『KENTARO SAKAGUCHI ASIA TOUR FAN MEETING 2025』(株式会社STONE.Bリリースより) 坂口健太郎が、初の海外ファンミーティングツアー『KENTARO SAKAGUCHI ASIA TOUR FAN MEETING 2025』をアジア各国で開催する。
ソウル・マニラ・香港 ・クアラルンプール・台北・バンコク・上海の7都市を巡る予定だが、アジア各国でファンミーティングを開催するという事実だけで、坂口のアジア人気は説明できてしまう。いやでも、どうしてこんなにアジアで人気なんだろう?
男性俳優の演技を独自視点で分析するコラムニスト・加賀谷健が、坂口健太郎がアジアで人気がある理由を解説する。
◆二国籍的アナザースカイ
2023年9月、坂口健太郎が韓国で初めてファンミーティング『2023 Kentaro Sakaguchi Fanmeeting in Korea』を開催した。韓国でも人気がある日本人俳優が、公式で訪韓したというより、もっとフランクにちょっと韓国に来てみました。みたいな雰囲気を筆者はキャッチした。
それくらい坂口健太郎は、韓国になじみ、韓国のファンから愛されている。2023年7月にファンミーティングのチケットが発売されると、数秒で完売したというのだから、その売れ方だけを見ても韓国での人気を十分証明している。
日本でももちろんスター俳優だし、韓国でも同じくらいスター然としている。日本人俳優である坂口にとってのアナザースカイが韓国であり、逆に日本も彼にとってのアナザースカイになってしまうような、二国籍的アナザースカイが成立してしまうように思われる。
◆塩顔男子であることが理由?
どうしてそんなに韓国で人気があるんだろう? 塩顔男子の魅力が日韓共通だから? 2010年にMEN’S NON-NOモデルオーディションに合格。2014年6月には所属モデルとして20年ぶりに単独表紙を飾った。当時、坂口は確かに塩顔の代表的存在のように語られていた。
さまざまな媒体で「○○顔男子特集」が組まれたら、塩顔代表は絶対坂口健太郎で決まりみたいな時代。坂口が俳優活動も本格化させる2014年、『ユリイカ』で特集された『イケメン・スタディーズ』掲載インタビューを読むと、坂口本人は○○顔男子のジャンル区分に対してあまり興味がある感じではない。
「海外では何顔というのはあまり聞かないですよね」という本人の言葉まである。彼が指す「海外」に韓国が含まれているかは定かではないが、少なくとも塩顔かどうかは、そこまで決定的な理由ではなさそうである。
◆頭をいっぱいにさせるメロメロ才能
では他に決定的な理由があるのかと聞かれたら、これはよくわからないというのが正直なところ。でもひとつ確かなのは、坂口健太郎には、(彼のことで)頭をいっぱいにさせる才能があることである。
坂口健太郎のことを考える。どんどん考える。これが、メロメロのドツボ。気づけば、彼のことで頭がいっぱいになっている。このメロメロ才能。たぶん日本人ファンも韓国人ファンも共通してメロメロになる。
韓国の動画配信サービスである「Coupang Play」オリジナルドラマ『愛のあとにくるもの』(2024年)に印象的な場面がある。第1話で韓国から日本に来たチェ・ホン(イ・セヨン)と日本の大学生・青木潤吾(坂口健太郎)がラーメン屋の前で再会する。ほとんどカメラ目線でホンの方を見つめる坂口の正面を捉えたショットがスリーショット切り返される。これはもう確信犯的なメロメロを供給する切り返しだった。
◆世界的スターたちとの交友から“ジワジワ”アジア全域へ
日韓両用のメロメロ才能を本丸にしながら、韓国の世界的スターたちとの交友によって外堀をうめる。『2023 Kentaro Sakaguchi Fanmeeting in Korea』に届けられた祝い花の中には、世界的K-POPグループBTSのメンバー、J-HOPEからのものが含まれていた。
ファンミーティング前年には、『2022 MAMA AWARDS』授賞式でAlbum of theYearプレゼンターを務めた坂口が、J-HOPEと3年ぶりの再会を果たし、彼と撮ったツーショットが話題になった。
坂口の公式Instagramにそのツーショットを「久しぶりに」というキャプション付きで投稿すると、J-HOPEがいいねを押して、ファンが歓喜したのである。韓国ドラマのリメイク作である坂口主演ドラマ『シグナル 長期未解決事件捜査班』(関西テレビ・フジテレビ系、2018年)主題歌「Don’t Leave Me」、そして劇場版『劇場版シグナル 長期未解決事件捜査班』(2021年)主題歌「Film out」をBTSが担当して以来の関係性である。
他にもK-POPグループ BLACKPINK リサが、TikTokに坂口とのダンス動画(2025年3月20日投稿)を投稿したり、ENHYPENとのコラボレーションなど、SNS上を賑わせる坂口が、いかにアジア全域から支持されているかがわかる。
あるいは付け加えて、今年で20回目の開催を迎えた大阪アジアン映画祭クロージング作品として上映された(第18回)『サイド バイ サイド 隣にいる人』(2023年)の坂口は、冒頭2カットの表情だけで全世界へメロメロを訴求、供給する力があると指摘しておきたい。今回より広いアジア地域でのファンミーティング開催を発表した坂口健太郎は、自前のメロメロ才能の触手をしなやかにのばしながら、ジワジワアジア全域へ、そのスター性をとどろかせている。
<文/加賀谷健>
【加賀谷健】
コラムニスト / アジア映画配給・宣伝プロデューサー / クラシック音楽監修「イケメン研究」をテーマにコラムを多数執筆。 CMや映画のクラシック音楽監修、 ドラマ脚本のプロットライター他、2025年からアジア映画配給と宣伝プロデュース。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業 X:@1895cu