
先日、旅行に連れ出した「飼い猫」をサービスエリアで逸走させた、という事案がSNS上で大きな問題となった。
多くの人の協力を得て、逸走した猫は奇跡的に捕獲されたというが、さまざまな事情で行き場をなくした多くの猫を保護してきた「保護猫かふぇ かぎしっぽ(@kagishippo2015)さんは、「そろそろ学習してくださいよ」と、切実な思いをX(旧Twitter)に投稿した。
「猫を帰省にも旅行にも連れて行くなって何年いい続けているだろう。猫に散歩させるな、リードもハーネスも気休めでしかないから散歩なんかに連れ出すな、って何年いい続けているだろう。猫を花見や花火大会に連れて行くなってどれだけいい続けているだろう。そろそろ学習してくださいよ」
<保護猫かふぇ かぎしっぽさんのXのポストより>
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「猫」は呼んでも戻って来ない
そもそも、なぜ「猫」を外に連れ出してはいけないのか?
兄弟猫を交通事故で亡くしたところを地域の保護主さんに救出された元野良の兄弟猫、6歳になるクウちゃん&カイちゃんと暮らす飼い主、クウとカイ(@kunyan_kainyan)さん。
愛玩動物飼養管理士の資格を持つクウとカイ(@kunyan_kainyan)さんは、「猫はテリトリーの外(普段と異なる環境)に置かれることに大きなストレスを感じる動物です」と、語る。
「いつもと違う匂い、音、視界……それだけで萎縮してしまう猫も多いと思います。ストレスを感じて萎縮している時にびっくりするようなこと(サイレン、クラクション、散歩中の犬に吠えられるなど)があればパニックになり、逸走してしまう可能性があります。
逸走すれば交通事故に遭う危険性も高まります。また、猫は旅先などの見知らぬ土地では神経質になりますし、犬と違って飼い主をリーダーとして認識しないため、飼い主が呼んでも戻ってくる可能性は低いです。そのため、自宅から離れた土地で逸走した猫を探し続けることは非常に難しいと思います」(クウちゃんとカイちゃんの飼い主さん)
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ハーネスもAirTagも「事故で命を落とす危険」からは救ってくれない
「うちの猫はおとなしい」「外が好きな猫だから」「ハーネスやAirtagを付けてるから大丈夫」と、主張する飼い主も少なくない。
実際、猫を散歩させたり、車中泊などに同行させている様子は動画サイトなどにも投稿されている。
「普段はおとなしい猫や外出に慣れている猫でも、やはりきっかけがあればパニックになる可能性はありますから、外に連れ出すことは避けるべきだと思います。ハーネスやリードをつけていても、パニックになった猫を制御することは並大抵のことではありません。よく”猫は液体”と言われますが、パニックを起こした猫の身体がハーネスから抜け出ることもあります。引っ掻かれたり噛まれたりすれば、リードを手放してしまうこともあるでしょう。
犬と異なり、屋根や木の上など垂直方向にも移動するのが猫ですから、逃げた際にリードがついたままであれば引っかかって吊るされる状態になる危険もあります。何よりも、ハーネスもリードもAirTagも、事故に遭って命を落とす危険を防いではくれないんです」(クウちゃんとカイちゃんの飼い主さん)
「猫」と「ニンゲン」は生態が異なる動物
環境省も猫の飼い主に対して、「猫にとって快適な室内環境」を用意した上で、「猫の室内飼育に努めること」を提唱している。
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しかし、「猫を外に出さないで」と訴えると、「”じゃあ、あなたは外に出なくて平気なんですか?”と言われることがあります」と、クウちゃんとカイちゃんの飼い主さんは言う。
「先にも述べたように、猫にとってテリトリーの外はストレスになりますし、ニンゲンが外(ニンゲンがルールを作って築いている社会)に出るのと猫が外に出ることの意味は全く違うと思っています。猫を擬人化せず、猫の生態を考慮した上で、愛猫たちが安全に過ごせるようにするのが飼い主の務めだと考えています」(クウちゃんとカイちゃんの飼い主さん)
事故や怪我、感染症、近隣への迷惑、生態系への悪影響など、多くの危険から可能な限り飼い猫を遠ざけるためにも、「猫は内」がいちばんだ。
もし誰かに愛猫を自慢したいなら、おうちでぬくぬくダラダラしている猫たちの可愛い姿をSNSでたくさん見せびらかせてほしい。
(まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・はやかわ リュウ)