発してしまいます。キシリトールの1日の上限量は5〜10ℊなので、6ℊは安全圏内ではあるものの体質によってはお腹が緩くなってしまうケースもあります。ご自身の体調と相談しながら、無理なく続けることが大切なので、理想量にとらわれず可能な範囲での摂取をしてみて下さい。

例えば、飴が舐めたくなった時にキシリトールガムにかえてみるというだけでもむし歯予防には有効だと思います。ガムが苦手な場合でも、チョコやキャラメルもあります。歯科医院でご相談して頂ければ購入が出来る医院もあるため一度相談してみてくださいね。

また、市販のもので私がよく食べているのはキシリトールキャンディーです。

キシリトールガムではなくても食べやすい製品を活用すると良いと思います。

◆キシリトールは魔法の甘味料ではない

ここまでキシリトールの働きについてご紹介しましたが、キシリトールは魔法の甘味料ではありません。しっかりセルフケアを行い、フッ素の活用、歯科医院での検診とメインテナンスを行った上でのキシリトールということを忘れないでください。

イメージとしては、それらの予防対策をヨイショ!と持ち上げて効果をより高めてくれるものです。持ち上げるものがなければ効果も出ないのです。今日からキシリトールの活用を始めてみてはいかがですか?

<文/野尻真里>

【野尻真里】
一般診療と訪問診療を行いながら、予防歯科の啓発・普及に取り組んでいる歯科医師です。「一生涯、生まれ持った自分の歯で健康にかつ笑顔で暮らせる社会の実現」を目標にメディアで発信をしています。X(旧Twitter):@nojirimari

ランキングライフスタイル

前日のランキングへ

ニュース設定