研ナオコ、「中途半端にやるのだったら、やらない方がいい」 全力投球の芸能生活55年、転機となった出会いとは?

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2025年04月27日 11:10  クランクイン!

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研ナオコ  クランクイン! 写真:高野広美
 今年芸能生活55周年を迎えた研ナオコ。あらゆるジャンルで唯一無二の存在感を発揮し、元気いっぱいに駆け抜けている。9年ぶりの映画主演を果たした『うぉっしゅ』では認知症のおばあちゃんを演じるなど、また新境地にトライ。「常に全力投球」という研が、歌手、俳優、コメディエンヌとして行き来するギャップ力の秘密や、芸能生活における転機を明かした。

【写真】スタイリッシュな着こなしが本当にカッコよくておしゃれ! 研ナオコ、撮りおろしショット

◆志村けんさん、中島みゆき、岡崎育之介監督…人を見る目に自信あり!

 ソープ店で働く加那(中尾有伽)が、ソープ嬢としての仕事と、認知症が進んだ祖母・紀江(研)の介護というダブルワークに奮闘することに。加那が祖母との暮らしの中で、誰にも言えずにいた本当のことを素直に打ち明けながら、祖母のこれまでの人生や孤独を垣間見て行く姿を描く。

 研は、本作で9年ぶりの映画主演を果たした。認知症の女性を演じることに、躊躇はなかったという。オファーを引き受けた決め手は、「脚本をいただいて内容がとても面白かったのと、監督がこれからもっと伸びていくだろうと直感したから」と回想。「監督と話をしていると、この人は映画を作ったり、本を書いたりすることしかできないなと思うような人でした。不器用でもありつつ、ものづくりに対する純粋さのようなものを感じて、『この人の力になりたい、お手伝いしたい』と思った」と企画・脚本・監督を務めた岡崎育之介の人柄に惹かれたと語る。

 付き人時代の志村けんさんを見た研が、「面白いからドリフに入れたら?」といかりや長介さんに話したというエピソードや、デビューして間もない新人時代の中島みゆきに楽曲提供をお願いするなど、思えばこれまでも若い才能を後押ししてきた。「中島みゆきさんは、売れる前に見つけちゃったの。彼女の歌の世界が大好きだったんです」と楽しそうに笑った研は、「私、自分のことは分からないんだけれど、『この人は、いいぞ』と人のことはよく分かるんです」と人を見る目には自信があるそうで、「才能だけじゃダメ。愛される人柄、そして努力することを苦に思わない性格。そういう人は伸びます」と目利きとしての持論を述べる。

 1993年生まれの岡崎監督とタッグを組む上で、研は「妥協するなら出ません」と条件を提示したと振り返る。「私がこの仕事を長いことやっている一方、監督は若いですから。どうしても私に遠慮してしまうと思ったんです。でも私が芝居をして監督が納得できないことがあった時に、『まあ、いいか』と終わらせるようなことだけはしてほしくなかった。監督が自分の映画を作るために、我慢したりすることなく、思ったことはちゃんと言ってほしかったんです」と力を込める。

◆歌もコントも俳優も、常に全力投球


 劇中で研は、孫の名前も忘れてしまった認知症の女性を演じた。介護をされながらもふっと若い頃の記憶を蘇らせたり、孫と過ごす中で柔らかな笑顔を見せたりと、リアリティあふれる演技で観客を映画の世界へと誘う。『あばよ』や『かもめはかもめ』『夏をあきらめて』など数々のヒット曲を生み出し、歌手として歌の世界へとグッと引き込む表現力に定評のある研だが、そんな彼女が感じている俳優業の醍醐味とはどのようなものだろうか。

 「歌って、長くても3分くらいの物語なんですよね」と切り出した研は、「歌はひとりぼっちで紡ぐものだとすると、2時間くらいの物語をたくさんの人と一緒になって作るのが、俳優のお仕事。その差は大きいと思います」としみじみ。「今回の撮影現場は、少人数のスタッフで作り上げていきました。だからこそみんなが近い距離で話し合うことができて、一体感も味わうことができました。何事にも人のつながりって大事だなと、改めて感じました」と俳優業のよさを実感できる現場になった様子だ。

 今年で、芸能生活55周年を迎えた研。歌手、俳優として唯一無二の魅力を放つだけなく、コントやYouTubeではコミカルな表情をたっぷりと披露するなど、あらゆるジャンルで生き生きと活躍している。研が歌の世界で魅せるアンニュイな表情、そして『志村けんのバカ殿様』や『カックラキン大放送!!』におけるコメディ力。当時、その振り幅に驚いた人も多いはずだ。「ギャップはすごいですよね」と大笑いした研は、「なんだって中途半端にやるのだったら、やらない方がいいと思っていて。コントにしろ思いきり振り切ってしまった方が、やっていても楽しいし、観ている方も楽しいはず。とにかくどこへ行っても、一生懸命にやる。どうしたらいいか、よく分からなくてもね(笑)。そうやって挑んだことでできたキャラクターが、たくさんあります」とにっこり。

 昨年行われた『エイリアン:ロムルス』のイベントではエイリアンの“最終形態”になりきるなど、「振り切ってやる」研のスタンスはいつまでも健在。「みんなが喜んでくれたり、楽しんでくれるのが、好きなんです。あれだって自分の顔が見えないくらいの姿になっていましたが、やっている私も楽しいんです。それに歌手だっていっぱいいるのに、その中から『あの人は変わっているから、こういうこともやってくれるのでは?』と感じて、声をかけていただけるだけでうれしいですから」と清々しい表情を浮かべる。

◆告白した芸能生活の転機「歌は下手くそ。もっとうまくなりたい、うまくなれるはず」


 本作で演じた紀江のセリフで、「仕事は生きる糧」という一言がある。研は「仕事って、人生の真ん中にあるものだと思う」と共感を寄せ、「私は体が動かなくなるまで、しゃべれなくなるまで仕事をしていたい」ときっぱり。

 現在71歳となったが、「この先、まだまだやりたいことがいっぱいあります。これまで一度も『満足した』『納得がいった』と思ったことはありません。歌なんて特に、今でも下手くそだと思いますから。もっとうまくなれるはず、もっとうまくなりたいと思う。その年齢に応じて、表現って変わってくるものですよね。また違う表現方法が生まれてくる。若い時はバーッと勢いで歌っていたものが、年齢を重ねていろいろな経験をしたことで、ドンと腹を据えて歌うことだってできる。お芝居もそういうものだと思います」といつも前を向いて新たな表現に挑んでいる。

 そして55年の芸能生活の中でも、「歌手になりたいと思って、16歳で上京をしました。デビュー当時はどん底。スナックやキャバレーをまわったり、移動時間も長くて毎日大変でした。売れるためならなんでもやるという思いで、乗り越えてきました。もうあとは上がるだけ。でも頂点には行きたくないですね。のぼっていく過程が好きなんです」という研。

 転機となる出会いについて「田邊昭知さんと出会ったこと」だと所属事務所の会長の名前を挙げ、「そこから道が開けていきました。田邊さんに開いてもらったというのかな。口は悪いんですが、メイクや衣装、ヘアスタイルなどすべてに関して『てめえでやれ』と言うんです。すべて自分で、責任を持ってやれということ。それでいて、私が取材で突っ走ったことを言ってしまった時には、『言っちゃったものはしょうがない』と声をかけてくれるような人。後悔のないようやりたいようにやらせてくれて、ものすごく支えていただきました」と感謝しきりだ。

 大切な出会いを噛み締めつつ、ますますパワフルに日々を楽しみながら邁進している。そんな研に、“どん底での考え方”について聞いてみた。「多分、誰にでも自分がやりたかったことってあると思うんです。それを思い出してもらって、一歩踏み出してみると楽しいことが見つかるはず。女の人ならば、お花が好きな人も多いと思います。土をいじって、芽が出てきたら、それだけでも『うわあ、かわいい』と楽しくなるはず。ちょっとしたことでもいい。なんでもいいから、やりたかったこと、心が明るくなることに目を向けてみてほしいです」。(取材・文:成田おり枝 写真:高野広美)

 映画『うぉっしゅ』は、5月2日全国公開。

※岡崎育之介監督の「崎」は「たつさき」が正式表記

このニュースに関するつぶやき

  • 研ナオコさんを最初に観たのが子供の頃のドリフだったので「面白いおばちゃん」の認識だったんだけど、大人になって歌う姿を見たら本当にカッコ良くて。素敵な人だと思う。
    • イイネ!11
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