成人肝細胞の長期培養に成功=ミニ臓器で機能確認―慶大
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2025年04月17日 07:31 時事通信社

慶応大の研究チームは、成人の肝細胞を実験容器内で培養・増殖させ、栄養素の合成・貯蔵といった代謝機能を持つオルガノイド(ミニ臓器)を作ることに成功したと発表した。新薬開発や新しい治療法研究への活用が期待できるという。論文は16日、英科学誌ネイチャー電子版に掲載された。
肝臓には吸収した栄養素の合成・貯蔵や有害物質を解毒する代謝機能があり、低下すると糖尿病や脂質異常症などを発症する。成人の肝細胞は培養が難しく、ヒトの人工多能性幹細胞(iPS細胞)や胎児由来の肝細胞などが使われていたが、代謝機能を安定的に再現することは難しかった。
佐藤俊朗教授らは、肝臓再生の因子として知られるたんぱく質「オンコスタチンM」に注目。凍結した成人の肝細胞を培養する際に投与したところ、約3カ月後には100万倍以上に増殖してオルガノイドを形成、代謝機能を100日以上にわたり維持した。
肝臓分化を促進するホルモンを投与すると、胆汁を排せつする毛細胆管を形成。生体内の肝細胞に近いレベルで、ブドウ糖やコレステロールなどを作り出すことも確認できたという。
研究チームは「脂肪性肝疾患などモデルを試験管で精密に再現し、新たな治療法の開発につながることが期待される」などとしている。
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